闇の魔法と急報と
本来であれば苦戦するであろう、理性を持った十人を超えるような魔人の集団。
だが、今回に限れば理性があったことが仇になった。突然の強襲に動揺して動きに精彩を欠き、唯一対抗できる王選候補達の完璧な連携に倒されていく。それを見て動揺が連鎖していき。本来の強みは活かせずにあっさりと倒されていく。
(今まで攻め込む側だったことのつけだろうな)
自分たちが襲う側であり、襲われることはないと油断していたのだろう。だからこそ、この作戦は大成功だったと言える。
そのまま次々と魔人は討ち取られて崩壊させられていき、最後の一人となる。最後に残った魔人は、苦し紛れなのか何かを投げつけてきた。
「無駄よ」
投げつけてきた道具を切り払う。それはあっさりと砕け散ってこちらに影響を及ばさない。
しかし、それを見てニヤリと笑う。嫌な予感がするが、そのまま魔人を切り裂いた。
「くはは……ごほっ……ここを潰しても……まだ……我々は……」
「そうね。草一つ残さないくらい滅ぼすわ」
そう言ってトドメとばかりに剣を突き立てる。だが、不穏な笑いに少々引っかかりを覚えたが……しかし、考えても仕方ないと首を振る。
魔人はそのまま息絶えてサラサラと崩壊していき、魔石と同じように砂になっていった。
「……お疲れ様。残っているのは?」
「見てる感じは居ねえな」
「魔力を探ってますが、形跡は有りませんね」
……良かった。ここで成功だと言っていたということは、まだ外に成功例は出ていない。
シルヴィアくん達の作業をしている場所に戻ると、ちょうど最後の魔石を破壊しているところだった。
「お疲れさまです。どうでした?」
「そうね、それを破壊できて良かったわ」
そして、今見た光景……理性のある魔人へと変貌させる魔石についてを伝えると、難しい顔になるシルヴィアくん。
「……間違いなく恐ろしい光景でしょうね。ここで襲撃をしなかった場合、数十……数百という理性ある魔人が襲撃してきたわけですか。それに……」
「ええ、この魔石を飲み込んで魔人になる……これの条件次第では、大規模なテロ行為も可能ですね」
ホークくんの言葉に頷く。突然隣人が魔人になる……そんなこともありえた。
ううむ、未然に防げてよかった……というか、場合によってはこれは次回作とかで起きていた可能性があったのかもしれない。
「それでも、ここにある魔石を壊したので問題はないですね!」
「ええ。少なくとも実験の成果待ちだったのでしょうからね」
そして、一段落をしたということで外に捕まえた残った奴らを回収しようと歩きだし……
「たっ、大変です!」
連絡員から、突然慌てた声で叫ぶ。
「お、王宮に魔人集団が襲撃を!」
ガタガタととんでもなく揺れる車中で、俺達は焦燥を感じていた。
二回目なので多少は覚悟はできている。何とか会話をするくらいの余裕はあった。
「おそらく、魔石でしょう。魔石の中には特殊な物があります。破壊されると共鳴をして同じ魔石に伝えるものがあります」
「……私が壊したことで連絡がいったわけね」
「そうでしょうね。少なくとも緊急事態に使う道具だったのでしょうね。相当貴重ですが、それに関しては仕方ないです。何をしてくるかわからない以上は、警戒して損はない」
そう言って慰めてくれるホークくん。
連絡員は気分悪そうにしながらも、逐一報告をしてくれる。
「現在、王宮の兵士達が対応を」
「魔人対策のために教国と研究をしていた成果のおかげで持ちこたえているようです。しかし、襲撃は苛烈で時間次第だと……」
「ええ。すぐに向かうと伝えなさい」
その言葉にうなずいて連絡を取り返していく。
おそらく、最後の鍵を手に入れたのだろう。そこから準備をして本来なら襲撃をするはずが、俺達の襲撃が伝えられた。だからこそ、作戦を変えて突貫で王宮を襲いにいった。
「……っ! 皆さん、捕まって!」
シルヴィアくんが叫ぶと、いきなりブレーキが踏まれる。
全員が吹き飛ばされそうになるが、何とか堪えて聞き返す。
「ぐっ……何が、起きたの!」
「進路上に何者かが」
そういうシルヴィアくんに、外に顔を出して見てみる。
進路の前に一人の男が立っていた。見覚えはないはずなのだが、誰かに似ているような……
「……そういうことかよ」
「ロウガ?」
「お前ら、先にいけ。いや、今すぐ発車しろシルヴィア」
「分かりました」
飛び降りたロウガくんを見てから、すぐに魔力を込めて加速させる。
