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60 【獣王国の世界樹】

[火の第3の月1日]


今日は、少し早起きをして朝食を食べたらディザとルミエールにドレスを着付けて貰った。


アイテール様が用意してくれたオーガンジーの様な生地のドレスは、前側は膝より短くて後ろは引きずるくらい長いピンクのドレスで、ホルターネックになっている。首から腰の辺りまで花の刺繍がしてあって所々にキラキラ光る石が縫い込んである。背中には大きなフワフワのリボンを縛って妖精の羽みたい。


髪の毛はハーフアップに結い上げて花の妖精たちが作ってくれた花冠を乗せる。レースの手袋をして手首にも妖精たちが花を飾ってくれた。


階段は危ないからとヴァンに抱っこされて1階に行くと正装をしたアイテール様が居た。金色の髪の毛は、サイドを軽く後ろに撫で付けている。服装は、紺色のベストに紺色の刺繍が襟元と袖口にされている白のフロックコートを着ている。美形男子が着たら王子様の出来上がりです。


「レイラ、本物の妖精みたいだよ。このドレスにして正解だったね」

「アイルパパ、素敵なドレスをありがとう」


デレッとした残念な美形男子が居ますよ。


「アイテール様、外ではピシッとしてくださいよ」


そう注意するディザもドレスシャツにベストとジャケットを羽織り、ハーフ丈のパンツにタイツを履いている。あれ、某執事の仕える少年伯爵では?と思ったことは胸に仕舞っておく。


「分かっているよ。こんなに可愛い娘がどこぞの輩に目をつけられないように守らなくちゃいけないからね。ヴァンとルミエールも護衛を頼むよ」


「はい!」


と答える二人も正装をしている。ヴァンは、黒い軍服。ルミエールは、魔導師のローブを着ている。


イケメン勢揃い眼福ですね。


「レイラ、辛かったらすぐ言うんだよ」

「うん、分かった」


アイテール様にちゃんと約束をして膝上までの白いブーツを履かせて貰って外へ出る。


「今日は、正式に行くから魔法陣を出さないといけないんだよね」


と、面倒くさそうにアイテール様が転移陣を展開すると「じゃあ、行くよ」と言って転移陣が光ったと思ったら別の場所に到着していた。


「アイテール様、砂漠の世界樹様、世界樹の愛し子様。ようこそいらっしゃいました。今日の記念すべき日を迎えられた事を大変嬉しく思います」


到着した途端にいい声のおじ様が出迎えてくれた。


「レイラ、彼が【獣王国】を治める竜族の王のアドルフだよ。隣にいるのが番のミレイユだ」

「はじめまして、世界樹の愛し子のレイラです。今日は、よろしくお願いします」


ペコリと挨拶すると回りに居た大人たちがニコニコと笑っている。ディザがアイテール様にシャキッとしてくださいって言っていた意味が分かった気がするよね。


「アイテール様。本日は、各国の王族が来ておりますのでご挨拶を頂けますか」


そう言ってニコニコしているアドルフ王の代わりに声を掛けてきたのは王太子のサンテュール様。こちらは、本物の王子様だ。


(みな)【獣王国の世界樹】の世代交代に良く集まってくれた。今日は、私の娘であるレイラのお披露目でもある。どうか、温かい眼で見守って欲しい」


アイテール様がそう言うと、拍手が沸き上がった。色々な国の王族が集まっているらしく、大変綺羅びやかな空間になっている。何だか緊張してディザの手をキュッと握ってしまった。


「レイラ、大丈夫だよ。あのおじさん達よりレイラの方が偉いから」


いや…そういう事じゃないんだよ。


「僕たちは先に【獣王国の世界樹】に会いに行こうか」


ディザは、アイテール様に許可を貰うと聳え立つ世界樹へと向かった。


「やあ、【獣王国の世界樹】久しぶりだね。元気にしていたかい」


ディザが世界樹の前にいたお爺ちゃんに声をかける。【人の国の世界樹】のお爺ちゃんと比べると一回り大きくて、体つきもしっかりしていて、少しゴツイ。


「久しぶりだな。今は【砂漠の世界樹】か、人の国ではエライ目にあったな」

「まあね。でも、おかげでレイラと一緒に楽しく過ごしているからね。それから、レイラに名前を貰ったからディザって呼んでくれる」


あっ…ディザが余計なこと言った。


「ほぉ、ディザか。良い名を貰ったな。レイラ様、世代交代が終わりましたら私奴(わたくしめ)にも名前を付けて下さいますか」


うん、言うと思ってたよ。


「うん…。考えておくね」


嬉しそうに笑う【獣王国の世界樹】のお爺ちゃんを見て、残りの10本の世界樹の名前も何となく考えておこうと決めた。だって、自分の名前はちゃんと呼んで欲しいと思うの。


「さて、そろそろ時間ですかな。ディザ、レイラ様。暫しの間、お別れですな」


そう言うと、獣王国の王様やお妃様、王族関係の人たちが来てお別れをしていた。


「レイラ、今回は一人だけど大丈夫?」


いつの間にか近くまで来たアイテール様に抱き上げられて聞かれる。


「あのね…とっても不安なの」


そう言って、アイテール様に抱きつく。


「すぐ側で見ているから大丈夫だよ。何かあったら途中で介入するから心配いらないよ」


そう言って背中をトントンしてくれる。


「さぁ、行っておいで」


アイテール様に背中をトンっと押された私は、世界樹のお爺ちゃんの側へ歩いていった。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

2話投稿の予定が3話になっていました。

【獣王国】の世代交代が始まります。楽しく読んで頂けたらと思います。

今後も宜しくお願いします。

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