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三年と打ち明ける事実

 辛そうな顔で、震える体を抑えるようにしながら吐き出すように呟くメアリちゃん。


「……あたしは、昔から魔力だけはあったから他の子よりも強かったし普通よりも優秀だった……でも、どうやっても魔力を魔法として使う事ができなかった……こうして、この学園に入学して必死に魔法を使えないことを隠してきたのに……」

「それは……当然でしょう! 魔法を使えない人間が入学するなんて意味がない! 文字を知らない人間が言葉の学園に通うような蛮行ですよ!」


 メアリちゃんの秘密。それは魔法を使えないこと。

 この世界にいる生物は誰しもが魔力を持っている。しかし、その魔力を使えるかどうかは才能によるのだ。この世界において魔力を持っていることと、魔法を使えることはセットなのだ。

 どちらかだけしか出来ない人間は、魔法を使えないと同じである。


(まあ、使えてもダメな奴はダメなんだけどね)


 そんな事を思いながら、メアリちゃんを見る。

 視線をこちらに向けない。おそらくレイカ様を見ることが怖いのだろう。騙してきたこともそうだし、幻滅されることを恐れているのだろう。

 ホークくんはそれに気付かず、衝撃の事実に対して叫ぶように問いかける。


「どうやって魔法を使えないことを隠してきたんですか!?」

「……模擬戦は、魔道具を使えばある程度は誤魔化せたし……それに、魔力を通すことはできるから魔獣を倒すくらいなら出来たから……」

「いやいや! 魔力を通しただけで倒せるなら貴族の存在なんて必要が……そうか、始祖魔法のせいですか!」

「そうでしょうね」


 何度か説明したが、魔法を使う理由は魔獣を倒すためだ。

 武器に魔力を通しただけで魔獣は倒せないのだが、メアリちゃんは運がいいのか悪いのか……始祖魔法の才能を持っていた。始祖魔法の魔力に触れるだけで魔獣は弱る。そして元の魔力量の多さも相まって、魔獣を倒せてしまうから気付かれなかったのだろう。

 魔法を使わずに魔獣を倒せるのはシルヴィアくんや、ヒカリちゃんクラスの始祖魔法の才能を持っていないと無理だと言えばどれだけ規格外が分かるだろう。


「……なぜ、ここでその秘密を打ち明けたのですか。今まで隠してきたのなら誤魔化してもよかったでしょう」

「……そうね、あんたの言う通りバレたらあたしはこの学園から追い出されて居場所もなくなる……だから、本当を言えば隠し続けたかった……だって、この学園は楽しかったから……でも」


 そうして、ちらりとレイカ様を見る。


「でも……レイカ様を騙して……レイカ様を危険に晒して、それで自分のために秘密を抱えて……それを考えたら……居場所を失うよりも嫌だったの……」


 泣き出しそうな表情でそういうメアリちゃん。

 メアリちゃんは相当に悩んだのだろう。なにせこの学園に入学したこと自体が嘘で塗り固められている。バレてしまえば、追い出されるなら良い方で罪に問われて処刑などだってあり得る。少なくとも今の環境はなくなるのだ。それでもレイカ様を危険に晒すよりはと打ち明けた。


「そうだとしても、許されることではありません! アクレージョさんだって……」

「そう。その程度のことで悩んでいたのね」

「この通り……え!? アクレージョさん!?」


 ハシゴを外されて驚くホークくんを無視して、メアリちゃんに言葉を投げる。

 その言葉に、メアリちゃんは今まで逸らしていた目をレイカ様に向ける。


「レイカ様……?」

「嘘で塗り固めていた事は恥じるべき。魔法が使えないのなら、それは裏切りね。でも、メアリ。貴方は()()()()()()()


 そう、レイカ様であればメアリちゃんは間違いなく認められていた。それだけのものを見せているのだ。

 ただ魔法を使えない人間が、始祖魔法を使える王候補が死にかけるような状況を生き残れるか? 頭角を表すヒカリちゃんに張り合えるのか?


