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「ふっ……ははは! まさか、この僕が負けるとはね! ……ノセージョくん! 君は誇るべきだ! この僕を打ち負かしたことにね!」
「あ、ありがとうございます」
「ふふ、胸を張り給え! きっと君は勝ち進めるだろう。この僕が保証しようじゃないか! だが、このカーマセ……ここで終わらないよ! いずれ、君やアクレージョ……いや、次代の王候補や貴族を打倒してこの名を国中に響き渡せることになるからね!」
「あの、私はそこまでの……」
「では、さらばだノセージョくん! 君の優勝を期待しているよ! ハッハッハッハ!」
笑いながら去っていくカーマセ。隠れてみていたけど、インパクトが強すぎる。良いやつではあるけど……癖が強いんだよな。あのヒカリちゃんですらちょっと引き気味だもん。
試合でヒカリちゃんと勝負して、見事にボロ負けして、あんだけ余裕と度量を持って恨み言も言わず称賛をして送り出せる人格者ではある。ヒカリちゃんも引くレベルの変な奴であることと、剣舞会に参加できるラインじゃないだろっていうくらい能力値が低いのが欠点なだけで。致命的じゃねえかな。
とはいえ、妙に変な人気があるのも納得するんだよなカーマセ……と、周囲に人の気配がなくなったのを確認して控室に入る。
「初戦は勝ち抜けたようね」
「あ、レイカさん!」
入ってきたレイカ様に気づいて、嬉しそうな表情のヒカリちゃん。思わず、褒めそうになったがここは我慢だ。
「上位4人に入らなければ、この学園に貴方の席はないわ。忘れていないかしら?」
「はい、覚えています」
「それならいいわ。せいぜい頑張ることね」
「はい! きっと決勝まで勝ち上がってみせます!」
「ふっ、結果で見せることね」
そう言って控室から去っていく……よし! 悪役令嬢出来た! これはもう悪役令嬢検定があれば一級を貰えるレベルで悪役令嬢だった! ゲームでも何故かお知らせしてくれる悪役だったぜ!
そのまま控室をでてから、気になって今している試合を見ると……あ、カイトくんの試合だ。相手は2年生だが、果敢に攻めるスタイルで圧倒している。
RPGながらキャラごとにちゃんと個性が反映されているこのゲーム、現実でもちゃんと戦闘スタイルが反映されていて感動してしまう。ちなみに王子様候補で言うとロウガくんは一撃スタイル。シルヴィアくんは魔法タイプと戦い方がある。
そして、今戦っているカイトくんは魔法を剣に纏わせながら、圧倒的な手数で攻め立てるスタイルだ。ゲームと同じで思わず笑みだって浮かんでしまう。戦闘シーンのムービーとか無いからね! 当然だよな!
「ふふっ」
(見て、アクレージョ様が笑ってる……)
(これは、オウドー様に対する余裕よね……)
(さすがアクレージョ様……)
おっと、周囲から話し声が聞こえてくる。ふふふ、いいぞ! もっと悪役令嬢として褒め称えろ!
(しかし、ツルギくんが何かの間違いで山から降りてこなくてよかったなぁ……)
降りてきたら色々崩壊するからな……ちなみにツルギくんはバグキャラと言われてる。魔法を一切使わないのに、剣技のみで全てのキャラを圧倒する最強キャラであり、ラスボス状態のレイカ様ですらツルギくんとヒカリちゃんで完封できるレベルで強い。あれどうなってるんだよマジで。王子様候補の自覚を持て。まあ個別に入らないとほぼ敵状態なんだけど。あらためて考えると何だコイツ。
『おおっとぉ! ここで相手が降参して勝負が決まったぁ! 勝者はオウドー様!』
(おっ、勝った。相手はギブアップかぁ)
詰め手が見つからず、相手は結局押し切られてギブアップしたようだ。なんというかスポーツマンシップに則った戦いって感じだ。
と、勝利をしたカイトくんはレイカ様の方を見る。睨みつけられたので、優雅に微笑み返しておく。ラスボス感マシマシの演出に大満足だ。さて次の試合は……と確認しようと思うと声をかけられた。
「アクレージョ」
「あら? 誰かと思ったらキシドー家の飼い犬ね」
振り向くと、そこにはレイジくん。普段どおりの執事服に見えるが、よくみれば動きやすい素材に変わっていたり、普段と違って戦うのに向いてそうに改造されている。
なるほど……戦闘執事服かぁ。浪漫だな!
