表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/115

三年と隠しアイテムと

 ……目が覚めた。うん、夢は見なかった。よほどぐっすりと眠っていたらしい。

 見上げた天井は見覚えのある医務室のものだ。なんというか、医務室の天井に見慣れるというのは出来るなら遠慮願いたい事だな……と他人事のように思う。まあ自業自得なんだけどさ。


「……?」


 ふと手の感触を探ると何かを握っている。

 ……ああ、もしかしたらヒカリちゃんが心配してずっと手を握っていくれていたのかもしれない。そんな風に思いながら手元を見て……


「……なに?」


 剣だった。いや、剣だ。どこからどう見ても。装飾がある古い剣であり歴史を感じる。なんで持ってるんだ?

 脳が混乱する。なぜ俺は剣を持ったまま寝かせられていたんだ? 手から離そうとして……いや、離れないぞ、これ。と、そこで扉が開いて誰かが入ってくる。


「……やあ、起きたみたいだね」

「シルヴィア」


 優しい笑顔のシルヴィアくんが入ってきた。

 どうやら他の皆は無事だったようだ。なにせ、大きな怪我やトラブルがあれば今こんな顔は浮かべていないだろう。


「大丈夫かい? あれから五日が経過したんだよ」

「案外早いわね」

「……慣れ過ぎだよねお互いに。普通は五日も昏睡してたら心配をするべきなんだからさ」


 そう言われて思わずクスリと笑ってしまう。シルヴィアくんも苦笑だ。まあ、実際心配するべきなんだけど慣れすぎているよな。


「今後気をつけるわ。それで、あの後は?」

「竜は核を抜き取られて消滅。一応終わった後になにか無いかを探索をしたけど、めぼしいものはなかったね。とはいえ、純度の高そうな魔石を数個拝借したよ。それで僕たちの武器も新調しようってね」


 なるほど、ちゃっかりとしている。多分ホークくん当たりは凄い喜んでいるだろうな。

 しかし、無事勝てたか……ゲームと現実は違うとはいえ、本当に勝ててよかった。


「探索を切り上げて地上に戻ったら、それはもう待っていた人達から大歓迎だったよ。学園長が帰ってきた時の治療とかのために手回しをしてたらしくてね。そこで僕たちが誰も欠けることはなく帰ってきたから大歓声ってわけだ」

「そう。それなら私も怪我はすぐに治ったのね」

「いやいやいやいや! 医者が数人がかりの大治療だったからね? 傷もそうだけど、魔力の枯渇に汚染が酷かったからね。本当に治療が遅れてたら死んでたかもしれないんだから反省してほしいよ。何故か侵食の影響が低かったから余裕はあったとは言え、人員を回してなかったら本当に分からなかったんだよ。自暴自棄というか、もっと自分を大切にしてほしいよ」


 そう言われて自分の仮説は間違ってなかったようだ。危ない橋を渡ったとはいえ、レイカ様は闇魔法に耐性があるのだろう。まあ、一般人に比べてという話だ。

 まあ、危ない橋を渡るのには慣れている。


「心配をかけたわね」

「その言葉は他の……ノセージョさんに言ってほしいかな。だって、限界が来て気絶するまでここに居たんだよ。ノセージョさんだって重症だったのに」

「……あの子は本当に」

「それはアクレージョさんにも言いたい言葉だね……まあ、ノセージョさんも起きて、他の皆も大なり小なり安静が必要だけど致命的な怪我はなかった。本当に、ここまで犠牲もなく倒しきれたのはアクレージョさんが最後に飛び込んだおかげだ」


 そう言って頭を下げるシルヴィアくん。

 そこには冗談もなにもない、本気での感謝が含まれている。


「急に頭を下げて、何?」

「本気の感謝の気持ちだよ。これで、魔人達に対抗する宣言が出来る……今まで、奴らのせいで多くの人が犠牲になってきた。それでも待ち続けるしかなかった現状を打破する選択を取れたのは君が今まで積み重ねて来たからだ。だから、シルヴィア・ブレイドとして感謝を述べたい。ありがとう」