(そりゃ、出来るわけがない)


 ゲームをプレイして、この秘密を知ってからずっと思っていたのだ。たしかに魔法が使えないのかもしれないが、それを隠し通してヒカリちゃんに匹敵する力を持つまでに至ったメアリちゃんはとんでもない子だと。

 ゲームでは最後まで秘密にして、色々なイベントの末に判明した事実。それを自分の口から言ったのだ。それはどれだけの覚悟が必要だったのだろう。


「低い実力を隠して紛れ込むなら私は容赦なく切り捨てるわ。その点、メアリ。貴方は私を認めさせるだけの成果を出している。もしも魔法が使えないからということで切り捨てるという人間が居るならその全てを叩き潰しなさい」

「あの、アクレージョさん……いくらなんでもそれは……」

「あら? ここまで私に付き合ってきてまだ分かっていないのかしら?」


 いろいろな言葉を重ねてきた。

 だがそんな言葉よりも、何よりも。


「レイカ・アクレージョに常識は関係ないわ」

「……はは、それもそうでしたね」


 その言葉に、思わず笑みをこぼすホークくん。

 そう、俺の憧れたレイカ様はとんでもなく恐ろしい人で……それ以上に、己を突き通す最高の悪役(ひと)なのだ。


「いずれ、大勢を騙して入学してここまで来た事実を精算する日がくるでしょうね。でも、それは今ではないわ。そして、その時には自分の力で乗り越えなさい」


 そして、剣を構える。


「罪なんてどうでもいいわ。今は己に出来る事をしなさい。それとも、私が認めたメアリは何も出来ないというのかしら?」

「っ……! で、出来ます!」

「それならいいわ。ホーク、魔法の準備を」

「……分かりました。良く考えれば言い争っている時じゃありませんでしたね」


 そして、剣を構え魔法の準備をするホークくん。

 ドンドンと落下する雛。それを魔法で撃ち落とし破壊していく。


「……私に、出来ること……」


 呟いて、自分の手を見つめるメアリちゃんに答えが見つかると良いと思いながら、魔獣を倒し続けていく。



 そのまま、延々と雛を倒し続ける。延々と降り注ぎ増えていく魔獣がたどり着かないように倒すのは目が回りそうだ。

 しかし、その甲斐あってホークくんから魔法が放たれる。


「――『刺突の閃光』!」


 剣から離れた光線は、ついに完全に捉えて朱雀の羽を切り落とす。

 グラリと揺れて……そのまま飛び続ける。


「お見事……ただ、効果は薄いわね」

「……ああ、そうか。魔獣だから関係ないのか……」

「本当に不気味ね」


 そう、魔獣にとっては魔力で無理やり地上の生物に当てはめているだけなのだ。なので飛んでいる鳥の魔獣は羽で飛んでいるわけではなく魔力を利用している。

 片羽で飛んでいる朱雀は見ていて不安になる。しかし、これは大きい成果だ。


「羽から落ちてきていた魔獣は減ったわね」

「そうですね。これなら後2発で落とせるように威力を上げましょう」

「あら、出来るの?」

「ええ。時間はもうちょっとかかりますが」


 そう言って、剣を構えるホークくん。

 やはり魔法の使い方が根本から違うんだよな。以前に仕組みを聞いたら軌道と弾速を計算して着地点に魔法の威力を算出し……みたいな事を言ってた。魔法で現代兵器みたいな戦い方をする男なんだよな、ホークくん。


「……あら?」


 ふと、落ちた羽を見る。その羽根は溶け出すことはなく、そのまま残っている。

 嫌な予感がして、その羽根に剣を向けて魔法を打つと……


「――そうね。私が甘く見ていたわ」


 その魔法を喰らって、羽が形を変えていく。

 当然、魔獣を落としてきていた羽が落とされてそのまま沈黙するわけがないか。そして、形を変えて……


「亀ね」


 モチーフを考えると玄武か? 最悪は四体になるのか。


「……まだ落としてきているけども、やるしかないわね」


 空から降り注ぐ雛を潰しながら、目の前の玄武を相手にするわけか……

 と、目の前に割り込む姿。それは、腕に包帯を巻いているメアリちゃんだった。


「メアリ?」

「レイカ様。ここはあたしがやります」


 そういうメアリちゃんは、決意を決めた表情だ。


「貴方、汚染は――」

「焼きました。だから、大丈夫です」


 そういうメアリちゃんの包帯から見える地肌を見れば、確かに汚染は引いているが焼けただれている。

 浄化の蝋燭は魔法によって本当に燃えているのだ。状態の悪い汚染を除去するために直接腕を燃やしたのか。それだけの覚悟を持ってしたのか。


「なら、任せるわ」

「はい!」


 心配する言葉はかけない。

 そして、魔獣との戦いは第二ラウンドへともつれ込んだ。

切り落とすと増えていく厄介系なボス相手なので初投稿です

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