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学園と演説と

 ――さて、事件の後は酷く忙しかった。

 まずは先生たちがやってきて事情の説明。とりあえず内容の真偽は置いて、校舎にまで被害の及んでいるボロボロになった中庭の修繕をするために授業を切り上げて閉校。避難してもらった生徒には帰宅してもらい、事件に大きく関わった生徒達に対して、事情聴取のために聞き取りが行われた。

 特に俺、シルヴィアくん、ヒカリちゃんの3人はあの中庭の騒動に関わっていたのでかなり長い時間の聞き取り調査が行われた。学園で起きた前代未聞の事件であり、突如現れた魔人という存在が王宮としても話題の焦点になったらしい。カーマセ、ツルギくんも同じように聞き取り調査はされるのだが、後日ということになっている。というのも、二人とも大怪我で先に医務室へ送られたからだ。


(まあ、怪我とかはあったけども……被害は小さくてよかった)


 魔獣から逃げる時にコケて怪我をしたり、無理に挑もうとした結果うっかり魔法を失敗して自滅した生徒がいたくらいで魔獣による被害は殆どなかった。

 どうやら、俺たちに関わってないところで被害がなかったのはカイトくんとホークくんの奮闘によるものらしい。なんだかんだで見えていないところで役に立っていたようだ。とはいえ、カイトくんとホークくんは裏方作業がメインだったのですぐに開放されていた。残りたそうにしていたが、王宮の兵士から機密に関わるということで追い払われてた。


(しかし、テロかぁ……レイカ様がゲーム中で人知れず企みを潰してたらカッコよすぎて惚れ直してしまう……)


 そんな風に妄想をする。俺もレイカ様のお供としてこの世界で見ていたかった……とはいえ、俺がレイカ様になったので仕方ないだけどさ。

 さて、そんな妄想をしながら個人的な疑問についての報告を待っていた。今回の事件についてはテロ行為と発表されたのだが……と、そこで声をかけられる。


「お嬢様、只今戻りました」

「ルドガー、どうだったかしら?」

「はい。確認が取れました。お嬢様の予想通り、王宮に対して不審な集団が侵入したようです」

「そう」


 やはりか……裏付けのために調べていたルドガーから答えが帰ってきた。今回の森から溢れた魔獣については陽動だったらしい。

 俺がおかしいと思った理由は、魔獣が溢れかえり侵入者がいたわりに目的が見えないことだった。仕掛けを壊されることを嫌って始まった突発的な計画だったとしても、手駒を潜入させ魔獣を襲撃させる手際に比べて、学園で目的も見えない暴動だけは不自然だと思ったので帰ってからルドガーに調査を頼んでいた。


「それで、被害は?」

「数名が負傷。そして王宮の兵士二名が死亡したそうです。お嬢様の命名した魔人と言われる存在が紛れていたそうです。王宮騎士も苦戦したようですが、なんとか撃退を」

「あら、始祖魔法を使わずに倒せたの?」

「はい。人数の差を活かし魔法で消耗をさせて胴体から両断したようです。死亡した死体は魔獣と同じように死骸になったとのことでした。そして、その隙に宝物庫を破られ何かが奪われたと」

「何か?」

「はい。それ以上の情報は確認出来ませんでした。おそらく、王かそれに近い立場の人間しか情報が知らされていない魔道具かと……」


 ……うーん、きな臭い。というか、それが盗まれたということは価値を知っている人間というわけだ。機密を知っているような人間が関わっている?

 魔獣と同じような人間、魔人か……これは本当に原作でも影も形もなかった存在だ。闇魔法、魔人、宝物庫から奪われた魔道具……


「……ダメね。これだけの情報だと結論は出ないわ」

「私もそう思います。それと、グリンドル傭兵団についてですが……まだ調査は続行していて連絡が取れる状態にないということでした」

「あら、ちゃんと仕事をしているのね」

「彼らは私が想像していたよりも優秀に仕事をしておりました。雇用をしたお嬢様の慧眼でございます」


 そう言って頭を下げるルドガー。いや、それに関しては偶然なんだけどな……あんまり褒められても、いざという時に裏切りそうな傭兵を味方にしたいっていう理由のせいで座りが悪くなる。

 しかし、不在か……できるなら闇魔法について集めた情報とかを聞いて推察を固めておきたかったのだが。まあ、お預けということで諦めよう。


(……本来なら休みの間も選挙について色々と考えるべきなんだろうけどなぁ……)


 剣聖徒について集中すべきなんだろうが……しかし、それよりも知らないイベントが出現するとそっちに気を取られるのはプリブレファンとしての習性みたいなもんだ。

 だって、ゲームの時に飽きるくらいに剣聖徒は周回したのでどうしても未知のイベントの方に興味が……


(いや、ダメだダメだ! ここで万が一負けると追放される! それは本意じゃないからな! ちゃんと俺はデッドエンドに向けて頑張らないと!)


