表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/48

竹刀の剣士、異世界で無双する 宴席

11 宴席


 イシャとゆっくりくつろぎながら、戦いの話をしているうちに、日もだいぶ傾いてきた。そろそろ宴席に向かう頃だろうと思い、俺は稽古着に着替える。そういえば、火曜日の合同稽古の後すぐにこちらにとばされたから、稽古着を洗濯していないんだよな。おれも長いこと風呂に入っていないし、結構におうかな?


(イシャ、その・・俺ってにおうかな?)


(うん?この村の人間たちと同じにおいだぞ。)


そうか、ここの人たちもあまり風呂に入らないのかな?そもそも、風呂がないってことも?まあ、いいか。俺は頭を切り替えて袴を着け、作法通り正座して垂れと胴をつける。面・小手・竹刀はどうしよう。ひょっとすると使うかもしれないから、持っていこう。


(そういえば、お主。その鎧をつけるときはいつもそうやって座るのか?)


(うん?そうだよ。こうするように子どものころからしつけられたからね。こうすると気持ちが落ち着くんだ。)


(なるほど、その姿だけでも威圧感があるな。)


(へー?そうなんだ。)


(それとな。今日の試合でグリッツに頭を下げていただろう?あれは何だ?)


(ああ、あれは礼と言って、稽古や試合の時は必ずするんだ。相手のおかげで今日も稽古ができる。相手のおかげで自分が強くなれる。その感謝の気持ちを表すんだよ。)


(なるほど、我ら狼が狩りの成果を感謝して遠吠えをするようなものか。)


(狼の遠吠えってそんな意味があったの?)


 そんなことを話しながら待っていると、コンコンコンとドアをノックする音が聞こえた。こちらの世界でもノックがあるんだ、と思って、


「はい、どうぞ。」


と、返事をした。ドアをゆっくりと開けて、村長さんが顔を出した。


「村長さん、お世話になっています。また、今日は宴席に招いていただいて、ありがとうございます。」


正座していた俺は、そのまま村長さんに深く礼をした。


「っ!ヨウスケさん。その、頭を下げるのは何ですか?」


村長さんはびっくりしたようだ。でも呼び方が、ヨウスケ殿からヨウスケさんに変わっている。ちょっとうれしい。


「これは、私の国の風習で、感謝の気持ちを表すものです。」


「そうなのですか。でも妙に威圧感がありますよね。」


それみろ、というようにイシャが俺を横目で見てくる。礼って威圧するものじゃないんだけどな。でも、現代日本でも、姿勢のきれいな人の礼は、美しさとともに、妙な威圧感もあったよな。俺の礼は剣道の稽古の中で身につけたものだから、威圧感もあるのかな?


「すみません。威圧するつもりはなかったのですが・・。」


俺が弁解すると、


「私たちは、感謝するときに頭を下げたりはしないので、見慣れないだけですよ。」


と、村長さんがフォローしてくれた。いい人だ。イシャは隣でニヤニヤしている。狼のニヤニヤ笑いって怖いぞ。


「では、会場に案内しますね。ついてきてください。」


「はい。」


と返事をして、俺は立ち上がり、面・小手・竹刀袋を持つ。そのまま、村長について部屋を出る。後ろを見ると、イシャは俺の後ろについてきた。その後ろに、メイドのメリサさんがついて来ていた。うわっ、綾〇は〇かさんも一緒なんだ、と興奮しかけていると、


(ほれみろ、威圧しているといったじゃろ。)


と、イシャが念話を飛ばしてきた。助かったと思い、気持ちを落ち着ける。


(礼は剣道で一番大切なものだから変えられないよ。稀人だから変な奴ってことで見逃してくれないかな。)


(さあ、どうだか。)


