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ご存じのないイベントなんですが

「……どうなってるの……」


 ……学校が休みではあるが、俺はアクレージョ家の客間でグッタリとしていた。

 別にこれは家に来る厄介な貴族が面倒くさかったとかそういうわけではない。レイカ様なら簡単にあしらえるし。

 そこへ、ルドガーが差し入れに紅茶を差し出してくれる。


「お嬢様、どうぞ」

「……ありがとう、ルドガー」


 飲むと落ち着く味だな……本当に心が休まっていく。

 しかし、脳内ではまだ混乱が続いている。どうして……どうしてこうなった。いやもう、


「お疲れのようですが……原因は彼女ですか?」

「……ええ、そうね」


 もうルドガーと彼女で通じるようになってしまった。当然ながら心労の原因はヒカリちゃんだった。

 というのもだ……


(なんでヒカリちゃん、あの後もレイカ様のところにめっちゃ来るの!? いや、ちゃんと他の生徒とかと交流はしてるっぽいけどさ!)


 前回釘を差したら、何故かレイカ様に朝とか休憩時間、お昼に報告に来るようになった。放課後はちゃんとやってるみたいだが、だからって他の時間全部ヒカリちゃんで埋め尽くされるとは予想してないよ!?

 この前に至っては、休みだというのに気分転換に出かけた街でヒカリちゃんに出会ったのは正直ビビった。怖くて泣いてしまうかと思った。偶然だったのだが、多分主人公の運命力とかそういうのが働いてると思う。


「良い子なのですがなぁ……レイカ様もお忙しい身。もしもご負担であるのならば、私の方から彼女に対して然るべき対処を……」

「……別にいいわ。この程度の些事で人を動かすわけがないでしょう。相手も下級生よ。おべっかでもなく、私に関わってくるのが慣れないだけよ」

「ですが、お嬢様のお時間があまり彼女に時間を取られるのも……」

「この程度で音を上げていたら、当主として失格よ」

「かしこまりました」


 まあ、正直に言えばちゃんと王子様候補と仲良くしてほしいのが本音だ。けども、明らかにルドガーのいう対処はバッドエンドフラグ立っちゃうんだよ……ヒカリちゃんの方の……

 ルドガー、いぶし銀で涼やかなイケメンおじいちゃん執事なのだが冷酷な面もあるのだ。学生なので生き死には関わらないだろうが、突然休学させるとか事故が起きるとかマジでやるからな……そしたらヒカリちゃんの能力値足りなくなっちゃう。


「このルドガー、お嬢様の当主としての心構えに感服いたしました」

「おべっかはいいわ。それよりもこの後の予定は?」

「はい。少々緊急的に入った用事ではありますが……お嬢様の学校の……」

「あの子じゃないわよね」


 ノータイムで聞き返しちゃった。いや、あり得るから怖いんだよ。ヒカリちゃん。

 ホラーゲームじゃないっていうかストーリーの大敵なんだぞ。そんな相手に家にまで遊びに来たら正直もうどうしようもない。ゲーム崩壊だよ。


(……そういいつつ、確認してる感じではレイカ様に懐いている以外はちゃんと原作通りのイベントをこなしてるんだよな……)


 学園で情報収集をしたりこの目で確認したがユーザーを抱腹絶倒させた「曲がり角昇龍拳事件」とかドン引きの「ツンデレ号泣マザコン男事件」とかちゃんと発生してたし。

 ヒカリちゃんはフラグ大失敗か、能力値足りずで学園追放エンドさえなければ一年の間は安泰だ。そこを乗り切れば、ほぼレイカ様のバッドエンドは確定する。なのでちゃんとルートが進んでいるかも確認しないといけない。悪役令嬢は本当に大変だ……


「いえ、流石にそれは私がお嬢様に確認を取りますので。ご安心してください」

「それはそうよね……ごめんなさい。あの子ならもしかしたらと思っただけよ」

「ははは、確かに。私もあの少女から声をかけられて話しましたが……あれは、相当な人たらしですな。お嬢様とは違いますが、あの子は人の心に入るのが上手い少女です。つい、気を許してしまう。私も思わず色々と喋ってしまいました」