「……気持ちは受け取るわ。でも、解決はしていないわよ」

「いつ言えるかわからないからね。だから、今言っておこうと思ったんだ」


 そういうシルヴィアくん。

 ……まあ、なんだろう。シルヴィアくんにこうして言われると感慨深い気持ちになるな。

 そしてある程度の説明を受けて一段落し、ようやく聞きたいことを聞ける雰囲気になる。


「それで、これは何?」

「……うん、まあ聞かれるよねその剣について」

「先程から手から離れないのだけども」

「ああ、魔力を抑えたら取れると思うよ。試してみて」


 そう言われて、ならばと魔力を抑えてみる。

 ……あ、本当だ。すんなりと手から離れていく。どうやら手に持って魔力を通すと離れない仕組みらしい。便利だな


「本当ね。それで、これは何?」

「それがあの竜の核だったんだよ。その武器自体が膨大な魔力を蓄えていたんだ。とはいえ、倒した時に多くの魔力は喪失したけどね。それでもその武器はとんでもなく強いよ」


 ……龍の核……あ、それってつまり。


「この剣を中心にして、あの魔獣は成り立っていたのね……正体は分かる?」

「その武器に関して、僕とツルギくんで調べてみたけど……おそらく、それはこの国の成り立ちに関わる剣だ。仮称ではあるけども、始祖の剣と呼んでいる。神器とは別の、魔女に対抗する勇士が使った剣だ」


 うん、ゲームで見た覚えのある名前……やっぱり隠しアイテムじゃねーか!

 ダンジョン踏破達成をすると何故か手に入る隠し武器、始祖の剣。性能も公式チートの神器を除けば最強武器と名高いが、まずダンジョン踏破出来るなら使う機会がないと有名な武器だ。

 特に魔獣に対して特攻があるので雑魚戦に置いて負けることが一切なくなるレベルの武器なんだが……


「それが、なぜ私の手に?」

「君が必死に掴んで持ってきた時に君を使い手として認めたみたいなんだ。正確には、武器自体が魔力の波長を覚えるみたいでね。君以外の人間が触っても魔力が通らないんだ。伝承レベルの古い武器で僕たちの知らない技術で作られているから詳しいことは調べないとわからないんだけど……」

「……つまり、私しか使えないと?」

「うん、そうだね。アクレージョさんの武器が壊れて、そして新しい武器が手元にやってきた。ある意味ではこれは天命なのかもね」


 ……隠し武器がレイカ様の手に渡ることになるとは夢にも思ってなかった。

 ゲームだとヒカリちゃん専用武器だったけど、最初に掴んだのがヒカリちゃんだから使えるとかそういうのだったんだ。知らなかった事実を知って感心する


「貰えるなら貰っておくわ」

「それなら良かった。治療中もずっと剣を持ってるからちょっと面白い光景だったよ」

「余計なことは言わなくていいわ」


 苦い顔をすると笑うシルヴィアくん。そして、スンと真面目な顔に戻る。


「アクレージョさんの調子が戻ったら号令をかけよう。この国を傾けようとする魔人を退治しようってね。アクレージョさんに号令の役目を頼んでいいかい?」

「……私が?」

「誰だっていいんだろうけどね……でも、アクレージョさんが言うのが一番士気があがるよ」


 ……まあ、いいか。それは大筋じゃないし。

 しかし、こうして考えるとすぐに終わるかと思った闇魔法と魔人……長い付き合いになったな。だが、もう終わりは近い。


「そうね、そろそろケリをつけましょう」

「うん……おっと」


 と、突然立ち上がって部屋の隅に避けるシルヴィアくん。


「……何をしてるの?」

「いやあ、避難をね」


 そういうシルヴィアくんに首を傾げ……ドタドタと足音が聞こえる。

 そして医務室の扉が開いて飛び込んでくる。


「レイカさん!」

「ぐっ……!」


 抱きついて……ヘッドバットが鳩尾に来た。しかし、感極まっているヒカリちゃんは気づかない。


「よかった! もし、レイカさんが目覚めないとって思ったら……!」

「ノセージョさん、アクレージョさんが苦しんでるよ」


 冷静に言うシルヴィアくんだが、気づかずワンワン泣いている。

 そして、ぞろぞろといつものメンツがやってくる。


「よう、アクレージョ。まあまあ元気そうだな」

「師匠、見ろ! お見舞いに色々と貰ったぞ! 空腹だろうから食べないか!」

「……カイト、病人にいきなり食べさせるのは悪いですよ」

「うむ。粥からがいいだろう」


 そうして一気に騒がしくなる。ふと、最初と違ってこれにすっかり慣れてる自分に気づく。

 ……ただ、何かが欠けている。それは、短い間でもこの騒がしさの一部になった彼女が足りないからだ。


「貴方達」

「……レイカさん?」

「取り返すわよ。あの子を」


 その言葉に、全員が頷いた。

 さあ、準備はできた。魔人との因縁を終わらせようじゃないか。

そして最終章へ……なので初投稿です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おおぉ!専用のチート武器、超ロマン的です!! レイカさんは本当に死に掛けましたから、努力がしっかり報われましたということですね!レイカさんだけは始祖魔法を使えないですが、これで仲間外れるこ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