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2つ目の特殊採取依頼のウムドレビは、先日アイテール様とディザと3人でピクニックに行って花冠を作った花畑の先にあるとファウヌスが教えてくれた。
「あった。ウムドレビ、毒があるから要注意って図鑑にあるけど…大丈夫そうだね」
見ると鳥と森の妖精がウムドレビの木の回りで遊んでいた。ウムドレビの木が時々、枝を揺すると森の妖精と鳥たちが逃げてまた戻ってを繰り返していた。
「ウムドレビの木さん。少し実を貰ってもいいかな?」
と聞くと、枝を大きく揺すって実を沢山落としてくれた。
「ありがとう」とお礼を言って拾ってみたら32個あった。依頼の数は、10個だったから残りはディザが取って置く事にしたみたいだ。これも、依頼書を置いて転送した。
最後のモーリュの草は、炭酸水の泉の回りに沢山生えていた。鑑定してみる。
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モーリュ草
毒・魔法を打ち消す効果有り
薄いピンク色の葉、根本は濃い緑色
炭酸泉の回りに生えている
*オンディーヌの加護が付与されている
*世界樹のマナをタップリ蓄えている
*蛍光ピンクのモーリュ草は更に希少
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そう言えば、炭酸泉は珍しいって言ってたね。だから探すのが難しいんだ。しかも、ここのモーリュ草は全部蛍光ピンクで毒々しい。
「モーリュ草の依頼数は、30枚だね」
「はーい」
30枚のモーリュ草を摘むと転送した。
「よし、依頼完了。初仕事お疲れ様」
ディザが頭を撫でてくれる。常時依頼の薬草は、朝の散歩で摘むことにして今日のお仕事は終了することにした。
~Sideアイテール~
コンコン、とノックの音に顔を上げるとヴァンが入ってきた。
「お仕事中に失礼します。ディザからメモリーキューブを預かって来ました」
どうやら、今日のギルドへの登録と町歩きの様子を撮って来てくれたようだ。
「ありがとう、後でゆっくり見させてもらうよ」
預かったメモリーキューブを大事にしまう。
「それから、今日の町歩きで魔道具屋に行ったんですが。その時に腕輪の可愛い物が欲しいと言ってましたよ。今後、探すつもりのようですが選びたいとも言っていました」
ヴァンは「俺からの報告は以上です」と言うと帰って行った。
「ヴァンもいい仕事するよね」
そう独り言を言うと「エド、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」とエドカルドを呼ぶ。
「どうしたんですか?」
すぐに来たエドカルドに魔道具の腕輪のカタログを持ってくるように頼む。
「レイラ様にですか?」
「うん、自分で選びたいらしいから。10本くらい用意して選べるようにしてあげたいんだよね」
パラパラ捲って女性的で綺麗な物と、もう少し少女向けの可愛らしい物と少しシンプルな物を選んでエドカルドに取り寄せるように頼む。
「忙しいのに悪いな」
「このくらい大丈夫ですよ。夕方までには用意できます」
そう言って部屋を出ていく良くできた補佐官を見送る。
「今日は、早く仕事を終わらせてレイラに会いに行かなくちゃね」
独り言を呟いて、上がってきた報告書を読む。闇に蠢く物達が南に向かっている。以前からマークしていた奴等がとうとう動き出したようだ。何が目的で、何をしようとしているのか…その前に何とか食い止めたい。
近々【獣王国】へ世代交代の為に行く予定があるから。その時に少し揺さぶりをかけてみるか。
「そう言えば」と思い出す。ルミエールがレイラの夢に干渉した者が南に居ると言っていたな、何か関係があるのか。これも、もう少し調べさせよう。
報告書にサインと追加指示を記入して転送箱に入れる。次の報告書を見ると、【人の国】のその後についての報告だった。
「あの青年は、父親とは上手く行かなかったんだな…」
報告書には、青年が父親や他の貴族達に捕らえられて監禁されているとある。バッカスへの感謝の祭りを青年が取り仕切って今年の収穫は豊作を見込めそうだと報告があったのに、人間の考えることは良く分からない。
今後【砂漠の世界樹】の結界は、北側には広げないように言っておこう。レイラの住む森に人間が入り込むと考えるとゾッとする。
報告書の最後に【氷の国】から武器を輸入しているとある。戦争を始める気なのか。基本、国や民に神が直接干渉することはしない。祭りや祈りによって上げられた神への感謝の気持ちに気紛れに答えてやるくらいだ。
だが、今の私はレイラ第一だから【砂漠の世界樹】の周りでキナ臭い話はして欲しくない。こちらも確認のサインと青年の保護の指示を記入して転送箱に入れた。
もう少しで、仕事が終えられそうだ。今夜は、レイラの初仕事を誉めてあげてご褒美に腕輪をプレゼントしよう。そう考えるだけで顔が勝手に笑顔になる。
私から幸せのオーラが溢れて世界に干渉しすぎないように気を付けないとな。




