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52、五大ダンジョンと死の大陸

「坊主、笑っちまってごめんな」

「別に良いけど……それでそんなにやばいとこなの?」

「ああ、いまだにどのダンジョンもダンジョンコアまで辿り着けたものはいないぜ。一度でもクリアするとダンジョンから魔物が出てくる速度が一気に遅くなるだろ? だから制覇しようと高ランク冒険者が頑張ってるらしいけどよ、まだまだどのダンジョンも攻略の見込みは立ってねぇんだとよ」


 ダンジョンでは絶えず魔物が作り出されてそれがダンジョンの外に排出されているけれど、誰か一人でもダンジョンコアに辿り着くと排出される速度がかなりゆっくりになるのだ。


「そうなんだ……教えてくれてありがと」

「良いってことよ。笑わせてくれたお礼だ」

「俺は本気で言ってたんだけど!」

「ははっ、悪かったよ。まあ命が惜しいなら五大ダンジョンなんて挑まずに、田舎の街でのんびり冒険者してる方がおすすめだぜ。可愛い彼女もいるみたいだしな」


 おじさんは下品な笑顔を浮かべて俺とミレイアを交互に見た。ほんっとうにデリカシー皆無だな。だから冒険者はモテないんだ。


「ミレイアは仲間だから!」

「そうかいそうかい。じゃあ俺は行くぜ」


 おじさんは俺達に片手を上げて、ギルドの外に向かって行った。


「はぁ〜なんか疲れた」

「トーゴ大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。それよりも突然凄いこと言っちゃってごめん」

「別に大丈夫だけど、本気なの? 確かに私も昔に本を読んで憧れたことはあるけど……」


 五大ダンジョンを制覇するなんておとぎ話みたいな話なのかな。でもレベル的には才能あるものが仲間になればクリアできるはずなんだけど。

 ……でもそっか、ミレイアの結界みたいに才能に気づいてないって可能性もあるんだ。


「俺は本気だよ。……それでも俺について来てくれる?」

「もちろん、トーゴについていくのは決めたからブレないよ。私も夢を追いかけるのは楽しそうでワクワクするし! でも何でそこまでして制覇したいの? 大体の人はその難易度に絶望して諦めるって聞いたけど……」

「あのさ、さっき話してた死の大陸について何か知ってる?」

「うーん、死の大陸は凄く強い魔物がたくさんいて、人が住めない大陸だって聞いたことはあるかな。あと大きな城があって、どうやっても中に入れないって……多分ダンジョンだろうって言われてる」


 そんな認識なのか……あのダンジョンはあんまり大きくないんだけど、とにかく強い魔物が出現するようにしたから、それが大陸に溢れ出てそもそも人が住めなくなっちゃったんだな。


「これはとりあえず秘密にして欲しいんだけど……実はそのダンジョンに入るには、五大ダンジョンをクリアした時にもらえる宝玉が五つ必要なんだ」


 ミレイアの耳に顔を近づけて小声でそう告げた。


「……それ、本当?」

「うん。大昔の文献を漁ってた時にそんな記述があったんだ。だから制覇してみたくなっちゃって」

「それ、何だか凄くワクワクする!」


 ミレイアはその話を聞いて瞳を輝かせている。ミレイアって未知のものを探すのとか、不可能に思えるような高い壁とか、そういうものにワクワクできる性格だよな。俺の仲間にはピッタリだ。俺もそういうのに燃えるタイプなんだ。


「でしょ、夢は大きくだよ。良かったら二人で目指さない? あっ、ミルもいるから三人で!」

「もちろん目指すよ! まずはどのダンジョンから行く? 魔の森? それとも死の湖!?」

「待って、五大ダンジョンって名前がついてるの?」

「うん。え、知らなかったの?」

「うん。教えてくれる?」

「もちろん!」


 ミレイアって本をたくさん読んでいただけあってかなりいろんなことを知っている。本当に心強くてありがたい存在だ。


「じゃあまずは近いところ、中央大陸にある三つからね。一番近いのはこの国にある地獄の門、これは一番多い地中型ダンジョンだよ。そして次は死の湖、このダンジョンは珍しく水中のダンジョンなんだって。そして最後が魔の森、これはフィールド型ダンジョンだよ」