「ルドガーがそこまで言うなんてね。ふふ、私も気をつけないと駄目ね」

「あまり入れ込まぬように気をつけるべきかと」


 笑顔でそう告げられる。

 ……優秀な執事のルドガーにそこまで言わせるなんて……ヒカリちゃん、恐ろしい子……! やっぱり乙女ゲーの主人公ってヤベーわ。

 まあ、それはともかく。


「それで、誰かしら?」

「はい。ロウガ・キシドーです。キシドー家のことについての話があると。詳しいことは直接話すとのことです」

「あら、そう。なら会う準備をしないとね」


 そういえばキシドー家だったな。ロウガくんの家。ストレート家名シリーズ多いんだよな……

 しかし、なんだろうか? レイカ様のことはあんまり好きじゃないと思うんだけど。ロウガくん。


(まあ、話をしてみればわかるか)



 そして、約束の時間通りにロウガくんが部屋へ通されてくる。

 わぁ。ロウガくん、しっかりと髪をセットして礼服で来ている。貴族同士の正式なパーティーレベルのガチガチの礼服だ。


「キシドー家の四男、ロウガ・キシドーです。アクレージョ家当主、レイカ・アクレージョ殿。お会い頂き光栄です」


 ガチガチの騎士としての挨拶だった。普段はヤンキーだけど、根がマジメなのでちゃんとした場所ではこういう騎士としての挨拶を出来るのだ。

 こういうギャップがいいんだと力説された思い出が蘇る。いや、それよりもだ。


「ようこそ、ロウガさん。堅苦しい挨拶はここまででいいわ。普段どおりで構わないわよ」

「そうか。ありがとうな」


 そう言って礼服を崩してドカンと座る。切り替え早いなー。

 まあ、俺もレイカ様らしく座って客間でロウガくんと向かい合う。後ろにはロウガくんの従者だ。確かレイジくんだったな。ロウ×レイかレイ×ロウかでよく論争されてたなぁ。


「それで、今日はどのようなご用事かしら? わざわざ、アクレージョ家に来るのなら真面目なお話なのでしょう?」

「アクレージョ、貴様! ロウガ様は栄あるキシドー家の嫡男! そのような無礼な態度を……」

「いい、構わねえよレイジ。こっちも堅苦しいのは面倒だ」


 手で制して笑顔を浮かべるロウガくんに、不服そうな顔でわかりましたと下がるレイジくん。

 粗暴に見えて冷静で礼儀もある主人に一見は物静かで冷静そうに見えながら主人思いで熱くなりやすい従者……確かにこれはキテるって言われるなぁ。キャラもそうだけどレイジくん、見た目からめっちゃ線の細い綺麗な男の子だからギャップがあるし。


「さて、前の話だが覚えてるだろうな?」

「……あら、もしかして?」


 意外そうな表情で俺が驚くと、ロウガくんはニヤリと笑う。


「ははっ、お前にそんな驚いた顔をさせられるなら面倒なことをしたかいがあったぜ」

「……お兄様とお話をしてもいいということ?」

「ああ。一つ上の兄貴だけどな。だが、次期当主は上の兄貴だ。一番上は、諸事情で家は継がねえ。次男は婿入りだからな。希望と違うかもしれねえが、次期当主なら不満はねえだろ」


 ……いや、レイカ様フィルターでちょっと驚いているくらいだが、今の俺は内心で死ぬほど動揺してる。

 えっ? 嘘でしょ? まずロウガくん、今相当に反抗期で家とは大喧嘩して、実質的に家族と一切話をしてないレベルでしょ?

 というか、レイカ様のことは嫌いだよねロウガくん? なんでそんな事をしてくれるの? 困るんだけど?


「だが、タダじゃねえ。条件がある」

「ええ。構わないわ。もしデートをしたいというなら、エスコートはお任せするわ」

「貴様!」

「レイジ」


 余裕のある笑みで混ぜっ返すレイカ様に、怒るレイジくん。こういうやり取り好きなんだけど、条件ってなんだろうか?

 まあ、大したことはないだろ。ロウガくんは根がマジメだし。


「俺もその話し合いに同席させろ」

「……その程度でいいの?」

「はっ、むしろこれ以上はねえだろ。お前みたいな面白いやつの話に同席出来るならな」


 そう言って凶悪そうに微笑むロウガくん。

 ……あれ? これなんかロウガくんルートで近い話を見た記憶が……

 いや、それよりもだ。


(……えっ、何を話すべきなの?)


 まず、俺はお兄さんに話す内容を考えてないことに気づいたのだった。

夜食を食べたいけど我慢できたので初投稿です

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