イシャは、ククッと小声で笑った。


 外に出ると、空は赤く染まっていた。こちらでも夕焼けは美しいな。と思いながら村長の後をついていく。


 村の中央にある広場に来ると、右手に大きな建物があった。平屋造りだが、広さが半端ない。ちょっとした体育館ぐらいある。


「ここが村の集会場です。今日は200年ぶりの稀人が来たということで、村中のものが集まっています。」


村長の説明におどろく。


「村中って、何人ぐらいですか?」


「女、子どもも入れて500人ぐらいでしょうか。」


なるほど、一つの村の人口としては、少ないのかな?この世界の常識はよくわからないけど、現代日本では人口500人は、かなり少ない気がする。


 俺は緊張感で内心びくびくしながら、村長の後について集会場に入った。俺とイシャの後ろには、さっき紅茶を入れてくれたメイドのメリサさんがついて来ている。


 入り口をくぐると小さなホールになっており、左右にはトイレと水がめがある。こういう作りって、もろに体育館じゃん、と思いながら正面を見るとまたドアがあった。村長さんがドアを開け、中に入る。俺もイシャと一緒に入った。そこは、ただっぴろい木の床の広間だった。たて20m、横15mぐらいの広さがある。天井を支えるためか、左右の壁から5mぐらいのところに、やはり5mぐらいの間隔で太い柱が立っている。床の上には、丸や四角の様々な大きさのテーブルがバラバラに置かれ、村人たちが座っていた。男性、老人、子どもたちと固まっているので、家族ごとにテーブルについているのだろう。いくつか空き席もあるようだ。正面に大きな長方形のテーブルがあり、そこには門番長のグリッツさんとシラックさんが座ってこちらを見ていた。正面の壁の右端に大きなドアがあるが、今は開け放たれ、たくさんの女性たちが出入りしている。手に手に料理を盛った木の皿や金属の壺を持っているから、このドアの奥が台所になっているのだろう。


 俺たちが部屋に入ると、村人が一斉に視線を向けてきた。男たちも子どもたちも、料理を持った女たちも、何か期待しているようだ。


「さあ、こちらです。」


村長が正面の大テーブルに案内する。俺はみんなの視線が痛かったが、我慢して後をついていく。大テーブルの真ん中に俺は座らされ、村長が俺の隣に立つ。反対の隣はグリッツさん、その向こうがシラックさんだ。ニコニコと俺を迎えてくれる。その笑顔にほっとする。イシャは俺の足元に座る。メリサさんは俺の後ろに立っている。周りを見ると、村人が隣同士でひそひそとしゃべりながら俺のほうを見ている。ううっ、緊張してきた。俺は、こういうの苦手なんだよ。

 

 料理の皿や、飲み物の壺がいきわたり、女性たちがそれぞれの家族のところに座ったころ、村長が立って話し始めた。大きな声ではないが、村人たちのざわざわした雰囲気を断ち切るような、はっきりした声だ。


「みんな、今日はよく集まってくれた。感謝する。


 さて、もう聞いている者もいると思うが、この村におよそ200年ぶりに稀人が現れた。わしの隣にいる、ヨウスケ殿だ。ヨウスケ殿は二ホンという国のアワの町というところから来られたそうだ。


 歴史に詳しいものは知っていると思うが、稀人は過去に我が国に様々な恩恵を与えてくれた。200年前の稀人は、遠く北のギュジリの町に現れ、我々に鉄の加工を教えてくれたそうじゃ。今でも、ギュジリの町では、稀人のことを鉄聖としてあがめている。


 そして今日、我らが村に、稀人のヨウスケ殿が現れてくださったのじゃ。ヨウスケ殿は、戦いの達人じゃ。わしも見たが、この村一番の達人、門番長のグリッツを一瞬で倒してしまった。しかもほとんどケガをさせることなくじゃ。我らがこの技を身につけることができれば、我らはもっと強くなれる。幸い、ヨウスケ殿はこの村にしばらく居てくださるそうじゃ。ヨウスケ殿の術を学び、我らはもっと強くなろうぞ!」


