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三年と魔獣の調査

 さて、情報を集めて実際に調査が必要だと判断してどうするべきかを話し合っていた。


「ある程度方針は見えたけどもこの先はどうするかね」

「そうですねー。カイトさんが付いてくれば色々と楽かと思いますけど……」

「いや、オレはオウドー家を守らないといけない。この家に関して当主はオレだ。シルヴィア殿であれば当家とも関係が深く、この家についての勝手も知っているので任せてもいいかもしれなかったが……いや、それも無理だな。今の当主はオレなのだからな」

「ええ、そうね。自覚は持つべきよ」


 そんな風に話し合いをする。

 情報を考えて、汚染されている地帯に何かしらの魔獣を操る誰かがいるかも知れないと判断して赴くことにしたのだ。


「調査するべきポイントは?」

「左の門の平原側に魔獣の湧く巨大な汚染地帯があるのだ。そこが大きい魔獣の発生源になっている。これはこの世界で最も汚染されている地帯だ……恐ろしいことに、山一つが汚染されている状態だ。蝋燭や始祖魔法を使っても徐々にしか溶けない。冬の積もった雪を蝋燭の火で溶かすくらいに難しいのだ。はっきり言って多くの魔獣やってくるのであればここしかないと思っている」

「ええ、噂には聞いたことはあるわ。死体と死骸の山で出来た呪われた山」


 この世界における負の遺産と言える場所。

 今でもそこから大量に魔獣が生まれてくる。キシドー家の管理する地にもあるが、そちらはまた毛色が違うらしい。


「うむ。襲撃に使う魔獣を持ってくるのであれば、やはり汚染地帯のそこしかないと思う。他の場所でいきなり百近い魔獣が生まれることは殆どない」

「そう。なら、そこの調査をすればいいのね」

「すまない……師匠、頼む。オレはここを守る人間として動けない。だから師匠とノセージョ、ホオズキに任せたい」


 そんな風に言うカイトくんに、うなずくメアリちゃん。


「大丈夫です! レイカさんのことは任せてください!」

「そいつよりも、あたしの方がレイカ様の役に立つわ」

「張り合わないでくれませんか!?」

「事実だもの!」


 また睨み合う二人。だが、カイトくんも俺も慣れてしまってすっかりスルー出来るようになってしまった。

 さて、それはそれとしてだ。


「ただ、問題はこの当たりの地理やその問題の地点について詳しくない私達だけで行ってもわからないと思うけども、そこはどうするつもり?」

「そこに関しては悩んでいる。少なくとも、調査をするのであれば土地勘のある人間が付いていくべきだ。それに、前を知らなければ変化もわからない」

「そうね。ただ、単なる兵士は少々困るわ。付いてこれるか分からないし自衛が出来る人間じゃないと難しいわ。そういう人材は……」

「おう、それなら俺が行こうじゃねえか」


 そう言ってやってくるのは、ガラの悪い方の兄。オルカだった。

 不機嫌そうな表情だが、それでも先程よりも柔らかい。


「大兄様!?」

「あら、守りはいいのかしら?」

「襲撃が終われば時間が空く。その間に席を外すくらいなら問題はねえだろ。時間を掛けて何も分からねえと報告されるくらいなら俺の時間を使って調査を手伝ったほうがマシだ」

「むう……だが、大兄様が守っている門が……」

「襲撃の時間外にいない程度で取り乱す奴はいねえ。それに汚染地帯に詳しいのは俺だろうが。お前達が戦えるようになる前から、俺はずっとこの汚染地帯で戦ってきたんだ」


 そういうオルカに、背後からドルフもやってくる。


「カイト、僕も良いと思うよ。問題があれば、不在の間にこちらの防衛担当くらいなら出来るからね。魔獣の襲撃だってないだろうから」

「小兄様……ううむ……それならば頼むべきか……最悪、オレが出向けばいいし……」


 悩んでいるカイトくんだが、決断したらしい。


「うむ。小兄様が居るなら大丈夫だろう……大兄様、お願いします」

「おうよ。んじゃ、午後の襲撃を超えたら出発だ。準備をしておけよ」


 そう言い残して、去っていくオルカ。


「そうね、なら私達も行きましょうか。カイト、頑張りなさい」

「うむ! 分かったぞ師匠!」


 元気よく返事をするカイトくんを背に部屋を出てそれぞれが調査のための準備をしようとして……


「ああ、ちょっといいかな?」


 そこで、部屋を出てきたドルフに止められる。


「あら、何かしら?」

「忠告……というのも変な話だね。僕の言えなかった違和感を伝えたいんだ」

「違和感?」


 その言葉に、怪訝な表情をする俺達にドルフは伝える。


「……オルカが少々怪しい。オルカは口は悪いけど、ここまでぶっきらぼうな人間じゃない。彼だって元当主だった人間だ。普通に君たち貴族に対する対応だってわきまえている……そういう意味だと、オルカはおかしいんだ」

