59 -閑話-
いつもお読みいただきありがとうございます。
今日は、2話一緒に投稿しています。
ヴァン宛に【空の国】のギルドのジーノさんからお手紙が届いた。内容は、先日送った特殊採取依頼の薬草が通常よりも貴重種であったり妖精の採取であった為に高く買い取りたいと言うことが書かれていた。
「全部の買い取り額が、320万ギルでいいかだって」
目を丸くしている私の隣でディザがニコニコしながら「まぁ、妥当かな」と紅茶を飲んでいる。
「レイラ、考えてごらん。Aランクの冒険者が精霊の森を見つけて、その森に精霊の泉が有る確率は1割にも満たないんだよ。その上、泉の妖精が摘み取ってくれた水草なんて奇跡としか言いようがないからね」
クスリと笑ったディザの笑顔が今日も黒い。
優雅に紅茶を飲んでいたルミエールがカップを置くと、真剣な顔で言った。
「レイラにお願いがあります」
ヴァンとディザの話を聞いてソファにグデッとしてた私は、ちゃんと座り直す。
「なに、何か問題が起きそう?」
少しビビリ気味に聞くと「違いますよ」と笑ってルミエールは話し出した。
「レイラが採取した薬草類は、本当に貴重な物なんですよ。私たちクスリを作る側としたら本当に有り難い事なんです。今まで苦しんでいた人の病気が治るかも知れないんですよ?だからレイラには、人助けだと思って特殊採取の依頼は積極的に受けてもらいたいと思っています」
背筋が伸びる思いがした。私の採取で助かる人が居る、そう言われたらとても嬉しい。
「ルミエール、ありがとう。頑張ってみる」
頷いてルミエールに言うと、とても喜んで貰えた。
「私が今、受けている製薬の仕事で必要な薬草を【空の国】のギルドに発注かけておきますね」
「え?ルミエールが必要ならすぐに採ってくるよ」
そう言うと、隣のディザから注意された。
「レイラ、ここの薬草は確かに勝手に生えてきている植物だけど。レイラが結界を張って、僕が管理者としてここに住んで初めて生きていると言うことを理解しなくちゃね。だから、ルミエールが個人的に使うならあげてもいいけど。仕事で使うのなら正当なお金を貰わなくてはいけないよ」
ディザが優しく教えてくれているが、私やディザのように特殊な力を持つ者は自分が居ることの重要性を理解しなくてはいけない。
「うん、分かったよ。ちゃんと、依頼としてお仕事を受けることにするね」
「良くできました」とディザが頭を撫でてくれる。
「じゃあ、毎日の薬草採取で貰ったお金はその腕輪に入れてもらって。特殊採取で貰ったお金は、ギルドの金庫で別に貯金したらどうかな?」
ディザの提案に賛成する。が、気になることが1つ。
「ディザが採った分はちゃんと貰って!」
「あぁ、僕は趣味でやってるだけだから要らないよ。それに何万年も生きてるとお金もそれなりに貯まっていてね…言ってしまえば、今のところお金には困っていないんだよね。フフフッ」
オオゥ、ディザの笑顔に黒いものが混じってます。何でそんなに稼いだのかは、聞かないことにしておこう。
「じゃあ、ジーノにこの金額でいいって事と。特殊採取の報酬は、ギルドの金庫に貯金をしたいってことを伝えておくな」
ヴァンがジーノさんに連絡をしてくれることになった。「ちょっとお小遣い稼ぎのつもりが、高ランク冒険者の難クエスト位の稼ぎになったな」と、ヴァンが苦笑いしていた。
その後、週に2、3回の割合で特殊採取依頼が届くようになった。中には、ルミエールからの依頼も混ざっているらしい。そちらの報酬については、ディザとヴァンに任せている。私に聞かれてもサッパリ分からないしね。
毎朝の常時依頼の薬草採取で順調にお小遣いが貯まって、私はホクホクだし。ディザと【獣王国】の地理や特産品、グルメなんかを調べて観光の予定も立てている。旅行前の準備で色々調べるのってワクワクするよね。
世界樹の世代交代の前後1週間は、お祭りが行われることが多いって事だから屋台とかも出るのかな。
獣王国で泊まる場所は、アイテール様が取ってくれる事になっている。それも、楽しみだな。
そんな毎日を過ごしている内に、【獣王国の世界樹】の世代交代を行う日がとうとうやって来た。




