学園でクエストをする
さて、掲示板クエスト。これは一応原作にもあった要素である。
まあ、実質的に主人公が経験値を稼いだりアイテムを手に入れる手段だとかになってたけど。
「思っているよりも、依頼はあるようね」
「そうですね。学園という狭い世界で困った時に頼める相手が誰にでもいるというわけではないですからね。こうして、掲示板という形で学園を通し情報も秘密にするからこそ、頼む人は多いわけです」
「『魔道鉱石の入手』『森にある特殊な植物の採取』『小型魔獣の捕獲』……色々とあるのね」
立場や貸し借りが大きい意味を持つ貴族は、貴族同士で頼み事をすることは少ない。ちょっとした頼み事でも、下手に貸しになったりしたら貴族同士の交渉のネタに使われたりするからだ。ということで、自分の何でも頼めるようなツテを作ったり、自分の出来る範囲でやる事が基本となっている。
学園でもそれは同じだ。むしろ、外部を頼れず家同士の関係もある学園の中の方が大変だろう。なので、困ったことがあると自力で解決することになる。だが、こうして掲示板を通じて名前を明かさずに頼み事をすれば貸し借りを気にせずに誰かに自分の悩み事などを解決してもらえるわけだ。まあ、でも問題がある。
「頼む人間は多くても、この報酬で依頼を受けようなんて酔狂な生徒は居ないでしょう?」
「ええ、そうですね。原則は報酬として物品か金銭ですが……まあ、貴族がそういった物を目当てにして活動をしてくれる事はありませんね」
そりゃそうだろうな。何かしらに使い込んでしまったとか、余程貴重なものが報酬になっているでもない限りは依頼を受けないだろう。学生同士の報酬だし、なおさらだ。
「例え、私が依頼を解決したとしても依頼の受け手が増えるとは思えないわね」
「ええ、そこに関しては最初から期待していませんよ」
「期待をしていない?」
怪訝な表情を浮かべると、にこやかに答える。
「アクレージョさんに頼みたいのは、学園向けにアピールしたい依頼です。この掲示板が有用であるというアピールをしたいんですよ」
「――ああ、なるほど。報酬に関して学校から手を回させるということかしら?」
現段階はお金や物品が報酬で受ける生徒は居ないだろう……だが、これがもしも学園生活を快適にするような報酬であればどうだろうか?
「はい、お察しのとおりです。報酬として学園の生徒が欲しいものは……学業において役に立つもの、もしくは単位や学園における何かしらの要求でしょう。上手く学園に交渉して、その報酬を引き出すことが出来れば様々な生徒が利用することになるでしょう」
「そして、便利屋について知る人間が増えれば……実際に使って便利さに気づけば。貴族からも便利屋に頼む人間が増えると」
「はい。そのとおりです」
なるほどなぁ。まあ、いうなら現状ではセイドー家のお遊びでしかない。学園からも、今の所は商売の真似事という考えだろう。それをこの依頼で学園に役に立つというアピールをするわけか。
「学園側に役に立つというのは、どういった内容になるのかしら?」
「例えば、学園の運営に関連する些事……小さいものであれば修繕だったり学内の改善ですかね。大事であれば学園に出没する小型の魔獣の討伐やら違法な魔具の所有調査。場合によっては所有しているダンジョンに潜っての掃除などもありますかね」
あったなぁ。ダンジョン。一応、レベル上げをしたりゲームで必要なアイテム入手のための手段だったからなぁ。一緒に王子様とかを連れて行くと好感度が上がるので利用してレベル上げと調整をしたり……よく考えると色々なゲームとしての要素突っ込んでるな、このゲーム。
それで大人気なんだから本当に奇跡的なヒットだ。
「学園側でどうしても管理しきれない仕事は沢山あります。魔術関連であれば、生徒に任せたいような仕事も多いでしょう。それに、こういった報酬を担保に活動してもらえれば学園の生徒の能力向上にも繋がるでしょう」
「なるほど、理解したわ。だから私なのね?」
ここで失敗したり怪我をしたら生徒に任せるのもどうかなぁ……という話になってしまう。しかし、ここで成功すれば心象はいいだろう。
剣舞会に優勝したアクレージョがやっているというのも大きいアピールポイントになるだろう。ホークくん、ちゃんと考えてるなぁ。
「ええ。確実に仕事を遂行して学園の負担を減らせるアピールが出来る人がほしかったんです。ということで、依頼についてはこちらの用紙の中から自由にどうぞ」
「これでいいわ」
特に見ずに適当に一番取りやすい場所にある依頼書を取る。くぅー! こういうのやってみたかったんだよな! レイカ様でやるとかっこよさが10割増しだ!
