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62、討伐成功

 畑まで戻ってくると、最初の時に森の中にあった七頭の魔物の反応が、まだ同じ場所にあるのが分かった。多分これがグレーウルフだと思う。


「ここからはまた森に入って、グレーウルフの痕跡がないかを調査することにする。ミルテユの魔物を惹き寄せる効果がまだあるか分からないので注意しよう」

「分かったぜ」

「了解した」

「気をつけるよ」


 マテオの呼びかけに俺達三人が頷いた。


「ベルニさんはここで待っていてください」

「分かりました」


 ベルニさんはここで待機みたいだ。確かにこれからは確実に戦いになるし、そうなった時に守らないといけない人がいるのは大変だろう。


「じゃあ、俺が先に行く」

「よろしくな」


 この三人の中ではサージが魔物の痕跡を見つけるのが上手いらしく、いつも森に入る時は先頭を務めるらしい。村育ちで子供の頃から森の中が遊び場だったのだそうだ。


 それからしばらく四人で森の中を進んでいくと、サージが魔物の痕跡を見つけた。


「多分これはグレーウルフだ。五頭より多いかもしれない。巣穴は……こっちだ」


 サージが指差したのは、マップでまさに七頭の反応がある方向。凄いな……チート能力も勿論使えるものだし凄いんだけど、こういう知識と経験に基づいた能力って本当にカッコいい。


「皆行くぞ、極力物音を立てないようにしてくれ」

「ああ」


 それからゆっくりと他の魔物にも警戒しつつグレーウルフの方に進んでいく。サージが上手く風下に行くように動いてくれているとはいえ、さっきまでなら確実にこの距離で魔物がパブロを襲っていたはずだ。もう効果は切れたのかもしれないな……

 そうなると効果は数時間しか持続しないってことだ。


 先頭のサージが手を横に広げて止まれと合図をした。そしてグレーウルフがいる方向を指で示して知らせる。そっちを見てみると巣穴があって、外には三頭のグレーウルフがいた。

 数を正確に把握してるのと把握できてないのでは安全性がかなり変わるよな……俺は索敵で分かったってことにして、マテオに何体いるのかを伝えることにした。


 前にいたマテオの背中を叩き、指で七を示す。するとマテオは頷きそれを二人にも知らせてくれた。


「三頭は俺が魔法で倒すよ。今なら油断してるからいけると思う。その後に出て来たのはそれぞれ一頭ずつかな」


 マテオにかろうじて聞き取れるぐらいの小声でそう提案すると、マテオは頷いてそれを二人にも知らせてくれた。


『ミル、俺が三頭を魔法で倒すんだけど、もし避けられたり外れたりしたら、止めをお願いしても良い?』

『もちろんです』

『ありがとう。じゃあいこうか』


「アイススピア」


 俺は自分の耳にも聞こえないほどの声量でそう呟き、三頭に向けて一斉にアイススピアを放った。しっかりと呪文を口にしていないので魔力を結構消費する。でもしっかりと発動はしたみたいだ。

 一番近くにいたグレーウルフは胴体に深く突き刺さり、二頭目も首元に突き刺さった。しかし三頭目は足の付け根部分に逸れて仕留め切れなかったようだ。


「ミル!」

『任せてください!』


 もう相手にバレているので普通の声量でミルを呼ぶと、ミルは眼で追えないほどの速さで飛び出していき、素早く相手に止めを刺してくれた。そうしているうちに、巣穴から四頭のグレーウルフが出てくる。


「二頭は子供だ。大人二頭はこっちで引き受けるから、トーゴとミルで子供二頭いけるか!?」

「了解!」


 短く意思疎通を図り自分が倒すべきターゲットを決める。俺が相対するのはまだ体が小さなグレーウルフだけど、しっかりと牙があるし爪も鋭そうだ。油断してたらやられるから気をつけよう。

 俺は気合を入れ直して剣を構えた。すると子供グレーウルフは、二頭で一緒に俺に向かって飛び掛かってくる。一頭を剣で受け止めて、もう一頭は上手く躱した。そして躱した方はミルに任せる。


 剣で受け止めた方は俺に噛み付けなかったことで頭に血が昇ったのか、仕切り直すこともなくそのまままた噛みつこうとして来た。俺はその単調な動きを見切って剣を振り下ろす。

