闇の魔法と攻勢と
――さて、俺達はロウガくんの元にやってきた。場所は市井で営業をしている魔道具店だ。
ホークくんの運営している場所ではなくて類似の店である。こちらは、ホークくんの店と違って冒険者など向けに商品を取り扱っている店……ホームセンターみたいなものだ。入ってきた俺達を見てロウガくんが振り返る。
「おう、どうした。まだ目に見えた情報は出てねえぞ」
「ええ、分かっているわ。ただ、手伝えることがないかと思って来ただけよ」
「手伝いな……つっても、店主も協力的だから言うほど困ってることもねえんだよな。ああ、でも帳簿とかを俺が見ても詳しい事は分からねえが」
そう言って店主を見る。突然、名のある貴族がぞろぞろ入ってきたからか冷や汗を流している店主はすぐに答える。
「は、はい。キシドー様に帳簿をご覧いただいて確認してもらっていますが、ある程度知識がないと分かりづらいかもしれません……私もまさか商品を買った人間が魔人と関わりがあるとは思わず……」
「いえ、気にせずとも構いません。物を売るのは商売人としての仕事ですし、巧妙に隠していたのなら問題は有りませんから。あくまでも我々が憎むべきは魔人ですので」
「セイドー様にそう言っていただけると助かります……」
ホークくんが店主のフォローをしながら帳簿を確認している。まだしばらくは時間がかかるだろう。
さて、手持ち無沙汰なのでロウガくんを雑談をすることにした。
「カイトの担当しているもう一軒は?」
「そっちは食料品店だな。まあ、あくまでもそれっぽいやつに売った話だがそっちはハズレの可能性が高い。こっちは市井からのタレコミを参考にしてたんだが、この魔道具店は自分から「少々不思議な商品が売れている」って話が来たんだ」
「不思議な商品?」
「魔法の触媒……まあ、魔石とかだな。研究者しか使わねえような魔石が定期的に売れる。だから妙だということで自分から申し出たってわけだ」
なるほど、確かにそれは奇妙だ。
魔道具店で魔石の取り扱いはあるが、定期的に売れるようなものではない。店売りの魔石は純度も低く、普通に使うには利用できないものだから。ホークくんも帳簿を見て頷いている。
「……たしかに奇妙ですね。魔石の売れ方が一定すぎる。それに……」
「それに?」
「純度が低すぎる。高級品ですらない、いうならくず鉄に近い魔石です」
「なんでそんなもん売ってるんだ?」
「は、はい。子供の魔法の訓練や使い捨て前提で使い捨てることが多いんです。特に研究者の方などが個人的な発明のために買ったり……とはいえ、ここで買うこと自体は少ないのですが」
いうなら、とっさに思いついたり必要になって買いに来る想定の商品なのだ。
純度の低い魔石を大量に買い込んでいる……何かを狙っているのかもしれない。
「買いに来た客の容姿は?」
「記憶にある限りで……思い返してみると、おそらくスラムの人間ではないでしょうか。一見するとしっかりしてる服装で来ますが節々で隠しきれていなかったので」
「ふむ……ドンピシャですかね。しかし、スラムか……それは困ったな。追うにしても流石に足がつかないな……」
ふむ、スラムの適当な人間を捕まえて使っていたのか……あいつらは失敗したようだ
ついに尻尾をつかめるかもしれない。
「騒動が終わるまで魔石の取り扱いを各店舗に全面的に禁止に。とはいえ、買った人間を割り出すのは……」
「それなら任せなさい」
「えっ?」
驚くホークくんに対して、笑みを向ける。
「ちょうどいいツテがあるのよ」
その日の夜に、市井の裏通りに行くとそこには黒いコートを着た男が待っていた。
当然ながら他に人は連れてきていない。
「……アクレージョ様。こちらです」
「話を聞かせてもらえるかしら?」
「ひ、ひいい!」
怯えた表情のスラムの男。
何を頼んだのかと言えば裏社会のボスに以前手助けをしたりした恩をフル活用して、頼まれた奴を連れてきてもらったのだ。ボス側にしても、魔人という集団に暴れまわられるのは不都合なので協力的だった。
「貴方に魔石を買うように頼んだ人間について。聞かせてもらえる?」
「聞かれたことを答えろ」
「は、はい! あ、ある日スラムに見慣れねえ男が来たんだ! 最初は、流れ者かと思ったが……適当な奴らに声をかけてた! ボスが怖いから、どいつも頼みを断ったが俺は金に困って頼みを聞いたんだ! それだけだ! 俺は用意した服を着て魔石を買ってただけなんだ!」
「そう、情報感謝するわ。他に詳しい話は?」
スラムの男ではなく連れてきた男の方に聞いてみる。この男からこれ以上は詳しい話は聞けないだろう。
既に聞かれることは織り込み済みだったのか、黒いコートの男は静かに答える。
「いつからかチョロチョロと逃げ回るスラムのネズミが居た。ウチの若い奴らが追いかけたが、撒かれて捕まえられなかった事がある。逃げ足の早いネズミだと思っていたが……」
「おそらく魔石の取引をしたやつと同じね」
さて、ある程度は判明した。
「お役に立てたでしょうか?」
「ええ、十分よ。協力感謝するわ」
「いえ……もしも何かあった際には我々をお頼りください。ボスも、貴方のことを孫のように思っていますので」
「本当に困ったらそうするわ」
そう言って笑顔で別れる。
さて、各所で情報を集め終わった。この情報を持って帰るとしよう。
そして情報を集めた二日後、シルヴィアくんが全員を呼び出した。
「……今までの情報提供ありがとう。仮拠点らしき場所を割り出せたよ」
「おお!」
他の全員が歓声を上げる。それはつまり、ついに奴らの尻尾を掴んだということだからだ。
「強行軍で疲れているだろう。しかし、油断はしないでほしい。これから奴らのアジトに踏み込む……そして、僕の予想だけどもおそらく本隊は居ないはずだ」
「……どういうことですか?」
「学園長から情報があった。今、最後の鍵の隠し場所が襲撃をされているとね」
その情報にざわめく。
「……そちらを襲撃するべきでは?」
「いいや、奪われることはこちらも前提に考えていたから今襲撃をしている魔人達を狙わないほうがいい。敵は「奪う時に妨害されること」は予想していても「奪う実働部隊を放置してアジトを襲撃される」とは考えない。本当の狙いがわからない以上、最も効果的なのは相手の出鼻をくじくことだ」
その言葉にこの場にいる全員が納得をする。
「魔道具による連絡の連携準備もできている。今回は速さが重要だ。王選メンバーは全員で行く事にする。非戦闘員の連絡係を二人。それ以外はなしだ。誰も犠牲を出したくないからね」
「ええ、分かったわ」
「何度も言うようだけども、速度が重要だ。一時間後に出発をする。いいかい?」
全員が頷いた。
そしてついに始まる。魔人達に対する俺達の攻勢が。
今日はグッタリしてたせいで遅れましたが、明日でペースを取り戻す初投稿です




