闇の魔法とそれぞれの結末と 前編
その魔法陣が浮かび上がった瞬間、様々な戦況が変化していた。
魔女からの魔力が途絶える。それは魔法陣の準備のためであり、無尽蔵に思えた魔力が消えた。
そして、逆に始祖魔法を持つ者には誰かが付いてくれているような……そのような感覚と共に力が増していた。
「ロウガ……グッ……!?」
「なんだか知らねえが、調子が落ちてきてるじゃねえか!? ロウコウ!」
耐え続けていたロウガはボロボロであり、脇腹もえぐられ出血している。だが、ロウコウの攻撃に必死に堪えてきていた。それこそ、最初こそは圧倒的な攻撃に危うく死すら覚悟するような瞬間もあったが、それを乗り越えていたのだ。
乗り越えたからこそ、ロウガに反撃の機会が巡ってきた。
「ロウガ……キサマァ……!」
「どうしたどうした! ようやく正気が戻ってきたか!」
「マダダ! マダ、マケヌ!」
そう叫びながら、もう一度力で押し切ろうとするロウコウ。
魔力が消え、徐々に力が落ちていくロウコウ……とはいえ、耐え続けて弱っていたロウガはそのやけっぱちとも言える反撃に傷が開く。
「ぐっ……ちっ、このタイミングで……!」
「ハハハ! シネ! シンデシマエ!」
そして、止めを刺そうと大きく振りかぶったロウコウに対してロウガは……
「……レイジ!」
ニヤリと笑って、その名前を叫んだ。
その言葉に、その影は飛び出して己の主人の名前を叫ぶ。
「ロウガ様!」
「ナニ!?」
突如としてロウコウの背後に現れたレイジは、完全に止めを刺そうと油断しきったロウコウに対してクナイを投げる。
その攻撃は、今まさにこのタイミングだからこそ意味を成した。
「グッ!? テモトガ……!」
ダメージはない。しかし、そこまでの戦いで全力を出し切り全く意識をしてない状態での一撃を食らったことで手元に狂いが生じて外すはずのない攻撃を外してしまう。
そして、その致命的な隙はロウガにとっては千載一遇の物だった。
「昔の俺なら、ここで一人で何でもしようと思ったろうな」
「ロウガ……! ロウガァアアアア!」
「俺も成長するんだよ。誰かに頼れるくらいにな……じゃあな、ロウコウ」
その一言と共に、ロウガはロウコウの首を跳ね飛ばした。
鎧が消えて、そのまま元の人間の姿に戻っていくロウコウ。最後に浮かべた表情は安堵のようで……そのまま、灰になって消えていく。
それを見て、終わったことを理解して倒れるロウガ。
「何満足してんだよ……クソが……」
「ロウガ様!」
「……ああ、わりいなレイジ……」
「本当ですよ! 何度ロウガ様を助けに割って入ろうかと思ったか……」
ロウガはこの戦いの前にレイジに頼み事をしていた。
それは、ロウコウと自分が戦う事を明言し、その時にたった一回だけの隙を作るために命令をするまで待てという命令だった。それこそ、命の危機があっても割って入るなと言う命令を。
その命令を守って、レイジは隠れながらずっと言いつけを守っていたのだった。
「最初から、俺一人で勝てるなんざ思ってなかったからな……本当に助かったぜ……」
「まだ助かってません! 傷が深いのですから、すぐに医者を呼んできます!」
「おう……頼んだ……」
そして、ロウガは空を見る。浮かび上がる魔法陣は不吉な予兆を感じさせる。
しかし、それを見ても不安はなかった。
「……アイツらなら大丈夫だろ……ああ、俺も、丸くなったもんだ……」
そう呟くロウガ。
ここにキシドー家の因縁は決着した。
そして、ホークとジャードの因縁も決着が着こうとしていた。
『地裂の閃光』
「くっ……!」
全く底の見えない程の呪文の連発。ジャードの魔法に対してホークは回避という手段しか取れなかった。
「……はぁ、本当に癪ですね……まさか、アクレージョさんに連れて行かれたダンジョンの経験が生きるなんて……」
「『炎獄の嵐』……クッ、ウ……」
「おっと……! 様子が変わりましたね」
今まで使っていた呪文と違う、ホークの逃げ道を防ぐような炎の竜巻に目の前を塞がれる。しかし、パターンの変化でジャードの異変を察したホーク。
魔力の供給が途切れたことで、頭を押さえるジャード。
「グウ……ホーク……! 『蛇竜の水撃』」
その呪文と共に、ジャードからまるで蛇のように水流がホークへと向かって襲いかかる。
その様子から、ホークは現状を導き出していく。
(……おそらく、魔力が途切れた……なら、上で何かあったのでしょうね……広範囲の魔法を使わなくなったのなら、これ以上の大魔法の連発は出来ない可能性が高い……)
そして、飛びかかってくる水流に対して剣を向ける。
「『大地の壁』」
その言葉とともに、地面からせり上がった大地が水流を防ぎ切る。
「……ああ、懐かしいですね。魔法で競い合った日々が」
「ホーク……ホーク……! 『火竜の、息吹』!」
ジャードからまるで竜がブレスを吐いたかのように炎が広がっていく。
「火には水を……『蛇竜の水撃』」
その言葉とともに、先程ジャードが使ったものと同じ魔法が炎を沈下する。
「火には水を。水には土を。土には風を。風には火を……懐かしいですね。魔法が得意なセイドー家では、こうして相性を考えて戦い合うことも多かったですよね」
「ホーク……! オマエダケ……サキニイクナ……! オレモ……! オレダッテ……!」
ホークの言葉に反応するように、そう叫ぶジャード。そして、魔力を込めていく。それは、先程と違う闇魔法の気配。
その言葉に、悲しそうな表情を浮かべて真っ直ぐに突っ込んでいく。
「ホークゥウウ! 『地階の暗黒』!」
「……『天上の閃光』!」
そして、二人は魔法を唱えて激突する。
闇魔法と光魔法が激突しそのまま競り合い……
「アアアアアアア!」
「オオオオオオオ!」
そして、その力は光が勝った。その閃光がジャードの胸を貫いた。
魔女からの供給が途絶えたこと。そして、ホークの魔力が上がったことで打ち破ったのだ。
「……ア、ああ……負けた……か……」
「ジャード……」
胸を貫かれ地面へと倒れたジャード。闇魔法のローブは消えて、そこには一人の死にかけた少年がいた。
「……ああ、勝ちたかった……オマエに……俺を置いて、一人だけ先に行くお前に追いつきたかった……」
「馬鹿ですね……置いていくつもりなんてなかったのに」
ジャードの身体は徐々に灰になって崩壊していく。
それを見て、ホークは隣に立つ。それは最後の言葉を聞いて会話をするために。
「悔しかったんだ……お前が……ライバルだったお前が……高みに行くことが……」
「それで、闇魔法に手を出したんですか……本当に、馬鹿だよ。君は」
「馬鹿だよな……正気も失って……目的も見誤って……ただ、俺はお前のライバルで……いたかっただけなのに……ああ、ごめんな……」
最後にそう言い残し、ジャードは灰となって消えた。
それを見て、少しだけ涙を流してから拭い、歩みを進める。
「……アクレージョさんとノセージョさんを助けないと」
そして、場内へとホークは踏み込んでいった。
ちょっと湿っぽい話なので初投稿です