「それが戦う時の正装かしら?」
「めざといな、その通りだ。次の対戦相手が私だ。試合の時に止めるロウガ様は居ない。キシドー家に無礼を働く貴様を地に這わせよう。覚悟をすることだな」
「あら、勇ましいこと。イジメすぎたら後でキシドー家に文句を言われそうだわ」
「好きに言っていろ」
そう言い残して、すっと去っていくレイジくん。……くぅ~! 悪役令嬢っぽくなってきた! こういうのだよこういうの!
なんかもっと王子様候補とヒカリちゃんに「あ、アクレージョ!?」みたいな感じの扱いをしてほしいけどなぁ。しかし妥協するしかないから仕方ないだろう。さて、試合は……
『おおー! キシドー様の痛烈な一撃で吹き飛ばされ場外だぁ! 勝者、キシドー様!』
……ロウガくんの戦闘が見れなかった。
『さて、剣舞会も一巡して二日目に残る勇士を決定する瞬間です! そして期待のブロックですが……そう、この学園の女帝と言われる実力者! 圧倒的なカリスマにひれ伏すといい! アクレージョ様のご登場だぁ! そして相手はなんと、キシドー家の従者との対決というカード! キシドー家の従者といえば実力派で有名! 剣舞会でしか見ることの出来ない対決に、これは目が離せないぞぉーーー!』
さて、呼ばれて試合会場に立つと周囲には恐ろしい程の人だかり。1試合目に比べて倍くらいになってる。
……そんなに期待されてるのか。まあ、悪役令嬢が倒されるかもしれないシーンは見たいよね! あと顔がいいし! 顔面偏差値がここだけで東大を超えているくらいにレベルが高いもんね! そして向かい合うレイジくんは真剣な表情で構えている。
「さて、キシドー家の飼い犬はどの程度の物かしらね」
「……」
「あら、緊張しているのかしら? 臆病な犬は何も出来ないわよ?」
悪役令嬢煽りをするが、返事をせずにじっとこちらを見ている。すでに戦闘モードなのか、レイジくんは無言だ。こういうシーンもCGで回収したいなぁ。
レイジくんが手に持っているのは短刀。短刀キャラってあんまり見たことないので新鮮だ。ゲームだとあんまり強くないし……
『それでは! 試合開始ぃ!』
「シッ!」
と、開始の合図と共にまるで目の前にワープしてきたように一瞬で移動してきた。
「ふっ!」
「……っ!? くっ……!」
一撃を叩き込もうとしてくるレイジくんに合わせて、剣を進行ルートに合わせて当てようとするが、一瞬で回避される。あー、びっくりしたぁ。レイカ様じゃなかったら食らってたな。
『おおっとぉ!? まるで一瞬で転移したような動きだぁ! 風魔法による移動かぁ!? しかし、それに対応したアクレージョ様も恐ろしい! これはレベルの高い勝負だぁ!』
そして、レイジくんは構え直してトンという足音と共にまた消える。
(魔法を使ってるのは分かるけど、消えてるのはどうやってるんだろう?)
