闇の魔法と決戦と
近寄ろうと数度目の攻撃。
しかし、突如として地面から水流のように闇魔法が吹き上がって妨害される。何度目かの攻防だが、それでもこの闇魔法による迎撃で踏み込めない。
「ちっ、厄介ね」
攻防一体。闇魔法による自動反撃と、そして広範囲における破壊力のある攻撃。さらに、その攻撃には触れた後に侵食する毒が付与されている……普通に考えれば本当に無理ゲーと言われるような部類だ。
しかし、レイカ様が戦えているのはめちゃくちゃに上げまくり、隠しダンジョンをクリアするまで積み重ねたレベル。そして隠しアイテムである実質最強武器によるブースト……冷静に考えればお互い様だ。無理ゲーには無理ゲーで対抗するしかない。
「レイカさん!」
聞こえた瞬間に、体を避ける。途端に死角からカリバに向かって始祖魔法が飛んでいく。
その魔法の一撃を自動的に闇魔法が防ごうとするが、ヒカリちゃんの始祖魔法による一撃はその程度の防御を貫いてカリバに届こうとする。
「……チッ」
手を動かすと、闇魔法による防御が厚くなり、ギリギリで防がれた。
そして、他の防御が手薄になった瞬間にシルヴィアくんが飛び込む。自動的に反撃する闇魔法は大した量ではない。明らかにヒカリちゃんの攻撃に対処するために割り振ったからだ。
「『リポスト』」
闇魔法による防御を弾きながら、レイピアによって鋭い突きを放つ。
カリバはその攻撃を受け止めようとはせずに、バックステップで回避。なるほど、直接攻撃を体で受け止めるわけにはいかないのか。これはいい情報だ。
少なくとも、ダメージを受ければアイツは無事ではすまないようだ。
「攻撃は通るみたいね。なら、チャンスを押し通せば問題はないわ」
「……チッ」
「あら、どうしたのかしら? 遊ぶんじゃなかったの?」
「抜かせ。『イブリース』」
カリバの周囲に浮かせていた闇魔法の球体は形を変えてまるで生き物のようになる。それが三体。
見た目はまるで悪魔のようだ。いうなら第二パターンというわけか。ゲームのボスでもよく見るやつだ。一定時間経過で行動パターンの変わるボスと考えれば突破も出来る。
「一人一体で行くわよ」
「はい!」
「ええ!」
そして悪魔に剣を打ち付け……硬いな。これだけのチート装備をしててもなお切り裂けないとなると相当の硬さだ。何かしらの秘密があるのだろう。
ヒカリちゃんとシルヴィアくんに視線を向けるが、同じように攻撃を通すのに苦労しているようだ。これも闇魔法の力というわけか。しかし、攻撃性能自体は大したことはない。いうなら、普通の魔人程度だ。喰らえば確かに危ないだろうがこれならば時間稼ぎにも……
「『シェイタン』」
声が聞こえて、慌てて回避。すると先程までに立っていた場所に闇魔法で出来た槍が突き刺さる。
嘘だろ!? 闇魔法による悪魔を生み出して、更に背後から追撃まで出来るのかよ! 重要なイベントをすっ飛ばしたボス戦のような様相になってきたぞ!
「さて、どの程度保つかな?」
「あら、この程度ならすぐよ?」
軽口を叩きながら、飛来する槍を回避して目の前にいる魔人を倒すための手立てを考える。
いいさ、この程度の無理ゲーならいくらでも超えてきたのだ。今回だって超えるだけならいくらでもしてやろうじゃないか!
宣言した通り、回避を続けながら攻撃を続けて把握する。
固く見えるが、これは意図的に弱点を作ることで他の部分の強度を上げているようだ。つまり、致命的な一撃の入る場所がある。
「……そこね」
飛来する槍を回避して一撃を口の中に突き刺す。すると、悪魔の体はボロボロと崩れ落ちて崩壊する。
「ヒカリ、シルヴィア」
「大丈夫です! こっちも終わりました!」
「僕も倒したよ」
見ればそれぞれで倒し終わっている。
多少時間はかかったが、それでもまだ猶予はあるようだ。それに何よりもだ。
「さて、他の手品はあるのかしら?」
「……なるほどな」
悔しそうな表情を浮かべているカリバ。ラスボスだっていうのに感情を乱すなんて格が低いぜ。
そんな気持ちと共に剣を向けて、飛び込む。
「ヒカリ、シルヴィア!」
「はい!」
「こっちは準備万端だよ!」
ヒカリちゃんとシルヴィアくんが同時に始祖魔法をカリバに放つ。
カリバの自動防御は発動するが、当然ながら二人の力を込めた始祖魔法の出力に耐えきれず徐々に押されていく。
それを見て手を構えて始祖魔法を防ぐために魔力を割り振った。
(そして、正面ががら空きになる!)