 ふぅ……やっぱり子供の方がまだ戦いに慣れてないんだな。大人よりも簡単に倒せる。


 マテオ達の方を見てみると二頭とも地に伏していた。ミルの方も問題なく終わっている。


「怪我はないか?」

「おうっ! 楽勝だったな」

「最初にトーゴが三頭を倒してくれたのが大きい。多分最初の三頭が一番強かった」

「確かにそうだな。トーゴありがとう」

「俺にできることをやっただけだから。それよりもこれで依頼達成だよ」

「そうだな。グレーウルフを片付けて帰るか」


 初めての遠出依頼、ちょっとトラブルもあったけど無事に達成できて良かった。俺はほっと胸を撫で下ろして、グレーウルフの片づけに向かう。

 グレーウルフの内臓だけを取り除き、氷漬けにしてアイテムボックスに仕舞った。普通は牙などが討伐証明部位となるのでそれを持ち帰るだけで良いらしいけど、今回は俺がアイテムボックスを持っているので丸ごとだ。


「そういえば、パブロにグレーウルフが寄ってくることはなかったけど、ミルテユの効果は四時間ぐらい?」

「そういえば俺んとこに来なかったな」

「多分ミルテユの木を掘り出している時にでも効果が切れたんだろう。三、四時間だな」

「それも冒険者ギルドに報告しないと」

「ああ、今回は思いもよらない展開になったな」


 本当だよ、元々は畑を荒らしたり時には村人を襲うグレーウルフを討伐してくれってだけの依頼だったのに。ミルテユがもしここだけじゃなくて他にもいろんなところにあるとしたら、かなりの大問題になるだろうな。

 なんかちょっと面倒くさいことになりそうだ。今回の依頼が光の桜華じゃなくて夜の星で受けた依頼で良かった。マテオ達は……頑張れ。


 それから畑に戻ると、ベルニさんが心配そうに待ってくれていた。


「ベルニさん、無事グレーウルフの討伐完了しました。村に戻ったら確認してください」

「本当ですか! 皆さん、本当にありがとうございます。皆さんはこの村の恩人です」

「そんな大袈裟ですよ。では時間も遅くなって来ましたし、早めに村の中に戻りましょう」


 村長さんの自宅に戻ると、ウィリーとレイレがリビングで俺達の帰りを待っていてくれたみたいだった。


「トーゴ! どうだった? 大丈夫だったか?」


 俺が思ってる以上にウィリーは俺に懐いてくれたみたいだ。弟ができたみたいでちょっと嬉しい。随分でかい弟だけど……


「怪我もないし大丈夫だよ。それに魔物がこの村を襲う理由もわかった。やっぱりミルテユが原因だったよ」

「それじゃあ姉ちゃんは!」

「うん。レイレちゃんは原因じゃないよ。多分ミルテユを食べた後に森に行って、それで襲われたんじゃないかな? レイレちゃんはこの村では一番ミルテユを食べている量も頻度も多かった。だから誤解が起きたんだと思う」

「じゃあ、私は、もう魔物に襲われることはないの?」


 レイレは泣きそうな表情でそう口にした。その声は震えていて、今までの辛さが現れているようだ。


「うん。もちろん森に行くときは注意しないとだけど、特別魔物に襲われるってことはないよ」

「そっか……良かった。良かったぁ……っ、ひっ……」

「レイレ、良かったわね。皆さん本当にありがとうございます」


 泣き出してしまったレイレの肩を抱き、ホルヘさんの奥さん、つまりレイレとウィリーのお母さんが泣き笑いの表情を浮かべた。この家族の憂を晴らしてあげられて良かった。でもまだ村人への説明が残っている。

 レイレのことを責めた村人は絶対に許せないとも思うけど、どうするのかはホルヘさん達が決めることだろう。俺達は明日しっかりと説明をすることしかできない。


「トーゴ、しばらく家族だけにしてあげよう」

「うん。村の中を散歩でもしようか」


 そうして俺達はしばらく村の中を散歩して、村長宅に戻りグレーウルフの討伐を確認してもらった。そして依頼票にサインをもらい、その日は早めに眠りについた。

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