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78 お勉強の日〔ルミエール〕

「オディロン、入りますよ」


ジーノさんが声をかけて部屋に入るとオディロンさんがニカッと笑った。


「来たな。ちょっと待っててくれ、この決裁だけしてしまいたい」


サラサラッと何か書き込んで書類を転送箱に入れるとオディロンさんがこちらに来る。


「で?俺の腕を再生の練習台にしてくれるらしいな?」


ニヤニヤしながら私を見るオディロンさんの後頭部をジーノさんがスパーンと叩いた。


「ハァ。嬉しいのはわかりますが、レイラさんが怯えます」


ヴァンの膝の上で固まっていた私に「悪い悪い」と謝るとお爺ちゃん先生に目を向ける。


「それで、フリオ先生はどうなさったんですか?」

「ワシは、回復魔法の練習に付き合う代わりにこの場に立ち会わせてもらう約束をしてな」


それを聞くとオディロンさんが私とディザを見て「どうする?」と聞いてくる。


「そちらの先生も信頼できる方。と言うことですよね?」


ディザの質問にオディロンさんとジーノさん、ヴァンがしっかりと頷く。


それを確認するとディザは、私と自分のカフスを外して自己紹介をした。


「僕は【砂漠の世界樹】そして、こちらが世界樹の愛し子でアイテール様の娘です」


それを聞いたお爺ちゃん先生は、目をギョッと見開いたあと大笑いした。


「魔力の量がおかしいと思っとったが、愛し子様じゃったか。長生きするもんじゃのう」


ディザが「極秘事項でお願いします」とお願いしていた。


「あぁ、それから彼はルミエール。光の眷属でレイラと精霊契約している」

「ルミエールです。今日は、レイラの練習にお付き合い頂きましてありがとうございます」


ルミエールがあいさつするとジーノさんが驚いていた。


「ルミエールさんて【エルフの国】の魔導師様ですか?いつも特殊採取依頼を出してくださる」

「そうです。いつもお世話になっております」


ルミエールとジーノさんが特殊採取の話で意気投合したところで本題に入る。


「実は、レイラの魔法なんですが。通常の呪文では魔力が安定せずに上手く発動しないので再生の魔法については初めての挑戦になります」


なぜかちゃんと発動するヒールは別枠と言う説明もした。


「つまりは、詠唱がわからんと言うことか?」


お爺ちゃん先生に言われて小さな声で「はい」と答えると再生の魔法について追加の知識を教えてくれた。


「まず、光属性を持つ者が少ない。さらに再生魔法と言う高度な魔法を使える者は、一握りしかおらん。ワシも再生魔法は使えない」


お爺ちゃん先生は、私を呼び寄せると私の手をオディロンさんの右の腕に乗せる。


「先ずは、見てみなさい」


オディロンさんの腕を透視で見る。右の首近くから機械の配線と鉄の棒やボルト、バネが見える。そして、少しの痛みを伴っていることに気づいてオディロンさんの顔を見る。


「何が見えた?」


オディロンさんに聞かれて一瞬、躊躇ったが練習に付き合ってくれているオディロンさんにちゃんと伝える。


「この義手…痛いんでしょ?」


目を見開くオディロンさんにお爺ちゃん先生が顔をしかめる。


「痛いならちゃんと整備に行かんか!」


怒る先生にオディロンさんもタジタジだ。お爺ちゃん先生が私を見て「患者を叱るのも仕事じゃからな!」と言ってため息をついた。


「はぁ、すまんが。このポンコツを治してやってくれんか?」


うん、と頷く。オディロンさんの右腕を治したい。この痛みを無くしたいと思ったら出来そうな気がしてきた。ルミエールの側に行って聞いてみる。


「あのね…ルミエール。たぶん出来ると思うの」


そう言うとフワリと私を抱き締めてくれる。


「大丈夫ですよ。治したいと言う慈愛の心が再生魔法の発動条件でもありますからね」


そう言ってポンポンと背中を叩くと私をオディロンさんと向き合わせる。オディロンさんに上の服を脱いでもらうと、やはり首近くから先を機械に覆われた腕が現れた。


「オディロンさん、はじめます」

「あぁ、頼む」


うん、と力強く頷いてオディロンさんの前に立つ。


既に心の中に詠唱が浮かび上がっている。



《大地に眠りしマナよ…光の灯火となりて我が友を癒したまえ…生命の記憶に刻まれし形を今…灯火の前に示せ》


詠唱を始めると私とオディロンさんの周りに魔法陣が幾つか展開して光り始める。私の周りにも魔法陣が展開して体がフワリと浮かび上がった。


オディロンの右の肩辺りから光が溢れるとバラバラとネジやボルトが抜けて空中に浮かび上がると機械の腕が外れた。


銀色の光の粒が集まってきてオディロンさんの右腕を形造って行く。細部まで魔力が行き渡ったのを確認すると魔法陣が消えた。


ホゥ…。と息を吐くとオディロンさんの手に触ってみる。


「指先の感覚、ある?」


恐る恐るオディロンさんの顔を見ると目を見開いて頷く。


「あぁ、ある。レイラの温かい手の感触…ちゃんとする。ちゃんと……動いている…。ありがとう」


目から涙を流しながら私の手をソッと握って笑っていた。


良かった。と思ったらペタンと床の上に座り込んでしまった。


「「「レイラ!!」」」


ディザとルミエール、ヴァンが叫んで駆け寄って来る。


「どこか具合が悪いの?」


ディザに聞かれてヘラッと笑う。


「気が抜けたみたい」


そう言うと、ルミエールにギュッと抱き締められた。


「驚かさないでくださいよ!心臓が止まるかと思いました!」


こんなに怒っているルミエールは、初めてだ。でも、それだけ心配してくれたってことだよね。


「ごめんなさい。でも、ありがとう」


そう言ってルミエールに抱きつくと更にギュッと抱き締められてしまった。

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