そして、今度は背後からいきなり現れる。
空気のゆらぎを感じて回避するレイカ様。そんな事出来るの!? と言われるかもしれないが出来てるんだから仕方ない。
「ちっ、避けるか」
「面白い手品ね。他にはないのかしら?」
「お前にはこれで十分だ」
そういいながら、また姿が消える。
『消えたぁ! 一体どういう方法なのか!? 我々にも見えない不可視の魔法! これはかのアクレージョ様でも苦戦しているようだぁ!』
(風魔法なのかな? ……うーん、違うなぁ。なんだろう? 原作と違うオリジナル魔法あるからなぁ……ただ、見えなくなっているだけっぽいけど)
実はプリブレに変な魔法は少ない。基本的に火水風土に特例として闇と光があるゲームでよく見るオーソドックスな魔法形態なのだ。だって本筋そこじゃないからね。このゲーム。
で、風魔法は遠距離攻撃で土は強化。火はシンプルな火力で水は回復とかそういう感じが基本だ。ただ現実になると意外な使い方とか、創意工夫が出来るので魔法の奥深さが分かる。まあ、ゲームでオリジナル魔法とか実現したら別ゲーになるしな!
(この世界で学んだ魔法の技術でも、姿を消す魔法とかないからなぁ。どうやってるんだろう? んー、魔法を組み合わせて……)
……あ、複合で言うならアレか? 執事だけど、アサシンっぽい動きしてるし。レイジくん。
「水と火かしら?」
そういって、次の一撃を受け止める。
現れたレイジくんは表情が驚きで染まっている。多分当たったみたいだな。火魔法と水魔法を細かく調整して光学迷彩みたいにしてるわけだ。
「……だからなんだというんだ。見えなければ負けることはない」
「ええ。そうね。でも、タネが割れればこうすればいいでしょう?」
そう言ってレイカ様の魔法を発動。持っている剣から、燃え盛る炎が発せられる。ふふふ、レイカ様は火と風を使えるのだ! 闇の適正も高いが、光魔法と闇魔法はストーリーの根幹に関わる重要なファクターではあるがここではあんまり気にしなくていい。
シンプルな火力を高レベルで使えば強いを実現した超脳筋スタイル! 水と土も使えるが、あんまり上手ではないのは秘密だ! 推しの体で戦えるとなるとテンションがクソ上がるなぁ!
『おおっとぉ!? アクレージョ様の剣からとんでもない炎が上がっているぞぉー! 炎はどんどんと大きくなっていくぅ! しかし、見えない相手に対して……いや、見えている!? 見えているぞぉ!?』
「なっ……!」
「あまりお行儀は良くないけども、こうして炙り出してあげればいいでしょう?」
優雅な微笑み。レイカ様のバカみたいに高い魔力をフル投入して、大炎上させているのだ。熱気で風景が歪む。レイジくんも俺も魔力で保護されているので影響は薄いが、ステージや魔法はそういかない。
「バカなっ! そんな魔力量が続くわけ……!」
「あら? まだまだ余裕はあるわよ? もっと温度が高いほうがお好みかしら」
そう言って笑みを浮かべて炎の剣が倍ほどの大きさになる。手元がキャンプファイヤーみたいなことになっててちょっと怖いぞ。
魔法を使うのって繊細な技術だから、こうやってバカみたいな火力でブンブンしてるだけでレイジくんは調整出来ずに光学迷彩が使えなくなるわけだ。これもレイカ様の魔法の能力と才能があればだな!