村長の演説に、村人の目がキラキラしている。


「わあー!!!」


と大声を出し、大きな拍手が起こった。


 この興奮は何?俺はいったい何を期待されているの?俺は圧倒された。

 現代日本でも、強いことは憧れの一つだ。中には強さに熱狂しているやつもいた。俺も剣道をたしなむ以上、強さは大切だと思い、追求している。でも、そう、人間にとって価値があるのは強さだけじゃないはずだ。「美しさ」「賢さ」「誠実さ」「優しさ」「勤勉さ」「器用さ」「素早さ」「確実さ」「裕福さ」「人間関係の巧みさ」などなど、それぞれの人間が自分なりの価値を求めればいいはずなのだ。特に現代日本では、それまで価値がないと思われていた、「のんびりさ」「ゆっくりさ」「不確実さ」「貧しさ」「人間関係作りの下手さ」にも価値を見出そうとしていた。つまり、人が生きていく上での価値観は本当に千差万別で、短所が長所にもなり、長所が場合によっては短所ともなりうるものだった。みんなそれぞれの価値を追求しながらも、ある面では仲間と共同し、ある面では人と反発しあうのが当たり前だった。

 なのでこの村のように、全員が強さを求めることに、俺は強い違和感を抱いた。そういえば、村人の男性は誰もかれもが筋肉もりもりのマッチョな体型をしている。女性にも筋肉質の引き締まった体型の人が多い。まさか、脳筋の村?いやいや、それはない。何かわけがあるはずだ。


 みんなが、村長の演説に酔っているように騒いでいる間、俺は隣のグリッツさんに話しかけた。


「グリッツさん。どうしてみんな、あんなに強くなることに熱中しているんですか?あっ、強いことはいいことだと、私も思いますけど、ここまで熱狂するっていうのがよくわからなくて。」


グリッツさんは、ああ、なるほど、という顔をした。


「そういや、あんたは稀人で、ここに来たばっかりだったな。なら、わからなくて当然か。」


「何か、わけがあるんですよね?」


「うん。実はな、このダイデロッチ王国では、年に一度、王都で闘技大会が開かれるんだ。今が12月だからちょうど今頃、王都で大会が行われているはずだ。その闘技大会には、国中の村や町から代表者が出場する。」


「えっと。12月ってことは、1年は12月で終わるということですか?」


「ああ、そこのところも説明がいるな。そうだ、1年は12か月。一月ひとつきは30日になる。1年は、360日になるな。今は12月なので、もうすぐ新しい年になる。」


「では、新年のお祝いとかするのですか?」


「ああ、稀人の国、ニホンではそういった風習があると聞いたことがある。この国では12月の王都の闘技大会の開会式と閉会式、表彰式が重要な行事になる。そして、新しい年から新しい順位になるわけだ。」


「順位?」


「そうだ。闘技大会の順位が村や町の順位になる。」


ええっと、どういうこと?


「つまり、闘技大会で上位になれば、村全体が上位になる。」


あれっ?よくわからない?おれの頭には???マークが飛び交っているのだろう。グリッツさんもどう説明したものかと考え始めた。


「あの、闘技大会の順位が村の順位になることは分かりました。でも、それが村人の暮らしにどのようにかかわるのですか?」


ああ、そうか、という表情でグリッツさんは話し始める。


「それが、大いにかかわるのだよ。まず、税が変わる。税は分かるか?」


「はい、元の世界でもありました。」


「そうか、その税が村の順位によって決まる。上位は安く、下位は高くだ。」


「ええっ?そうなんですか?」


「それと、鉄の支給量が変わる。この国の鉄鉱山は枯渇しかけていて、あまりとれない。だから、国全体での鉄の量が少ないんだ。その上で、上位の村は鉄がたくさん国から支給される。下位の村は少ない。」