突然の出来事に脳の理解が追いつかないところで、目の前に立った男は剣を抜いて切りつけようとしてくる。
しかし、それを防ぐロウガくん。何かを投げつけてくる男。
「……対処します!」
それを見たヒカリちゃんが、魔法を使って撃ち落とした。
それは空中で爆発する。どうやら爆弾らしい。そのまま走っていき、ロウガくんと男は遠く消えていく。それを見送りながらシルヴィアくんに問いかける。
「シルヴィア! アレは誰!?」
「キシドー家の長兄、ロウコウ・キシドーです! かつて諜報部で最も優秀な存在として伝えられていた人間で、足止めに来たはずです!」
「それなら、全員で挑めば安全に……」
「駄目です! 僕たちの道中に先回りをしている! 足を止めたらこの先におそらく確実に乗り物を使えなくする作戦を考えているはず! だから、一人で足止めをする覚悟をキシドーはしたんです!」
……そうだ。相手からすればどっちでもいいのだ。
足止めに人を割けば戦力は少なくなる。いくらこちらの人数が多いとは言え、一度戦ってから乗り直すなどすれば時間はかかるし、最悪相手は車輪の一つでも破壊すればいい。
相手も本気なのだ。だから、これが最善だとロウガくんは判断した。
「だから、急ぎます! 相手の思い通りにさせないように!」
「……分かったわ。急ぎなさい!」
そういうと、更に加速する。
もはや乗っているというよりも、荷台で跳ね飛ばされているような状況だが、それでも我慢をする。
心のなかに予感があるからだ。これが最後の戦いになる……そんな予感が。
そして、魔導馬車が去っていた後に残されたロウガとその兄であるロウコウ。
「……よう、ロウコウ。久しぶりだな」
「……」
そうやって語りかけるが、ロウコウはなにも答えない。
「何年ぶりだろうな……俺はあんたに憧れてたんだぜ? だから、俺は軍に入りたかった……あんたみたいに、国を守る人間になりたかったんだよ。まあ、その未来が潰えて腐ってたんだがな」
思い出話をしながらも油断せずに構えるロウガ。
ロウコウはそんなロウガのことを感情のない瞳で見つめているだけだ。それを見て肩をすくめるロウガ。
「なんか言わねえのか?」
「……ロウガ」
口を開いて名前を言うロウコウ。しかし、その言葉は呪いをかけるように恐ろしく、怨嗟の込められたものだった。
「なぜ、お前だけに才能がある」
「……なんだと?」
「俺がほしかったものを、なぜお前が持っている。後から生まれただけのお前が」
ドンドンと声が暗く、低くなっていく。それは、己の言葉で恨みが倍増していくかのようだ。
魔人化していく。しかも、今まで見ていたようなものではない。魔力が形を成していき徐々にロウコウの体を包んでいく。
「始祖魔法の才能があるだけの貴様が。やる気すらない貴様が。なぜそこにいるのだ……ああ、憎い。にくい。ニクイ」
そして、体が変貌した。それは、闇魔法で作られた鎧を作った騎士だった。
しかし、騎士というにはあまりにも禍々しい。
「ロウガ。ここで死ね」
今までに見たことのない力。そして、自分の肉親から向けられる悍ましい程の怨恨。
そんな感情とともに剣を向けるロウコウに対してロウガは……鼻で笑い、一笑に付した。
「はっ……なんだよ。女々しいやつだな」
「何……?」
「俺もあんたのことは言えねえよ。自分のなりたいものになることも出来ずに、不貞腐れてた女々しい腐ってた馬鹿な男だ。ロウガ・キシドーはそうだったんだよ……でもな」
そういって、ロウコウに剣を向けるロウガ。
「アクレージョっていうおもしれえ奴を見て、そして戦って思ったのさ……あれに勝ちてえってな。腐ってた自分じゃ到底追いつけないアイツみたいになりたいってな。だから俺は変わったぜ? ……なりたい物になれないから駄々こねて周り巻き込んで暴れてるアンタと違ってな」
「……黙れ」
「国を売って、借り物の力で楽しいか? その力で何かを成し遂げた気持ちになりてえのか? はっ、くだらねえ。俺の憧れたロウコウは死んだんだな! 誰かのために、己のすべてを掛けられるロウコウ・キシドーはよぉ!」
「黙れぇ!!」
その言葉に激昂したロウコウはロウガに剣を打ち付ける。
「なんだ、図星か!?」
「黙れ! ここで、死ね!」
「はっ、これ以上醜態を晒さないように俺が引導を渡してやるよ! ロウコウ!」
そして、戦いが始まる。それぞれの因縁を終わらせるために戦いが。
時間が遅れると悲しい顔になりながら最終決戦でドンドン仲間が自分の因縁の戦う展開が好きなのでの初投稿です




