83 お勉強の日〔ヴァン〕
ヴァンを驚かせてから数日後。やっと、ディザから魔法陣の解除について合格を貰えた。
最近では謎解きのように面白くなってしまって、かなり難易度の高い魔法陣も時間をかけて解くことが出来るようになった。
魔法陣を書くのも上手くなって《恵みの雨》を自動的に降らせる事が出来るようになった。ちなみに、湿度を関知して降らせる機能を取り付けてあるから勝手に雨を降らせてくれる。
ディザとの魔法陣のお勉強は、今後も趣味として続けていく事にした。
「今日は、ヴァンと雷属性の魔法を試し撃ちするんでしょ?」
お昼ご飯にオープンサンドを食べていると、ディザが聞いてくる。
「うん。お昼過ぎにヴァンが帰って来る予定」
午後からヴァンに魔法を教わる予定だ。
「アイテール様が試し撃ちするなら、世界樹の南側でやって欲しいって」
「なんで?」
世界樹の南側って何かあったっけ?と首をかしげていると、ディザが笑いながら「深い意味は無いと思うよ」と言っていたけど。ちょっと気になる。
「今日は、僕も一緒に行くね。この間の魔法陣がどんな魔法なのか気になっちゃってね」
確かに、私も気になっていたんだよね。しかも最高位の魔法!ドキドキする。
帰ってきたヴァンと一緒に世界樹の南側へ向かうが、ここで1つ問題が発生。
「この森もだいぶ広がったから砂漠に出るのも一苦労だね」
そう、世界樹の回りの森がどんどん成長しているから結界の外までとても遠くなったんだよね。
と言うわけで、フェンリルになったヴァンに乗せて貰って移動中なのです!
「キャー」
ジェットコースター大好きだった私にはご褒美だったんだけど、後ろに居るディザは乗り物酔いみたいにグッタリしていました。
「ディザ大丈夫?」
「うぅ…。帰りは遠慮する」
結界の端まで来るとヴァンが元の姿に戻ってヘロヘロになったディザを見て苦笑いしていた。
「まずは、風属性の魔法から始めるぞ。風の魔法の基準は《ウィンド》これをどれだけ操るかに限る」
そう説明するとヴァンが風魔法を発動する。
《ウィンド》
掌の上で渦巻いていた小さな風は砂漠の砂の上に下りると段々と大きくなっていく。結界を越えると見上げるほどの大きさになっていく。
「コレに魔力をさらに追加すると…《サンドストーム》になる」
結界の外で砂嵐が発生して大変なことになっている。映画で見たことがあるヤバイやつだよ。ヴァンがキュッと掌を握ると跡形もなく砂嵐は消えた。
「レイラがサンドストームをそのまま唱えると大変なことになりそうだね、アハハ」
ディザが今日も私の魔力の制御をバカにする。ぷぅと頬っぺを膨らませて拗ねると「ごめん、ごめん。だってバカでかい魔法が毎回可愛いんだもん」と全然反省していない発言をしている。
まだ笑っているディザは放って置いて…真面目に魔力を調整して詠唱する。
《風よ》
左手の掌に小さな風が渦巻いている。
「いいぞ、自分の魔力の中心を意識しながら動かすんだ」
渦巻いている風の中心に自分の魔力を感じながら掌から砂の上に落として少しずつ遠くへ離していくと途中で消えてしまった。
「あっ…消えちゃった」
「術者から離れるとそれだけ操作は難しくなるし、時間と共に魔力は消費されるから少しずつ送ってやる必要がある」
成る程、消費される分の魔力については考えていなかった。もう一度、掌の上に魔力を調整する。
《風よ》
再度、掌に風の渦巻きを発現させると砂の上に落とす。今度は、少しずつ減っていく魔力を追加して保ちながら結界の外へと移動していく。
「少しずつ魔力の量を増やしてみよう」
ヴァンが私の両肩に手を置いて「落ち着いてやれば大丈夫だ」と声をかけてくれる。10メートルくらい先まで離れた風の渦が竜巻くらいに成長していく。更に遠くへ移動しながら魔力を追加していく。
「レイラ、凄いよ!サンドストーム出来てるよ」
ディザが隣でパチパチと手を叩きながら巨大化した砂嵐を見ている。
「いいぞ。そしたら、魔力の供給を止めろ」
左手をキュッと握って魔力を止めると砂嵐は崩れるように消えてなくなった。ヴァンにも筋が良いと誉められてご満悦だ。
「サンドストームを今、消したあの辺りに出すことは出来そうか?離れた場所に魔力を送り込むのは少し難しいが、距離感をイメージしてやってみてくれ」
おっと、ちょっと難しいお題が出ました。今度は、自分の中の魔力をさっき消した砂嵐の辺りへ塊にして送り込む。
《砂嵐》
ザァァ…凄い勢いで砂嵐が発生した。そのまま維持しながら更に遠くへと移動させて消滅させた。
「良くできたな。あのサイズになってから術者からの制御を外すと、後は自然消滅するまで暴れるから最後まで制御の集中は切らさないこと」
「はーい」
その後、《ウィンドカッター》を習って風魔法は一旦終了した。