「ええっ?皆さん、鉄の農具を持っていますよね。」


「ああ、鉄に見えるが、あれは銅やすず、鉛の混ぜ物だ。この村は闘技大会で上位になったことがない。鉄の支給が少ないんだ。だから、鉄にいろいろな混ぜ物をして、村人にいきわたるようにした。でも、しょせん混ぜ物だから、すぐに傷む。今年は奇跡的に豊作だったが、毎年こうはいかない。農機具が足りないので畑が増やせず、不作の年のほうが多いんだ。だから村人の数も増えない。」


「そうだったんですか。」


「それとな、順位によって、家畜の数も決まる。家畜は分かるか?」


「ええ、牛や豚、鶏ですよね。」


「そうだ、家畜は食べ物になるし、皮にもなる。家畜の糞は肥料に最適だ。この村は家畜が少ないから、人間の糞尿を肥料として使っているが、作物にはあまりよくないんだ。」


「今年の豊作は、本当に運がよかったのですね。」


「その通りだ。今年はなぜか森での収穫が多かった。作物は、あまり増えていないが、森で採れる草や木の実が異常なほど多かったんだ。」


おれは、ちらりと足元のイシャを見る。


(我らの群れが、草や木の実を食べる獲物を狩ったためであろう。)


と、イシャは返事をした。


「だから、こういう豪華な宴席を設けることができたのだ。」

グリッツさんは、説明を続ける。


「なるほど、闘技大会の順位が生活に影響するはずですね。」


「それだけではない。まあ、この料理を食べてみろ。」


グリッツさんにすすめられるまま、大皿の料理を小皿にとって食べてみる。野菜や山菜の煮物だが、あまりおいしくない。よく言えば素材の味を生かしているのだが、味が薄い気がした。


「どうだ、旨くないだろう。」


グリッツさんの声に、何と言ってよいのかわからず、あいまいに返事をする。


「無理しなくてよい。みんな分かっていることだ。素材は豊富にあるが、味付けが足りない。つまり塩や香辛料が足りないのだ。」


「まさか、塩や香辛料まで順位に関係するとか?」


俺の問いに、グリッツさんは大きくうなずく。


「そのまさかだ。順位によって、塩や香辛料の売買の量も変わる。」


「香辛料はともかく、塩は命にかかわるものですよね。」


「そうなのか?そういえば、この村は死亡率が高いらしい。ちょっとした怪我でも重篤な症状になり死ぬことが多い。」


「それは、多分塩の不足が原因です。私の元の世界では塩の取りすぎで病気になる人が多かったのですが、塩が足りないとそれが原因で病気になることもあるんです。」


「そうなのか。塩が命に係わるとは思わなかった。単にまずい食事を我慢するだけだと思っていた。」


「そうなると、闘技大会で順位を上げることが、この村の人々の命にかかわるんですね。これは大変だ。」


みんなが熱狂しているわけが分かった、強さが、暮らしの豊かさに結びつくなら、熱狂するのも当たり前だろう。しかし、この国はどうしてこんなことをしているのだろう?


「グリッツさん。もう一つ聞いていいですか?どうしてこの国では、そこまで闘技大会を大切にするのですか?民の生活を破壊するような真似をしてまで、闘技大会を重要視する理由がわからないのです。」


「うん?俺も詳しくは知らんが、この国の成り立ちと、神殿にかかわるらしい。詳しいことは、村長に聞け。」


そう言われたので、村長に質問する。


「村長。グリッツさんから闘技大会の大切さについて教えていただいたのですが、どうしてこの国がそこまで闘技大会にこだわるのか分かりません。」


村長は、俺とグリッツさんの問答を聞いていたのか、深く頷きながら答えてくれた。


「この国は、武神デールとその子孫が建てたと聞く。武神デールは、子どもたちとともに今の王都に降り立ち、建国を宣言した。そして、武神デールの子どもたちや孫たちが王都の周辺を武力で制圧して、今の王国が成り立ったと聞いている。それ以来、国の秩序を守るたには、武力を持つことが条件となった。それも、軍隊のような集団の武力でなく、個人の武力が尊ばれておるのだ。今でも神殿では武神デールの武力を祭り、この国の安定と繁栄を願っているそうだ。なので、王家としても武を示し、周辺の町や村を従えるため、闘技大会を重要な行事としているらしい。つまりは、強いことが何よりも重要だということだ。」