(まあ、実際は余裕はそこまで無いんだけどね……)
強がったけど、後1分くらいしたら魔力切れちゃう。
「……くぅ! ならば……!」
そう言って突撃しながら、光学迷彩を解除して突進してくる。
なるほど、これ以上は無理だと悟っての突撃か。炎の剣をまっすぐに振るう。直撃するが……しかし、蒸発するような音と共に無傷のレイジくんが現れる。
『なんとぉ!? 無傷で突破したぁ!? あの巨大な炎の剣をどうやったのだぁ!?』
見てみると、頭上に薄い水の膜が張ってある。なるほど、それでガードしたわけだ。繊細に水魔法を使えるからこそ、ピンポイントで防御を固めたのだろう。
勝利を確信した表情を浮かべるレイジくん。
「これでっ……!」
「――あら、お生憎様」
「がっ!?」
だが、実は炎の剣はブラフなのだ。
何をしたのか。炎の剣を振るってトドメを刺そうとしたように見せたが、実は牽制で軽く振っただけだ。
本命は突撃してきたレイジくんにカウンターで当てる二撃目の剣本体! ここまで魔力量を込めた全力の攻撃を牽制にするとは予想外だったろう。魔力に自信がある奴程、防げるわけがないってプライドが邪魔をするからね。この意表をついた攻撃で、レイジくんの胴体に模造刀の一撃がクリティカルヒットして崩れ落ちる。
「がっ、ああ……ロウガ……様……」
「なかなか芸のある飼い犬だったわ。もしも首になっても、サーカス団で仕事がありそうね」
気絶するレイジくんに悪役令嬢煽り! ふふ、完璧だ。
『なんということだ! 圧倒的! 圧倒的すぎるぞアクレージョ様! 戦いでの知識! 圧倒的な魔力! それだけではない確かな実力! 格を見せつけての大勝利だぁあああああ!』
「アクレージョ様ぁ!」
「素敵ー!」
「私も切ってー!」
……なんかヤバい歓声なかった? ちょっと怖いんだけど、この学校大丈夫?
そして、颯爽と控室に。レイジくんはちゃんと学園の医者が回収していった。アフターケアもしっかりしているのだ。まあ、学園生活中で人死にが出る乙女ゲーってなんだよって話だからね。
「ふぅ……」
「よう」
「――あら、どうしたのかしら? ノックもなく失礼じゃない?」
「先にここに居たのは俺だからな。なあに、労いだよ」
控室に入ると、ロウガくんが出待ちしていた。いつから待ってたんだろう……まあ、従者が戦った後だし当然といえば当然か。
しかし、レイジくんが倒された割には余裕というか、あんまり怒ってなさそうだなぁ……なんで好感度高いんだろ……調整失敗したのかな……
「自分の飼い犬がイジメられて楽しそうね?」
「なに、正式な場で正面切って戦った結果だ。レイジも納得の上だろう。それだけアクレージョ。お前の実力が高かった。それだけさ」
軍人の家系らしいドライっぷりだなぁ。ロウガくんは楽しそうにしている。
「だが、レイジは俺とずっと一緒に学び合い競い合ってきた大切な相棒だ。敵討ちとは言わねえが……まあ、アクレージョ、お前のことは対等以上の敵として相手してやる」
「そう。舐めてくれたほうが貴方を這いつくばらせるのが楽だったのだけれども」
「言ってろ。だから、負けんじゃねえぞ」
「あら、応援かしら?」
そう言って微笑むレイカ様に、さてなと呟いて去っていくロウガくん。
……カッコいいやり取りだなぁ! でもなんか悪役令嬢と違うような気がする! 原作の裏でこんな展開が実はあったとかないよね!? ないな! それなら俺はもう調べて知ってるよ!
しかし、レイジくんもなんだかんだ強かったなぁ……ロウガくんに負けるのも納得というか。
(まあ、これで8位決定戦でロウガくんに負けてレイカ様が実力不足を感じる原作再現は問題なさそうだ……)
と、控室を出てトーナメント表を見に行く。
初日は対戦相手はランダムで決めていて、今日勝ち抜いた人間で改めてトーナメント表が作成される。まあ64人のトーナメント表、管理が面倒くさいしね。
そして、対戦相手を見て、そして自分の戦うブロックを見る。
(……あれ? ロウガくんと当たるの、準決勝? というか、明日の初戦の相手がカイトくんじゃね?)
もうすでにトーナメント表で原作崩壊しているのに気づいたのだった
チェックをしていたら全面リテイクをしたので初投稿です