それを見て驚いた表情を浮かべるホークくん。
「……いいんですか? ちゃんと内容を確認していないようですが」
「いいわ。どんな内容でも問題ないもの」
その言葉に、感心したような表情を見せる。
ふふふ、レイカ様らしいだろ! こういう自信! 掲示板依頼はヒカリちゃんくらいしかやってるシーンが原作ではなかった。なので、自分の思うレイカ様をどんどん盛り込めるってわけだ!
「なるほど。さすがアクレージョさんですね。それではお願いします」
「それで、どの程度で満足するのかしら?」
「アピールですので、内容にもよりますが……今受け取られた依頼のような内容であれば、三件もあれば十分でしょう」
「ええ、なら明日には終わらせるわ」
「……ええ、期待していますよ」
ホークくんは期待半分、不安半分の表情を浮かべてそう答える。心配を吹き飛ばすような笑みを帰り際に浮かべて、颯爽と去っていく。ふふ、明日に依頼は終わらせるぞ!
そしてカッコつけた代償として、帰宅するまで依頼内容を確認できず全くわからない状態のままで、かえって部屋で必死に内容を精査するのだった。
そして次の日。
学園にある、とある通路を通った先。そこに森と呼ばれている学園の私有地である森林がある。
そこの入り口で、準備のために剣を振って体の調子を確かめる。よし、問題なし。そして隣で一緒に準備しているヒカリちゃんを見る。
「何故、いるのかしら?」
「えっと、お手伝いを出来たらなと思いまして! これならお手伝いをしてもいいですよね?」
「……好きにしなさい」
むん! と気合を入れるポーズをするヒカリちゃん。
何故かレイカ様のクエストについてきた。いや、原作として考えるならヒカリちゃんの独占状態だったしいいのかな……? これに関しては判断に困るのでなんとも言えない。
念のために質問をしてみる。
「セイドー家の彼からは問題ないと言われているの?」
「はい! ちゃんと確認しました! ちゃんと良いですよって言ってもらってます!」
「そう」
……その光景が見える。多分ホークくん、ヒカリちゃんのお願い攻撃を食らって素の状態で返事に困って押された挙げ句に仕方なくいいよって答えたんだろうなぁ
原作でも、こういう真っ直ぐで明るい善良な子が苦手だったもんなぁ。ホークくん。
「それで、レイカさん! 何をするんですか!?」
「これよ」
そう言って渡した依頼書を見て、驚いた表情をする。
「……魔獣、ですか?」
「見たことはあるかしら?」
「いえ、街では見たことはないですけども……この入り口の近くにいるんですか?」
「そうね。小型の魔獣はたまに迷い込んでくるわ」
プリンセス・ブレイドの世界には魔獣がいる。どういう生き物かと言えば、普通の生物と違って魔力で出来ている謎の存在だ。倒すためには魔力を使わないと倒せない。
見た目は基本的に真っ黒なヘドロみたいな見た目をしている。姿は色々とあるが、グラフィックは基本的に獣っぽい感じだった。この世界における敵であるらしい。魔獣の存在が、魔法を使った戦闘技術を鍛えることに繋がっているのだ。
「街にいる人間だと、魔力による戦闘が出来る人間は限られているわ。だからこそ、すべての生徒が魔力を使って戦える学園は街に流れ込まないように一種の防波堤の役目にもなっているの。普段は管理して封じ込めているけども、その封じ込めだって完璧じゃない。だから小型の魔獣がすり抜けて入り口近くまで来るのよ」
小型なので、食事量も少なく捕食サイズも小さいので被害はそこまでではないのだが、成長して大きくなると人間を襲って捕食するかもしれない危険はある。
だからこうして定期的に侵入してきた魔獣を居ないか確認して退治する必要があるのだ。
「そうなんですね……魔獣はしっかりと封じて入ってこないとばかり……」
「絶対なんてあるわけがないでしょう。魔獣と戦う機会は何度もあるわ。魔法でしか倒せない魔獣との戦闘には慣れておきなさい。経験がないのなら、いざという時に致命的になるわ。もし付いてくるのなら、ここで魔獣との戦いを覚えなさい」
ヒカリちゃんに注意喚起。これ本当に悪役令嬢かな……? と悩むが、わざわざ有能なヒカリちゃんを見殺しにするのは違うからいいかと切り替える。
それに、今の発言はレイカ様っぽかった……と、自分の発言に満足しながら歩みを進める。それに慌てて付いてくるヒカリちゃん。
さあ、魔獣退治だ!
