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ランチをお腹いっぱい食べたから、運動のため自分で歩くと主張したけどヴァンに却下された。
商店街の中程まで行くと、文房具や雑貨屋を扱うお店が増えてきた。その一つのお店に入ると、入り口に綺麗な石と機械の部品を組み合わせたような腕輪が売っていた。
「気になるか?あれが財布代わりになるブレスレットだ」
さっきヴァンが腕輪で支払いをしていたのと同じものらしい。ちなみにヴァンの腕輪は、黒い金属に植物を編み込んだ様なデザインに青い石が付いている。
「今度、可愛いブレスレットを探すの手伝って」
「今日じゃなくていいのか?」
【空の国】で探せばスチームパンク風の格好いい物が見つかりそうだけど。もう少し、可愛らしい物が欲しいと言う乙女心が発動中なのだ。
「もう少し見て選びたいなと思って。あと、可愛いのが欲しい」
そう言うと、ディザが急ぐことないよ。とニッコリ笑うのを見て。ディザの笑顔が今日は黒いなと思ったことは内緒だ。
「そうだな、俺も気にして見ておこう。採取用の転送カゴはあそこだな」
店の奥の方に積まれているカゴを見に行く。
「この底に転送の魔法陣と魔石が組み込んである。所謂、魔道具だな」
魔法陣と魔石でギルドに自動転送されるのか。今度、ディザに魔法陣についても教えてもらおう。
カゴのサイズは、背負うほど大きなものから掌に乗るほど小さな物まである。ギルド以外にも商用の転送に使われることもあるそうだ。
「レイラ、これどうかな」
ディザが見せてくれたのは20センチくらいのカゴで腕に通して下げられるタイプだ。花と蝶のデザインが入っていてとても綺麗だ。
「わぁ、綺麗だね。それにしようかな」
「僕はこっちの実用的な物にするよ」
ディザは、スーパーのカゴのみたいな品を持っていた。うん、使い勝手は間違いないよね。
「じゃあ、買ってくるからお店のなかを見ていてね」
ディザがお会計に行ってくれたからヴァンとお店の中をブラブラする。ヴァンに聞いたらこのお店は、魔道具屋さんだったようだ。色々な日用雑貨から複雑な機械までいろいろある。
「お待たせ。早速帰ってお仕事する?それとも、もう少し観光していく?」
「うーん…今日は、帰ってお仕事する」
少し迷ってしまったが、やはり観光はお小遣いを持って行きたい。
「レイラは、ぶれないな」
ヴァンが苦笑いしてるけど、気にしない。次に来たときは観光案内を頼もう。
「じゃあ、帰って薬草を採りに行こう」
転移魔法は、ヴァンの部屋に戻ってからすることになった。転移は、高度な魔法だから使うと周りの人が驚いてしまうから基本は人の居ない時に使うんだって。
世界樹の家に帰るとディザが3階の図書室からミニサイズの植物図鑑を持ってきてくれた。
「ギルドから常時依頼と特殊採取依頼の用紙を貰ってきたから植物図鑑に付箋を付けてから行こうか」
常時依頼の薬草は、知っている名前ではネトルやカモミール、ローズヒップ等のハーブ類があった。
魔力を帯びている薬草は、ボリジやシルフィウム、ヘリオトロープ等。
特殊採取依頼の薬草を図鑑で調べる。モーリュは、毒や魔法を打ち消す効果。シーブは、棘のある水草で若返りの効果。ウムドレビは、猛毒を周囲に撒き、樹液も猛毒で動く。とあるが、果実は解毒薬として使われるそうだ。
それぞれに付箋を付けて薬草の形を覚える。先程買ってきたカゴを持って森へ行くことにした。ヴァンは、ディザと何か話していたけど用事が出来たからと出かけて行った。
森の精霊ファウヌスに薬草採取を今後、行う旨を伝えると特殊採取依頼の薬草が生えている場所を教えてくれた。
「シーブは、水草ですから泉にありますよ」
と、教えてもらったからまずは泉に行ってエレインに聞いてみることにした。
「エレイン、シーブの水草ってこの泉に生えてる?」
「ありますよ、ほらあそこら辺の水草ですよ」
泉の透明度は相変わらず綺麗だからエレインが指差す水草はちゃんと確認出来た。
「少し青みがかっているんだね。わぁ、棘の部分は紫色になってる。綺麗だね」
「棘が長いから注意が必要だね」
さて、泉の底に生えている水草をどうやって採ろうかと考えていたら泉の妖精たちが採って来てくれた。
『小さなお姫様。この水草で合っている?』
と、聞かれて私が答えられるのは図鑑と照らし合わせて「たぶん」だ。
「レイラに鑑定のスキルは無かったっけ?」
「あっ、あったはず」
今日の属性確認で貰った用紙のスキルの欄に鑑定ってあったよね。こちらの呪文は《アプレイザル》だけど、使えるか試したけどやっぱりダメだった。
《鑑定》
すると、画面がブンッと現れて鑑定内容が表記される。
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[シーブ]
若返りの効果有り
細長く青みがかった葉と紫色の棘が特徴
精霊の森の奥深くに有る精霊の泉に生えている
*紫の棘は大変鋭いので注意が必要
*砂漠の世界樹の泉に生えているため効能が高い
*妖精が摘み取った物、非常に希少価値が高い
ーーーーー
「おっ、見れた。精霊の森に精霊の泉…たしかに」
『小さなお姫様。合ってた?』
「うん、合ってたよ」
『いくついるの?』
『沢山いるの?』
泉の妖精たちが一斉に聞いてくる。
「ディザ、いくつくらい要るのかな?」
「依頼には、5本てあるよ」
ディザが依頼の確認をしてくれた。
「じゃあ、5本をこのカゴに入れて下さい」
『いいよ~』
泉の妖精たちがキャッキャとはしゃぎながら採取は完了してしまった。
「特殊採取依頼の時は、採取した薬草の上に依頼書を置いて…魔力を少しカゴに送れば転送されて依頼完了だよ」
ディザが依頼用紙をカゴの中に入れてくれたから、少しだけ魔力を流してみる。すると、シュンッと一瞬で薬草が消えて転送されたようだ。




