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(早く皆を助けなきゃ)


焦り始めた心を無理矢理落ち着ける。


黒いドラゴンにエルフの王が来るって言われたけど、後どのくらい時間があるのか分からない。もう一度、深呼吸して先ずは虹の妖精さんを助けることに集中する。


ガラスのような檻、これは先日アイテール様が見せてくれた結界と同じだと思う。


「妖精さん、大丈夫?」


結界の中で眠っていた妖精がフワリと目を覚ますとポロポロと涙を流し始めた。


「今、ここから出すからね」


そう声をかけると魔力を流して結界の形を確認していく。結界の網目が表れると編み終わりを探す。


(アイテール様が見せてくれた結界よりも簡単な網目で良かった。本当に覚えておいて良かった)


程無く編み終わりを見つけることが出来た。慎重に結界の網目をピーーーと解いていく。上部の結界が解けた所で天族のお兄さんが妖精さんを出してくれた。


『ありがとう、小さなお姫様。お願い、この世界樹の根を焼き払って!』


壁だと思っていた所を指差しながら妖精さんに言われて世界樹のお爺ちゃんに焼き払って欲しいと言われていたのを思い出した。


「え?世界樹の根ってことは【エルフの国の世界樹】の下に居るってこと?」


もう一度、辺りを見渡すがあまり情報はない。


「あぁ、ここはエルフ王国の世界樹の地下だ。エルフの王が私の翼や彼女の羽を何かの儀式の材料として集めているようだった」


天族のお兄さんの説明、聞かなきゃ良かった…。


(うぅ、怖いよぉ。それって私も何かの材料なの?)


鳥肌の立った腕を自分で抱き締める。


(助けは来ないけど、ウカ様が言った通り守れるハズ!私が頑張らないと)


涙が出そうになるのを我慢して世界樹の根を見上げる。


《狐火》


青白い焔がボボッと灯ると世界樹の根を焼き尽くしていく。ウカ様が言った通り高温の焔は、大きな世界樹の根を跡形もなく焼き尽くしてくれた。


『良かった。ありがとう』


妖精さんに言われてハッと我に帰る。


(人魚のお姉さんを助けなきゃ!)


人魚のお姉さんは尾びれの辺りに拘束具を付けられて浅い水槽の中に囚われていた。


天族のお兄さんと妖精さんを助ける様子を見ていたのか近くまで行くと水槽の上から顔を出していた。


「お姉さん、大丈夫ですか?」


良く見ると鱗が所々剥げて痛々しい。


「大丈夫よ。まだ、人魚の涙は取られていないわ」

「成る程、君は人魚の涙を狙われていたんだね」


天族のお兄さんが納得した顔をしているけど人魚の涙って何だろう?


「お姉さん、拘束具をこっちに出せる?」


天族のお兄さんに抱っこして貰って水槽の端で拘束具に刻まれた魔法陣を読み解く。


「お姉さん、人魚の涙って何?」


魔法陣を読み解きながら聞いてみる。


「人魚の涙は、人魚が一生に一度だけ作ることが出来る宝石のことよ。恋人のことを思って流す涙は、宝石になると言われているんだけど…私、恋人居ないのよねぇ」


思わず「え?」と顔をあげてしまった。


「だから、いくら脅されても人魚の涙は作れなかったのよ。ウフフ」


ガチャリと拘束具を外すことに成功した。


「ありがとう!ここを拘束されていると人化出来ないから困っていたの」


意外とダメージ少ない様子のお姉さんは、水槽から出るとすぐに人化した。


「あの結界は、私が解くわ。あなたは、ドラゴンを助けてあげて」

「お姉さん、結界解けるの?」


驚いてお姉さんに聞くと「魔法陣は無理だけど、結界は何とかなると思うから、任せて!」と言うことだったのでお願いすることにして黒いドラゴンの元へ走って戻った。


黒いドラゴンの元へ戻ると『よく頑張ったね』と誉められてもう一度顔に抱きついておいた。


『俺の番、名前を教えてくれるか?』


瑠璃色の瞳が私を見つめて聞いてきた。


「私は、レイラ。あなたの名前は?」

『俺の名前は、ジェラルド。一応…【獣王国】の第3王子なんだ』


なんと【獣王国】の行方不明の王子様だった。


「え?そうなの。今日は、世界樹の世代交代でアドルフ様とミレイユ様が【エルフの国】へ来てるよ」

『そうか、父上と母上には心配かけてしまって…謝らないとな…』


(絶対にアドルフ様とミレイユ様に会わせたい!早く魔法陣を壊さなきゃ)


気合いを入れ直すと《光よ》と唱えて辺りを明るく照した。


まずは、拘束具を外すことにする。首と手足の5ヶ所にある拘束具に刻まれた魔法陣をどんどん壊していく。拘束具の魔法陣は同じ物が使われているから簡単に壊せるようになった。


『あぁ、久しぶりに体を動かせる』


体を起こせるようになったジェラルドは、立ち上がって体を解している。踏まれないように少し移動してもらいながら魔法陣の解読をする。


「うん?そう言えば、ジェラルドはいつからここに捕まっていたの?」


ふと疑問に思って聞いてみると『300年位かな…』と遠い目をしていた。


『成人の儀を終えて番を探す旅に出たんけど…なかなか見つからなくてね。以前、お会いしたことのあったエルフの王が番を探す手助けが出来るかもしれないと此処に連れてこられて、この魔法陣の上に入った所を捕らえられてしまったんだ。本当に情けない…』


おおぅ、傷を抉ってしまった様子。


『少し前にレイラがこの世界に現れた事に気づいてね。凄く嬉しくてレイラに早く会いたいと思ったと同時に恐怖に駆られたよ……』



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