 そして、最後の選挙のためにスピーチの内容について考えることで意識を切り替えることにした。



『……さて、皆様! ついに剣聖徒の投票日となりました! 休み前に事件が起きましたが、それでも被害は少なく中庭が封鎖されただけの被害だったので無事に開催となります! 色々と不安だったのでしょうが、学園からも問題はないとの発表がありましたのでご安心ください!』


 さて、休みが明けて投票日がやってきた。

 本来なら延期なども考えられたのだが……これに関しては王宮に大きな被害が及んだことや、混乱したままで生徒を不安にさせることの方がデメリットが大きいという理由で開催することになった。

 ある意味では王宮で起きた事件で貴族たちに動揺を伝えず、学園の生徒達を安心させるためと言える。特に新聞もあるから下手に延期とかすると市井に不安が伝わるんだよな……


『さあ、最後の演説となります! 過去にも見事なスピーチで票をもぎ取り剣聖徒に選ばれた方がいるほどに重要な演説です! 今までの積み重ねだけが剣聖徒に必要なものではありません! そう、心を動かすような演説できるか否かです! 人を引きつける魅力、人に納得させる実力……ですが、上に立つ人間には他者の心を動かす言葉も重要なのです! さあ、それでは演説の順序ですが……』


 並んでいるカーマセ、シルヴィア、レイカ様の三人。

 カーマセを見ると元気そうだ。どうやら、この前の魔獣からの怪我は大丈夫だったらしい。


「なら、僕から行かせてもらおう……いや、僕を最初にしてくれないか?」


 と、カーマセが頼んでくる。

 ……まあ、別に最初を譲ること自体は構わない。


「構わないわ」

「うん、カーマセくんが最初でいいよ」

「ありがとう、アクレージョくん……シルヴィア」


 と、そこで疑問があったので聞いてみる。


「……カーマセ。貴方、シルヴィアを呼び捨てだけども知り合いなの?」

「おや、知らなかったのかい? 僕とシルヴィアは幼馴染だよ」


 えっ、そうなの!? ぽっと出のネタキャラだと思ってたのに……


「あはは、まあ学園でお互いに忙しいから中々交流はないんだけどね。案外知ってる人は少ないんじゃないかな?」

「はは、このカーマセ。シルヴィアとはこれでも友といえる程に仲良くさせてもらっているんだよ」

「そう……意外だったわね。疑問に答えてくれて感謝するわ」

「この程度ならいくらでも答えるさ。あの事件を乗り越えた仲なのだからね。それじゃあ僕は行かせてもらうよ……シルヴィア、実はね……君は僕の憧れでもあったんだ」


 そう最後にポツリと言うと壇上に上がっていく。

 ……突然のテンションの低い言葉に驚いていると、シルヴィアくんは誰に言うとでもなく呟く。


「……初めて言われたよ。カーマセくんに憧れてるなんて」

「そうなの?」

「うん。カーマセくんは僕にいつだって「このカーマセが勝つ」って言ってきたんだ。君に負けない。なぜなら、僕はカーマセ家の当主だからね……って。でも、今日は言ってくれなかった」


 少し寂しそうな表情をして呟くシルヴィアくん。

 ……色々と思うことはあるが、ゲームでも見せてほしかったなぁ。カーマセくんとシルヴィアくんの関係性なんて、二次創作でも見ないよ。良いものを見れたという気分と他の人にも知ってほしいというブレファン心理が……


『さて、最初の演説はカーマセ様のようです! 先日の事件の時も生徒を守ったという話を私も聞いております! カーマセ様を評価し、支持する声もとても増えております! さあ、彼の演説はどんな言葉を伝えてくれるのでしょうか! 楽しみです!』


 その言葉に、一歩踏み出すカーマセ。


「……ふぅ、はは、僕としたことが緊張してしまうね……でも、言うしかないんだろう」


 そんな、普段の自信過剰とも言えるような反応とは違うどこか弱気な演説の始まり。

 そして……


「――ここに宣言する! コザ・カーマセは……剣聖徒の選挙を辞退する!」


 とんでもない爆弾発言が飛び出すのだった。

今日は帰ってくるのに時間がかかって遅くなったので初投稿です

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! カーマセさん、マジでとても良い奴ですね! レイカさんは良い気遣いですけど、ヒカリさんが素直に避難したのは意外です。 魔人とは予想出来るですけど、敵の研究はか…
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