闇の魔法と一筋の光と
魔女との戦いの横で、もう一つの激闘は佳境に達していた。
魔女によって強くなったカリバに徐々に押されて怪我の増えていくシルヴィア。痛みに顔を歪めながら、カリバに問いかけるシルヴィア。
「カリバ! どうしてこんな事を……! 魔女の配下になるだなんて!」
「はっ、くだらない。当然だろう。この俺を認めぬこの国も。才能すら渡せず生んだ親も。そして、俺の後から全てを奪い去った貴様も全て滅ぼすためだ! 力こそ全てだろう! その力をくれる魔女がいるのだ! ならば、それに付く事が正しいに決まっている!」
カリバは問答をしながらも攻撃の手は緩めない。それは、痛ぶり苦痛に歪む顔を楽しんでいるようだ。
悲壮な顔で問いかけるシルヴィアに対して、狂気に染まった楽しそうな顔を浮かべるカリバ。
「だから力を求めた! 貴様らを見返す力を! そして、俺は手にした! 闇の魔導書という圧倒的な力を……そして、この国の真実を!」
「真実……?」
「かつてはこの国は魔女のものだった! だが、魔女の支配を良しとしない始祖と呼ばれている連中が奪い去ったのだ! そして、その血筋の人間が支配したのだ! 始祖の血はその奴隷の血であり……闇魔法の使える人間は支配者の従者としての血なのだよ!」
「そうだとしても、今の平和な世界から全ての人間が残虐な魔女に支配される世界は間違っているだろう!」
しかし、シルヴィアの言葉は聞き届けられない。
間違った復讐に目を誤らせ、そして誤った力で狂気に呑まれてしまった男に正論や正しさなど通じない。
「見ろ! 魔女の力を! 王など所詮はまがい物だ! 魔女という支配者と、闇魔法の才能を持つ従者! そして、それ以外の魔法の才すらない奴隷がいる! それこそが、この国の正しい姿なのだ!」
そんな言葉を高らかに宣言をするカリバに、首を振るシルヴィア。
「間違っている……間違っている! カリバ、君は……いや、お前は自分が持てなかった才能を妬んで、ただ歪んでしまっている!」
「だからどうした! 力こそ全てなのだよ!」
「だというのなら……君の間違いを、止めてみせる! それこそ、僕が君に出来る最後の家族としての事だ!」
その言葉には、先程までと違う思いが込められていた。悲しみの中に……覚悟と決意が込められていた。
「それに、彼女たちはまだ抵抗している! 君の言う本来の姿なんかに戻らない!」
「何?」
背後の光景を横目で見るカリバ。魔女の攻撃を回避しながら抵抗している二人を見つける。
それに対して苛立ち混じりの顔を浮かべて手をその二人へと向けた。
「無駄な抵抗を……魔女様に屈せば良いというのに……!」
「いいや、邪魔はさせないよ!」
妨害しようとするカリバに対して、魔法剣で攻撃をするシルヴィア。
うっとおしそうに魔法で振り払おうとして、その攻撃があっさりとシルヴィアに切り裂かれる。
その光景に動揺し、攻撃を身体に食らうカリバ。
「ぐあっ……!? なんだと……シルヴィア、貴様……!」
「今も、あの二人は抵抗している。ならば、僕に出来ることは命を賭して彼女たちを助けるだけだ」
その言葉とともに、魔力が強まっていく。
それは闇の魔力と正反対。光の力とも言える始祖魔法が強くなる気配だった。
「……なんだと? なぜ、魔力が……」
「さあ、僕だってわからない。でも、これが始祖魔法の力なのかもしれないね」
そんな風に言いながら、剣を打ち付ける。
その攻撃は、魔法によって今度は拮抗する。
「カリバ、邪魔はさせない! 彼女たちは、きっと勝つんだからね!」
「クソが! このゴミが! いつも、いつも俺の邪魔をしやがって!」
取り繕うことすら出来ず激昂するカリバに、笑みを浮かべる。それは二人の勝利を信じている表情だった。
……遠くで、シルヴィアくんの魔力が強くなっていくのを感じる。
何が起きたのかわからないが、それでもその事実は心強く感じる。
『全くもって不純物の多い身体だ』
そんな言葉を口にしながら、こちらに向けて手を振るって魔力で攻撃をしてくる。
しかし、その攻撃は先程までと違っていて精細を欠いている。それは、目に見えて身体の動きがぎこちなくなっているからだ。
ヒカリちゃんと俺は魔女の動きを見て攻撃を回避する。もはや回避できない攻撃ではない。
「……好機ね」
「ええ、これなら私にも躱せます!」
そう、メアリちゃんがきっと身体を取り戻そうと抵抗しているのだろう。
出会った時に言っていた、始祖魔法の才能がある事と魔法が使えないこと……おそらく、これが繋がっていた。
(おそらく、あの魔法を使えない体質は始祖魔法と闇魔法の才能が拮抗してたから魔法が使えなかったのか……多分、いずれその設定が何かしらに使われる予定だったんだろうな)
ちょっとしたメタ的な推理で考えながら、それでも魔女を倒す光明に繋がった事に感謝をする。
だからこそ、メアリちゃんを助け出す……その想いを胸に、魔女へと立ち向かう。
『一つ、二つ、三つ』
そう呟く魔女。何かと思うと……突如として、目の前に真っ黒な刃が浮かび上がる。
『この程度か。まあよい』
そういうと、俺とヒカリちゃんを指刺す。
『ゆけ、影の刃』
その言葉に三本の闇色の剣が真っ直ぐに飛来し、殺到してくる。
慌てて体を捻って回避……すると、突如として軌道を変えてこちらを切り刻もうと剣が振りかぶる。
「くっ……」
「レイカさん!」
ヒカリちゃんが始祖魔法を剣に向かって放つ。
その攻撃を食らって弾かれて……しかし、壊れることはなく今度はヒカリちゃんに向かって飛んでいく。
空中に浮かびながら攻撃をしてくる三本の剣……想像以上に厄介だ。特に、自由自在の軌道と壊れない剣。魔力が尽きるまで消えないのだろうが……まず、魔力が尽きるという概念がないと考えるべきだろう。
「でも、さっきと違った行動をしているなら前進しているということね」
「そうですね。メアリさんもきっと、抵抗しています……!」
魔女は確かに、身体を動かそうとしてうまく動かせていない様子が見える。
それを見て、ぐっと剣を持つ手に力を込めるヒカリちゃん。
「メアリさんは好きじゃなかったです。何時も喧嘩をしてくるし、張り合ってきて……でも、一緒に頑張って戦った友達なんです!」
その言葉とともに、魔力の高まりを感じる。
「だから、私は絶対に負けません! きっと、取り返してみせます!」
そして自分の攻撃を剣に打ち付け……その攻撃は、黒剣を叩き折る。
『……相変わらず不快な力だ』
そういう魔女。黒剣こそすぐに復活したが、そのヒカリちゃんの力は間違いなく通用している。
……そういえば、始祖魔法は絆や想いの力で強くなるという話を聞いた覚えがある。それが今のこの光景なのだろうか。
「だから、メアリさんも負けないでください……!」
『……ちっ、無駄な抵抗を』
頭痛を感じているのか、頭を手で抑える魔女。
メアリちゃんの抵抗が強まっている事に、勝利の希望が見えている事を確信したのだった。
なんと記念するべき100話目なので初投稿です