 どれもこれも恐ろしい名前ばっかりだな。それほどこの世界の人にとっては怖いダンジョンってことか……


「そして東の大陸には神の遊び場。これは空に浮かぶダンジョンなんだって。そして最後は西の大陸にある神の怒り。これは火山にあるダンジョンらしいよ。これで全部かな」

「ありがとう。どれも凄い名前だな……」

「それだけ怖いダンジョンってことだよ。あっそうだ、あと死の大陸にあるお城のダンジョンも名前があるんだって。地獄の楽園って呼ばれてるらしいよ。地獄のような大陸にある楽園のような綺麗なお城だからって」

「地獄の楽園か……」


 確かにお城は真っ白でめちゃくちゃ綺麗な感じにした覚えがある。でもその実情は凶悪生物を吐き出す城なんだ。

 今更ながら神界にいた時の俺どうかしてた。ゲームを設計してる気持ちだったんだ。時間はいくらでもあるんだから、下界に降りて長く楽しめるようにハードモードにしたんだ。

 神界にいた頃の俺に助言できるなら、イージーモードにしとけ! ってとにかく言いたい。


「これも凄い名前だよね」

「本当だよ……でも、いつかは行きたいな」

「うん。ワクワクする!」

「行けるように頑張ろうか。……じゃあちょっと話が逸れたけど、俺の目標はそんな感じだよ」


 この世界に合わせて言うと、俺の目標は五大ダンジョンと死の大陸の制覇ってことになるのか。何年かかれば達成できるんだろう。

 俺が歳を取らなくても不思議に思われないうちに、さらに仲間が歳をとって体力が落ちないうちに、そう考えたら五年以内には達成したい。長くて十年かな。

 でも邪神が信仰を集めだしたら猶予は短くなるのだろうし、やっぱり早いに越したことはないだろう。頑張らないとだ。


「目標を聞いたらやる気が出たよ。でもまずは目の前のことからだよね。とりあえずもっと強くならなきゃ」

「まずは明日の初心者講習かな」

「うん! 明日ってトーゴはどうするの?」


 俺はミレイアについて行きたいけど、マテオ達と一緒にクエストを受ける約束もしてるんだよな。それがいつになるのかにもよるな……

 とりあえず明日はミレイアを迎えに行く予定にしておいて、もし予定を変更せざるを得なくなったら夜か朝一にでも伝えに行けば良いか。


「とりあえず明日は俺も一緒に行く予定にしておいて。午前八時半ぐらいにミレイアの家に迎えにいくから。でももし予定が入って行けなくなったら、夜のうちか朝一で連絡に行くよ」

「分かった。じゃあとりあえずはトーゴを待ってれば良いんだね」

「うん。それで良い? 講習には俺はいない方が良い?」

「ううん。一緒に戦うのはトーゴだし、いてくれた方がスムーズに行きそう」

「じゃあ一緒に行く予定にしておくよ」


 冒険者ギルドの中にマテオ達はいないみたいだし、今日帰ったら早めに依頼の予定を聞こう。


「うん!」

「よしっ、じゃあギルドも混んできたしそろそろ帰ろっか」

「そうだね。ギルドカードを首から下げる紐も買いたいんだ。ちょっとならお金も持ってるし安いのなら買えると思うから」


 そうだった。紐も買いに行こうと思ってたんだ。


「紐は俺が買うよ。安い紐だとすぐに切れちゃうだろうから、頑丈なやつにした方が良いと思う。それもミレイアが気になるのなら、また後で返してもらえればいいし」


 街の外の依頼を受けるようになったら、アイテムボックスや各種魔法、それからミルのおかげでかなり稼げているのだ。最初の金欠が嘘のように最近はお金がある。

 だからミレイアにお金を貸すぐらい全く問題ない。


「良いの……?」

「もちろん」

「本当にありがとう。絶対返すから!」

「ゆっくりで良いから。じゃあ行こっか」

「うん!」


 そうして俺達は三人で冒険者ギルドを出た。これからの過酷な冒険の予感に身震いしつつ、しかしワクワクと心躍らせながら一歩を踏み出した。

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