闇の魔法と最後の敵と
階段を駆け上がっていく。来ることのない王宮だが、ゲームで何度か覚えがある。ボスとなったレイカ様は最上階にいた。つまり、そこに神器がある。
たしか、あの時もレイカ様は時間を掛けていたのでおそらく入手するまでタイムラグがあるのだろう。
「このまま走り抜けるわよ」
「はい!」
そうして走っていく。王宮の階段を上がり、二階の長い通廊を走り抜ける。
「……師匠!」
と、突然叫んだカイトくんが俺の盾になるように飛び出す。それと同時に、死角から何かが飛来してくる。その攻撃をカイトくんが弾き返して無傷で済んだ。
「……これは、暗器?」
鉄の串のような武器……クナイに近い。それが飛んできたようだ。
魔力による攻撃が多かったからこそ、突然魔力を介さない攻撃が飛んできた事で反応が遅れた。
「……ドルフ! 分かっているぞ!」
「失敗しましたか」
「なるほど、貴方なのね」
カイトの声を聞いて、物陰から現れたのはカイトくんを裏切った兄のドルフだった。
不意打ちのために、ずっと潜んでいたのだろう。完全に気配を感じなかった。たしかに急いでいたとはいえ、こうして完全に隠れきるとは凄いものだ。
「助かったわ、カイト」
「うむ。ドルフはああした隠密を使える。魔力を感知させずに撃つ一撃……ある程度は警戒をしていたから対応できた。ドルフであれば、きっとどこかで仕掛けてくると思っていた」
「……カイトが足止めをされていなかったのは不運でしたね。ああ、どうしてカイトはそんなに優秀なんでしょうかね……なぜ、僕と違って」
そういいながら、体が徐々に闇魔法で覆われていく。
それはまるで軽鎧のようだ。おそらく、闇魔法による魔人化の次の段階なのだろう……
「カイト」
「大丈夫だ……いや、任せてほしい。だから師匠たちは行ってくれ」
「ええ、任せるわ」
「カイトくん……頑張ってください!」
応援をして走っていく。
間に合うかどうかはわからない。だからこそ仲間を信じて走り抜ける。
「通しませんよ」
「邪魔はさせん!」
ドルフが妨害をするように放った攻撃をカイトが受け止める。
「ああ、本当に優秀ですね……僕では敵わないほどに」
「さあ、ドルフ! ここで終わらせる! 前は負けたかもしれんが、今度は負けない! 俺はきっと、貴方を倒してみせる!」
「……ああ、どうして本当に……」
まるで泣きそうな声のドルフと、強い意志を持ったカイトの声を背にして階段を駆け上がっていく。
そしてついにたどり着く。上層へと。
そして、辿り着いた部屋はボロボロに崩壊をしていた。
「手遅れかしら?」
「いや、間に合っているみたいだ……」
シルヴィアくんの向けている視線の先を見れば、そこには学園長とシルヴィアくんの兄弟であり、闇の魔導書を持つ男が向かい合っていた。
学園長は、こちらを見て笑みを浮かべる。
「……はは……老骨でも、時間は稼げたか」
そのまま倒れ伏す。それを見て、シルヴィアくんが叫んだ。
「カリバ……! お前は!」
「ふん……シルヴィアとアクレージョ共か」
カリバ・ブレイド。シルヴィア・ブレイドの腹違いの兄弟にして、この騒動の大本であると思われる存在。
手に持っているのは闇の魔導書。カリバの隣には、巨大な黒い球体が浮かんでいる。薄っすらと見える中には、女の子が意識を失って囚われているようだ。アレはおそらく……
「……メアリさん! あの中にメアリさんがいます!」
「ええ、私も見えたわ……貴方が捕らえていたのね。なぜそこに捕らえているのかしら?」
「説明の必要があるか?」
問答など無用とばかりにカリバは手を振りかざした。それを見て武器を構えて防御の耐性……突然、黒い波動と共に衝撃波が襲ってくる。
軽い魔力の奔流だろうに、それだけの威力で油断して受ければ吹き飛ばされてしまう程のものだった。
「ぐっ……!」
「くうっ!」
だが、それぞれが構えていたから耐えきれる。
「全く持って不愉快だ。この老いぼれに時間を使いすぎた。腐っても過去に王選候補だった男ということか。予定では、既に神器は手にしていたのにな」
倒れている学園長に冷たい視線を向けながらそんな風に言うカリバ。
……確かに考えればそうか。この国の主要な役職についている人間は過去に王選で敗北した生徒なのだろう。それだけの力があり、王の座を競い合ったのだから重要な役職になるだろう。
「だが、時間の問題だ。すでに扉の開放は始まっている……とはいえ、お前たちは邪魔だ」
背後の扉はゆっくりと開いていく。それは最後のセキリュティなのだろう。強行された場合に、時間を稼ぐためにゆっくりと開いている。
それまでに止められれば俺達の勝ち。奪われれば……いや、それでも取り返せばいい。まだチャンスはある。そんな俺達を見て、カリバはあざ笑うようにいう。
「貴様らと遊んでやろうじゃないか」
「……あまり舐めないことね」
その強気な発言に対して、笑みを浮かべて始祖の剣を構える。
その剣を見たカリバは、不快そうに顔をしかめた。
「……貴様は裏切りを重ねるか。いいだろう、アクレージョ。後悔させてやろう」
「裏切り?」
「『ディアブロ』」
答えるつもりはないとばかりに、カリバは周囲に黒い魔力の珠を数え切れないほど浮かべて……コチラに向けて放つ。
その放った闇魔法の魔力の余波だけで、周囲の調度品や壁が破壊されていく。
「見たことのない魔法ね。でも」
始祖の剣に魔力を通して切り裂く。あっさりと両断されたその魔法は、そのままの勢いで背後に流れていき壁を破壊した。
ヒカリちゃんとシルヴィアくんも始祖魔法を使って防いではいるが、その威力を殺しきれていない。
「……厄介ね」
「どうした? 小手調べだぞ。『トイフェル』」
次なる詠唱。魔力によって生まれた球体が俺達の上空へと浮かんでいく。
「……なにかきます!」
そして、次の瞬間その球体が破裂して全方位に向けて闇魔法の弾丸を四方八方へと飛ばした。
「不味い……! 障壁を!」
「はい!」
その言葉とともに、ヒカリちゃんとシルヴィアくんが自分の周囲を守るように始祖魔法による壁を作り上げる。
城のあらゆる場所が崩壊していき、そしてそこから汚染が始まる。
「……今までの魔人と全く違うね」
「闇魔法の魔導書を持っているだけはあるわね」
想像以上の強さだ。ダンジョンで挑んだ魔獣に勝るとも劣らない。
「……でも、負けるはずがないわね」
「はい……だって、私たちはいつだって乗り越えてきましたから!」
ヒカリちゃんの言葉に頷く。
たとえボスだろうとなんだろうと……最後に勝つのは主人公だと決まっているのだから。
ついに名前が出揃ったので初投稿です
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