75 お勉強の日〔ルミエール〕
家に帰ってきた次の日から早速、ウカ様の助言通り勉強を始めることにした。
ディザとルミエール、ヴァンの三人でスケジュールを組んでくれた。今日は、ルミエールに光の属性魔法を習うことになっている。世界樹から結界の端に向かって歩きながらルミエールの説明を聞く。
「まず、光の属性について説明しますね」
光の属性は、大きく分けて2つに別れる。
1つ目は、光、聖、浄化と言った聖なる光を使う神聖魔法。2つ目は、回復、再生、解毒と言った回復魔法。
「神聖魔法は、ライトって言う生活魔法から魔物によって汚染された大地の浄化なんて言う大魔法までピンキリです」
「うわぁ、覚えられるかな?」
先行き不安です。まずは、簡単なライトの魔法を習う。暗い場所でのランプ代わりに最適です。
《ライト》
あっ…眩しっ。目がチカチカするぅ…すぐに魔力を消す。
「今のは一体」
目をシバシバさせるルミエールに謝っておこう。
「あのね、レイラの魔力が多すぎてこの世界の呪文だと強く出力されちゃうの。先に言っておけば良かった、ごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ。少し驚いただけですから」
フワリと笑ってルミエールが頭を撫でてくれる。もしかして、とは思ったけど失敗して恥ずかしい。気を取り直して呪文を唱える。
《光よ》
手のひらの上にホンワカした光が現れた。
「うん、良いですね。呪文は、聞き取れませんでしたがレイラにはその方が良いのでしょう」
やっぱり、ルミエールにも日本語は聞き取れなかったみたい。
「では、次は光魔法の攻撃魔法に移りますね」
ちょうど森の端にたどり着いたところでルミエールは、腕輪から魔法の杖を取り出して見せてくれた。長さは、ルミエールの身長より少し短いくらい。白い杖は、途中から枝分かれして透明の球体になっている魔石を抱き込んでいる。所々に白い花が咲いていてとても綺麗だ。
「レイラには、アイテール様が杖を用意して下さる予定ですが。レイラの適正を見てからと言うことになっていますから、少し待っていてくださいね」
そう言うと、まずはルミエールが光の魔法攻撃を見せてくれることになった。
《アロー・オブ・ライト》
ルミエールが呪文を唱えて杖を前に傾けると杖の先からビュンと光の筋が飛び出し、結界を通り越して砂漠の砂の上に到達するとドォーンという大きな爆発を起こした。
「すごぉい!」
5歳児が喜んでピョンピョン跳ねながら手を叩いて大喜びです。
「今のが光の矢と言う攻撃魔法になります。魔力を増やして本数を増やすことも可能で、広域魔法としても使えます」
凄い!ディザと魔法の練習をしたときも思ったけど。私、魔法少女になれそう。
「試してみますか?」
ルミエールに言われてウンウンと大きく頷く。実は、すでに魔法のイメージが出来上がっていているんだよね。
「あのね、たぶん出来そう」
ルミエールが「無理をしないでくださいね」と言って少し離れて、すぐにフォロー出来るように何か魔法を展開している。
私は、弓矢を引くイメージでモーションを取りながら呪文を唱える。
《光の矢》
すると、金色の弓と光の矢が私の手の中に現れた。弓を引いた右手の指をスッと開くとヒュンと音がして勢い良く弓が飛んで行った。
結界を通り越した矢は砂に着弾すると、ドォーンと砂ぼこりを上げた。うん、ルミエールより大きい。
「これは、驚きましたね。光の弓を作り出すとは…」
まだ、私の左手に有る弓をルミエールが面白そうに見ている。
「やはりレイラは、杖をあまり必要としないかもしれませんね。大魔法の時には魔力を一点に纏める意味では必要となるかもしれませんが」
成る程と1人納得したルミエールが「アイテール様に杖の注文をしておきますね」と言って、杖が届いたら大魔法を練習することになった。
「では、次に回復魔法について説明しますね。回復魔法で必要な物、それは、この世界に溶け込んでいるマナです」
目には見えないマナを呼び集めて回復魔法は発動する。それゆえ、呼び集められるマナの量によっては回復魔法が発動しない。
「これは、生まれ持った資質によるもので練習すれば増えると言うものではありません。私の予想では、レイラにはその資質が十分あると思うのです」
回復魔法は、能力が無ければ発動しないのか。でも、今のところイメージは出来ていない。
「そうですね。怪我人が居れば実演が出来るのですが」
ルミエールが物騒な事を言っている。つい、眉間にシワを寄せてしまったらしい私を見てルミエールが慌てて抱き上げる。
「あぁ、レイラ。すみません、怪我人や病人が周りに居る生活が当たり前だったもので。不謹慎でしたね」
「あっ…。そっか、ルミエールはお医者さんみたいなお仕事をしてるんだもんね」
確かに怪我人や病人を毎日見ていたら、そんな発言もポロッと出てくるかもしれない。
「でも、私の職場に行ってレイラの力がバレたら面倒な事になりそうですよね」
確かにそれは困るかも。ルミエールもこんなにサクサクと攻撃魔法まで出来るとは思ってなかった為、そこまで考えてなかったらしい。取り合えずお昼の時間になるから家に戻ることにした。