 何?その脳筋発想?強ければ生活が楽になり、弱ければ生活が苦しくなるって、ありえない!喉元まで出かかった叫びを押し殺して考えた。

 そうだ、よく考えれば、元の世界でも生活の格差はあった。学歴であったり、先祖からの遺産であったり、信じる宗教であったり、性別や性志向であったりと、理由はいろいろだが、確かに格差はあった。現代日本に住んでいた俺は、他国で宗教や血統による格差があることを理解しながらも、納得できなかった。そんな俺も、現代日本での学歴や性別による格差については、当たり前のことと考えて、疑問を持たなかったのだ。この国の人たちも同様だろう。強さ以外にも価値があると理解はしても、現実の社会が強さを基準として作られているのだから、疑問を持つことはないのだろう。もとより、完全に平等な社会など夢物語に過ぎないのだから、この国の強さによる格差を批判しても何にもならない。ではこの国で、この村で、俺のできることは一つしかない。


「わかりました。私はこの村の皆さんを鍛え、闘技大会で上位に入れるようにすればよいのですね。」


俺は、村長に確認する。


「そういうことだ、ヨウスケ殿の武は、私たちの知らないもの。その技を身につければ、確実に強くなれる。私たちの暮らしもよくなる。」


「分かりました。精一杯務めさせていただきます。でも、私のやり方を通させていただきますが、よいですか?」


「それは、どういう意味かね。」


「例えば、試合前後の礼です。私は剣道にかかわるものです。剣道とは単なる強さを求めるものではありません。


 剣道とは、剣の理法の修練による人間形成に道である。


と、信じています。ですから剣道を学ぶものは、


 心身を錬磨し、旺盛なる気力を養い、礼節を尊び、信義を重んじ、誠を尽くして、常に自分を高めることに努め、周りの人と仲良く暮らすことを求めます。


 自分だけ強くなって、楽ができればよいという人には、私は剣道を教えません。」


「そこまで、厳しいのかね。君の技は。」


「はい。技を身につければ、どうしても試してみたくなります。そういう者が不心得を起こして、周りの人に迷惑をかけるかもしれません。技を持つものは、周りの人たちに信用され、大切にされなくてはなりません。技を持ったために、周りに迷惑をかけるような人には、技を教えることはできません。」


「なるほど、わかった。ヨウスケ殿が技を伝授する人は、私が厳選するとしよう。」


「剣道は、確かに強いものです。技を身につければ、闘技大会で上位になることもできましょう。しかし、それで驕り高ぶり、感謝の気持ちを忘れるような人には教えたくありません。」


「ヨウスケ殿の感謝には威圧がこもっていたが、そのように厳しい考えがあったのだな。よくわかった。」


「では、いつから稽古を始めましょうか?」


「ヨウスケ殿の言う、稽古とは何だ?練習とは違うのか?」


グリッツさんから質問が来た。


「はい、稽古と練習は違います。練習は習ったことを反復することです。稽古は習ったことの意味を考えて身につけることです。ただ、反復して身についた技では応用が利きません。技を広げるためにも、常に考え、技の意味を体現することが大切なのです。ですから、剣道では基本技の稽古を大切にしています。一足飛びに派手な技を真似したところで、身につくものではありません。一見して地味で簡単そうに見える基本技にこそ、剣道の奥義があるのです。そういう、地味な稽古についていける者しか教えられません。」


そういうと、イシャが小声でウオンと吠えた。昼間に話し合ったことから、地味な稽古という部分に反応したのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