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世界樹のお爺ちゃんの側へ行くとヒョイっと片腕に抱っこしてくれた。両手を上にあげて世界樹の実に「こっちへおいで」と呟くと、世界樹の実がフワフワと私の方へ降りてくる。両手で受け止めると世界樹の中に入った。
【砂漠の世界樹】の中は、居住空間になっているけど【獣王国の世界樹】の中は、空洞で下には草が生えていた。
「お爺ちゃんは、世界樹の中には住んでいなかったの?」
「今日の日の為に片付けたんですよ。一旦、世界樹の実に全て取り込まれてしまいますからね」
へぇ、と辺りを見回していたら「始めましょうかね」と下に降ろされた。
ディザの時と同じように草の上に世界樹の実を置いて、その上に私の両手を置くとその上に世界樹のお爺ちゃんが手を置く。
世界樹のお爺ちゃんが手を置いた瞬間、世界樹のお爺ちゃんから金色の光の粒が溢れ出す。
「あなたがディザの元に来てくれて本当に良かった。又、後程お会いしましょう」
世界樹のお爺ちゃんがそう言い終わる頃には、目の前が光の洪水で目を開けていられなくなっていた。
それでも、まだ手の中には世界樹の実があるから頑張って手を離さないようにする。フッと世界樹の実の感覚が無くなってソッと目を開けると10メートルほど伸びた若木が目の前にあった。
見ている目の前でぐんぐんと成長する世界樹から数歩後ろに下がると、後ろから大歓声が聞こえた。
「レイラ、一人で良くできたね」
アイテール様に抱き締めて貰ってホッと息を吐く。どうやら、緊張していたみたい。地鳴りのように鳴り響く歓声と花火が上がり始めた。
「レイラ、これは王都の町の人たちの歓声だよ。これから、1週間くらいお祝いのお祭りをするんだよ」
「お祭り行きたい」と、ハイ!と手を挙げるとアイテール様が「世界樹が安定するまではお預けなんだけどね」とため息をつく。
世界樹様が安定するまで、王妃様主催のお茶会にどうぞと言うことで近くにある庭園のガゼボに案内された。王妃様主催のと銘打っていたけど、獣王国の王族の集まりだった。
さっき紹介してもらった、王様のアドルフ様、王妃様のミレイユ様。王太子のサンテュール様と番で王太子妃のロシエル様。第2王子のリュシアン様の番の第2王子妃のマリエンヌ様の6人だ。
こちらは、私とアイテール様、ディザが呼ばれている。ヴァンとルミエールは、今日は1日護衛として来ているんだって。こう言った席がめんどくさいと言うのが本音だと思う。
「こうしてアドルフ達とお茶をするのは何時振りだろうね」
「丁度、三男のジェラルドが産まれた時ですかね」
そう答えるミレイユ様は、少し悲しげだ。
「ジェラルドは、400年ほど前に成人をしまして。竜族の掟に従い、番探しの旅に出たのですが…300年ほど前から連絡が付かなくて、行方不明なのです」
アドルフ様がそう説明してくれた。300年も行方不明って…。
「このアシュタペウス大陸を出たと言う報告は来ていないのですが、【森の国】を出て古代エルフの里に立ち寄ったという情報で途切れているのです」
王太子のサンテュール様も捜索に一時出たそうだが見つけられなかったそうだ。
「それは、辛い思いをしていたんだね。私も心に留めておくよ」
アイテール様がそう言うと、皆、頭を下げて「ありがとうございます」と口々に言っていた。
「暗い話はこの位にして、アイテール様の娘様を是非ご紹介ください」
王妃様が乗り出してきた。
「可愛いだろ。レイラは、精霊族と古代エルフのハーフのなんだよ。とても、優しくて、頭が良くて、本当に、本当に可愛いんだよ。仲良くしてあげてね」
アイテール様のお膝に座って紅茶を飲んでいた私は、もう少しで吹き出しそうになった。そんな、紹介の仕方ある?親バカ爆発してるよ。
「本当に!今日のドレスも相まって妖精が舞い降りたのかと思いましたわ」
王妃様、親バカに乗っかりました。
「うちは、男ばかりだったからな。こんなに娘が可愛いならもう一人頑張れば良かったかな。ハハハ」
と笑う王様。うんうん、て王子様達同意しないで。
「まぁ、これからは息子達の子供に期待するとしましょう」
王妃様がそう言うと王子妃のお二人が少々、顔色を悪くする。
「竜族は、子供が出来にくい種族だからプレッシャーなんだよ」
ディザがコソッと教えてくれる。まずは、男の子をそして女の子もと言われたらプレッシャーかもね。
「あっ、このケーキ美味しい」
「そちらは、グリーンマスカットのスクエアケーキです。生クリームがたっぷりで私も好きなんですよ」
子供の特権。空気を読まない発言で話を逸らすことに成功しました。