走っていく。今までなら闇魔法による迎撃が起きていたが、それは起きない。
それだけ手一杯なのだろう。
「……まあいい! 始祖魔法でなければっ!」
「あら、それなら悪い物を見せてあげる。覚悟しなさい」
今までは敢えて抑えていた魔力を始祖の剣に全力で注ぎ込む。
すると、発光したその剣からは始祖魔法の……いや、それよりも強い力を感じる。敢えて必殺の剣と考えて伏せていたのがここで役に立った。
その剣を見たカリバは動揺した視線を向ける。
「なっ……! 貴様、それは……!」
「さあ、これで終わりよ!」
何かを言うとしたカリバの無防備な胴体に向けて、始祖の剣を突き刺した。
そして、光の力で浄化されていくカリバ。
「ぐっ、ガアアアアアアア!」
「案外あっけない終わり方ね」
体が沸騰しているのか、ボコボコという音がカリバから聞こえ、そして剣の周囲からは肉の焼ける音が聞こえてくる。
これを食らって生き残れることはないだろう。ついに闇魔法との因縁も終わりだ……と、そこで神器を封じている部屋の扉が開いた。
「が、ぐ、は、ハハハハ! 最初から、貴様らは負けているのだ! いけ、黒球よ」
焼かれながらそう叫ぶカリバ。そして、防御を捨てて腕を動かす。
すると、メアリちゃんを拘束していた黒球が神器を封印していた部屋へと飛び込んでいった。
「何を!」
「が、ぎ、ハハハハ! 次にあったら、終わりだ!! ハハハハハハハハハハ!」
防御を捨てた事で双方から始祖魔法を食らって直撃し、目の前でカリバは灰になって消滅した。しかし、あまりにも不気味すぎる。最後まで笑いながら、こちらを見ていた。
……何を考えていたんだ? 不気味な何かが不安を掻き立てる。
「いえ、それよりも!」
中に飛び込んでいったメアリちゃんの安否が気になる。
そして、中に踏み込む。神器が部屋の中心に鎮座している部屋、そこにメアリちゃんが倒れていた。
「……怪我はなさそうね」
「メアリさん!」
ヒカリちゃんも入ってきて、間に合ったと笑みを浮かべた。
しかし、嫌な予感は消えない。捕らえている闇魔法も残ったままで……なによりも嫌な気配がメアリちゃんの手元からしている。よくみてみれば、何かを持って……
「……あれは、闇の魔導書?」
それは行方知れずであり、カリバが持っているとばかり思っていた闇の魔導書だ。
すると闇の魔導書が光を放つ。黒球から触手のように魔力が伸びていき、神器を取り込んだ。
「なっ!?」
「神器を!? くっ、これで……!」
シルヴィアくんがそれを見て反射で始祖魔法を打った。しかし、その魔法は弾かれる。
そのまま神器を取り込んだ黒球の中で、魔導書と神器が光を放つ。それは、あまりにも不吉な色をした光。
そして視界を埋め尽くす真っ黒な光が弾けて目の前が見えなくなる。
「何……!?」
「レイカさん……!」
「クソ、どうなっているんだ……!?」
攻撃ではない。しかし、何が起きているのかわからない。
……そして、ようやく見えるようになるとそこにはメアリちゃんが立っていた。
「メアリ」
「メアリさん! 大丈夫で……」
走り寄っていくヒカリちゃん。しかし、それを冷たく見たメアリ……いや、違う。
目が。所作が。何もかもが別人だと物語っている。メアリちゃんの見た目をしただけの異質な生物だと。
『頭が高いぞ、ゴミが』
「あぐっ……!?」
突然、ヒカリちゃんが地面に潰されるように押し付けられた。
俺達にも、まるで重力が何倍にもなったかのような圧が上から襲ってくる。
「何……が……」
『ふむ、我を知らぬか? ■■■■……いや、こういう方が通りがいいのか』
そして、嗜虐的な笑みを浮かべて宣言した。
『闇の魔女と』
……ああ、そうだよな。
お約束だ……ラスボスに思えた相手のあとに出てくる、真のボスというのは。
ラスボスかと思ったら、真のボスが登場するのは王道なので初投稿です