「……つまり、裏切り者だと?」

「いいや、そこまでは言わないさ。ただ、気になったことだよ。カイトがいる前では言いたくなくてね……まあ、戯言だと思ってくれてもいいよ」


 そう言い残して去っていくドルフを見送る俺たち。

 家族の裏切り……だが、短い間でも闇魔法で裏切ってきた身内の人間はたくさんいる。だからこそ、否定はしきれない


「レイカ様……どうします? やっちゃいます?」

「なんでそうなるのよ……別にいいわ。警戒はしておくべきでしょうけど、判断を誤らないことね」


 そういってこの場は収める。

 不穏な空気を感じながらも、調査までの時間を待つのだった。



 そして日が落ちる当たりで魔獣の二度目の襲撃が行われた。

 今回の襲撃は兵士達が十分に休めたことと、調査に行く俺たちを消耗させるべきではないということで不参加でいいと言われた。どうやら魔獣たちは順調に対処出来たらしく、すんなり終わったと報告が入る。


「それじゃあ行くわよ」

「はい! レイカさん、頑張りましょう!」

「レイカ様! 私にいっぱい頼み事をしてくださいね! なんでもやりますから!」


 ……気合は十分なようだ。

 そして、待ち合わせている門の前では完全に武装したオルカが待っていた。その表情は不機嫌そうだ。あの言葉を聞いた後だと、何かしらを感じてしまいそうになる。


「来たか」

「あら、待たせたかしら?」

「いいや、さっさと行くぞ」


 そう言ってザクザクと平原を進んでいく。こちらを見ずに自分のペースで歩き始める。

 その態度が不満なのか、メアリちゃんが噛み付く。


「ちょっと! レイカ様に対してそんな態度していいとでも……!」

「別にいいわ。行くわよ」


 そう言って付いていく。

 ……草木が生えていない無人の荒野を無言で歩き続ける。

 昔は緑もいっぱいの美しい風景だったらしいが、魔獣によって見る影もなくなった。生命があれば魔力を持っている。それを食らう魔獣が暴れまわれば残るのは滅びた後の残骸だけだ。


「……」

「……」


 オルカの動きに警戒をする。もしかしたらという可能性は残っているからだ。そして、オルカも時たまこちらをジロリと睨んでくる。お互いにピリピリとした空気が流れる。

 緊張感が重圧を持ってきそうな空気の中で、流石に息苦しくなったのかヒカリちゃんが雑談をする。


「あの、オルカさん……その、カイトくんとは仲が良いんですか?」

「あぁ?」

「あまり学校でご兄弟の話を聞かなかったので……」

「仲は悪くねえが、いいって公言することはねえ。馴れ合ってる家族だと思われたら、それは面倒な奴らに突かれるからな」


 そう言って答える。


「カイトは変わった。昔は正義感をこじらせて現実も見てねえガキだったが……クラウン学園に通って変わったよ」

「そうね。私に喧嘩を売ってきた時とは別人だわ」

「……そりゃ迷惑をかけたな。アクレージョだったか」

「あら、私を知っているの?」


 突然名前を呼ばれて反応をする。

 最初の反応から知らないと思っていたが……ああいや、顔を知らないのか。納得をする。


「まあ、流れで分かった。お前のおかげで俺たちの甘ったれた弟が一人前になった。それは感謝している」

「あら、急にどうしたの?」

「俺たちも始祖魔法の才能を持つ弟に対してどう接していいか分からなかった。でも、あいつが折れたら家の存続の危機だ。だから……甘やかしすぎたんだよ。性格がネジ曲がったり傲慢にはならなかったが、世間知らずのバカになっちまった。そんなやつに責任ある立場は任せることは出来ない。だからこそ、当主は今まで代理で俺がやっていたんだが……この一年でアイツは変わった」


 そういうオルカの表情は優しい。その表情は大切な弟を持つ兄の顔だ。

 その表情を見て、緊張した空気が消える。悪意を持つ人間の浮かべる表情に見えなかったからだ。


「自分を厳しく律することが出来て、悪いも良いもちゃんと見極められるようになった。あいつのままで貴族として成長した。それは本当に嬉しいんだ」

「なんだ、良いお兄ちゃんじゃない」

「はっ、いい兄貴ってのはな……あんな弟になる前に叱れる兄貴だよ」


 そう自虐する。最初の頃のカイトくんに対して思う所はあっても何も出来なかった兄貴か……ゲームファン的にもっと話を聞きたい。


「そういう意味じゃあ、アクレージョ。あんたは恩人だ」

「別に。勝手にあの子が成長しただけよ」

「そうか……でもキッカケはあんただ。だからこそ……」


 そう言って、こちらを振り向く。その表情は先程の柔らかな兄の表情ではない。戦う覚悟を決めた人間のものだ。

 手には二本の剣を持っている。カイトくんと似たようなスタイル。こちらも対応するように剣を構える。その突然の豹変に俺たちは呆気に取られる。


「こういう形では出会いたくなかった」

「……どういうつもりかしら?」

「この先に行かせるわけにはいかねえ。俺も勝てるか分からねえが……覚悟を決めさせてもらうぜ」


 本当に裏切っていたのか……? そんな疑問が脳裏に浮かぶ。だが、向こうがやる気なら抵抗するしか無い。

 そして、問題の地点の調査の前にオルカと戦うことになるのだった。

昨日は忙しくてぐっすり寝ていたらこんな時間に初投稿です

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