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38、今までのお礼 宿屋編

 宿屋について正面の入り口を叩くと、今日はリュイサちゃんが出迎えに来てくれた。ここにもお礼に来ることは伝えていたので、俺のことを待っていてくれたんだろう。


「お兄ちゃんやっと来た! ミルちゃんも!」

「リュイサちゃん、出迎えありがとう」

「うん! ずっと待ってたの。お父さんも待ってるよ」

「イサークさんも?」

「そう。なんかお兄ちゃんには多大な恩があるからって言ってた」


 リュイサちゃんは俺の授業を受けたことによって、計算が苦手どころか好きにまでなってくれたので、イサークさんが凄く感謝してくれているのだ。

 何度も何度もお礼を言われているし、専属の家庭教師にならないかとまで言われた。でも流石に俺は教えられることに限りがあるし、冒険者として頑張りたいから断ったんだけど……


「中に入って!」


 リュイサちゃんに手を引かれて宿の中に入ると、いつも勉強しているホールのソファーにイサークさんが座って待っていた。イサークさんは俺に気づくとすぐに立ち上がる。


「トーゴ殿、よく来てくれたな」


 呼び方もいつの間にかトーゴ殿になってるし、イサークさんの態度の変化が凄い。俺は少し苦笑しながら、イサークさんのところに向かった。


「こんにちは。本日はお時間を取らせてしまい申し訳ありません」

「トーゴ殿ならばいくらでも構わない。気にしないでくれ」

「ありがとうございます」

「では座ってくれ」

「失礼いたします」


 そうしてイサークさんと挨拶をしてソファーに座る。リュイサちゃんもイサークさんの隣に座った。この二人の関係性も少し良くなったみたいなんだ。本当に良かった。


「本日は今までのお礼に参りました。今まで高待遇で私に依頼を出してくださり、本当に感謝しております。ありがとうございます」

「いや、感謝するのはこちらだ。勉強嫌いだったリュイサに計算を教えてくれただけではなく、勉強を好きにまでしてくれて本当に感謝している。トーゴ殿に出会えなかったらどうなっていたか……」

「いや、言い過ぎですよ。リュイサちゃんの頭が良かったんです」

「だが、今までの家庭教師ではこうはならなかったのだ。本当にありがとう」


 本当に、もう拝む勢いで感謝してくれている。そこまで大層なことはしてないんだけどな。


「そこまで私のことを評価してくださってありがとうございます。嬉しいです」

「ああ、それで本当にこれから家庭教師はしてもらえないのだろうか? どうか専属の家庭教師になって欲しいのだが……」

「いえ、やはりそれはお断りさせていただきます。私はこれから冒険者として頑張りたいことがありますし、それにもう私に教えられることはありませんので」


 実際にこの一ヶ月で俺が教えられることは全部教えたのだ。ここから先はしっかりとした家庭教師の方がいいだろう。俺の知識はあくまでも日本の知識で、この世界のスタンダードじゃないし。


「指名依頼ではどうだろうか? 週に一度でもいいのだ」

「ですが……」

「お兄ちゃん、もうリュイサとはお勉強したくない?」


 リュイサちゃんが少し落ち込んだ様子でそう聞いてくる。


「ううん、違うんだ。リュイサちゃんと勉強するのは楽しいんだけど、俺も他にやりたいことがあるんだ。それにもう教えられることはないんだよ」

「そうなの……? でもお兄ちゃんともう会えないの、寂しいな」


 うぅ……そう言われると断りづらくなる。リュイサちゃんは本当に良い子で可愛いから、俺も一緒に勉強するのが楽しいことは確かだ。


「……じゃあもう家庭教師はしないけど、勉強をするためにじゃなくて、ただ友達として会いにくるっていうのはどうかな?」

「本当に!? これからも来てくれるの?」

「うん。いつ来るとかは決められないけど、この街にいる間は時間がある時に来るよ」

「お兄ちゃん、この街からいなくなっちゃうの……?」

「いずれはダンジョンを回りたいと思ってるんだ。だからこの街から出る時も来ると思う」

「そうなんだ……」


 リュイサちゃんはそう言ったっきり悲しそうに俯いてしまった。いろんな街を巡る冒険者は、仲良くなった人とも別れないといけないから悲しいよな。


「トーゴ殿はこの街から出てしまうのか。それならば仕方がないな。……では、それまではリュイサと仲良くしてやってくれるか?」

「はい。それはもちろんです」

「ありがとう。リュイサもそれでいいか?」

「……うん」

「リュイサちゃん、別の街に行っても手紙とかあるし、それにもうずっとこの街に戻ってこないってわけじゃないから」


 リュイサちゃんがあまりにも落ち込んでいるのでそう言って励ますと、リュイサちゃんは少しだけ笑ってくれた。


「そっか……じゃあ、文字のお勉強も頑張る」

「うん、それが良いよ。新しい家庭教師もつけてもらおうか。そうだイサークさん、リュイサちゃんの家庭教師には真面目な人よりも、少しだけ遊び心があるような人を選んだ方がいいと思います」

「確かにトーゴ殿の授業を見ていたら、その方が良いのだろうと思った。次の家庭教師は今までの基準と少し変えて選ぼう」

「そうしてあげてください」

「ああ、本当に今までありがとう。そしてこれからもリュイサをよろしく頼む」

「こちらこそです。じゃあリュイサちゃん、これ受け取ってくれる?」


 俺はイサークさんとの話を終えるとリュイサちゃんの方に体を向けて、アイテムボックスから髪飾りを取り出した。


「これリュイサちゃんに似合うかなと思ったんだ。勉強が嫌だってなったら、この髪飾り見て頑張って欲しいと思って。俺との勉強楽しかったでしょ?」

「うん、すっごく楽しかった! これ可愛いね」

「気に入ってくれた?」

「大切にする」


 リュイサちゃんは髪飾りを大事そうに胸に抱いて、可愛く笑った。笑顔になってくれて良かった。


「ありがとう。じゃあリュイサちゃん、また来るよ。イサークさんもまた寄らせていただきます」

「ああ、トーゴ殿ならばいつでも大歓迎だ」

「お兄ちゃん絶対また来てね!」

「うん。じゃあまた」

「あっ待って、今日はまだミルちゃんを撫でてない!」

「そっか、じゃあミルを撫でてあげて」

「うん!」

 

 そうしてそれからはリュイサちゃんがミルとしばらく戯れて、満足したところで俺とミルは宿屋を後にした。

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