森の手前で現れたのはウサギを真っ黒にヘドロで塗りつぶしたような見た目の魔獣。
小さいが、見た目で侮ってはいけない。体の全てが高濃度の魔力で出来ている魔獣に触れれば病気のような症状が起きる。また、捕食の意思があれば噛み千切られるので危険な生物なのだ。
ヒカリちゃんの存在を認識したのか、魔獣は跳躍してくる。体の見た目こそ生物を真似しているけども構造は全く違うらしく、ノーモーションで弾丸のような飛翔だ。
「……はぁっ!」
それが飛びかかってくるのを、ヒカリちゃんは持っている剣に魔力を纏わせて一刀両断する。
そして、魔獣は真っ二つになりその場でドロリと溶ける。終わったヒカリちゃんに蝋燭を投げる。慌てて受け取るヒカリちゃん。
「ヒカリ」
「――は、はい!」
その言葉で、受け取った小さい蝋燭のようなものに魔力を通す。
すると魔力で出来た炎が燃え上がる。その炎を魔獣の死んだ後にかざすと、ヘドロのようなドロドロとした魔獣の死骸が溶かされて消えていく。
「……よし。レイカさん、これで大丈夫ですかね……?」
「大地が黒く汚染されていなければ問題ないわ」
ヒカリちゃんの初魔獣討伐は無事終わったようだ。
これはゲームでは表現されてなかった要素だが、魔獣を倒すと死骸という名のヘドロのような魔力の塊が残るのだ。これを放置するとそこは黒く汚染されて、そこから魔獣が生まれてくる。
本当に厄介な存在だよな魔獣……基本的に魔力を持つ生物を襲って、死ぬと死骸で大地を汚染する。そして、そこから更に魔獣が増える。何かしらプラスに利用出来ないかと色々と研究されたらしいが一切無理だったらしい。この世界に対する大敵だと呼ばれているだけはある。
「よかったぁ……ちゃんと出来ました……」
「小型なら倒せて当たり前よ。もっと上を目指しなさい」
「は、はい! がんばります!」
「とはいえ……潜り込んだのはこの程度かしら?」
魔獣のいる森から侵入してきた魔獣が5匹。ちなみに近くにダンジョンもあるのだが、そっちからは特に影響はなさそうだ。
ヒカリちゃんが倒した1匹以外の4匹はレイカ様がさっくりと倒した。まあ、本当に確認して魔獣が動く前に全員ぶった切ったから描写することもなかった。まあ、慣れてるしヒカリちゃんよりも年長者だから当然ではある。
「でも、レイカさんは凄いです! あの魔獣を、一瞬で四匹も倒しちゃうなんて……」
「小型は体が脆いわ。的が小さいのだから、動く前に叩き潰しなさい」
まあ、ゲームでもよくあるやつだ。数の多いザコは、先に潰しておけ。無駄に時間をかけるとダメージを食らう分、苦戦しちゃうからな。
小型は脆くて魔法を使えるなら街に住んでる人間でも倒せる場合はある。しかし、的が小さく動きが早いので相手が動き始めると手間取る事が多い。何事も速攻が大切なのだ。
「でも……魔獣はどうやって侵入してくるんでしょう?」
「そうね。森に押し込んでいる魔力の網が弱まっている瞬間を狙ったか、もしくは……っ!」
「えっ? きゃっ!」
とっさに嫌な予感がして、ヒカリちゃんの手を引いて投げ飛ばす。
驚きながら転がっていくヒカリちゃん。そして、先程まで立っていた場所に黒い塊が突撃した。
「れ、レイカさん何を……! って、ええっ? アレは……」
「流石に簡単な仕事とは行かないみたいね」
そこには、ウサギよりも数十倍も大きい中型の魔獣がこちらに敵意を向けて臨戦態勢で構えていた。
……レイカ様のクエストは、簡単なお使いじゃ終わらないようだ。
週間ランキングで存在を確認したので初投稿です
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