51
なんだろう、雲の上みたいにフカフカだ。雲の上なんて行ったこと無いけどね。
起きる前の微睡みの中、自分に突っ込みをを入れながらフカフカの雲に顔をスリスリする。
「レイラ、起きたのか?」
上から男の人の声がして飛び起きる。
「・・・。なんだ、ヴァンか…」
それだけ言うと、パタリとヴァンのお腹に倒れ込む。狼サイズのヴァンが一緒に寝てくれていたみたい。
「昨日の夜のことは覚えているか?」
「夜?みんなでお祝いしてくれた事?」
そう言うと、ヴァンは尻尾で私の首の辺りを撫でる。
「昨日の夜中に起きたのは覚えてないのか?」
「え?レイラは、おやすみ3秒朝までグゥだよ」
そう言うと「そうかよ」と言うとヴァンは人型に戻ると「顔を洗いに行くぞ」と抱き上げる。
「いつも、先に着替えるよ」
と言うと「今日はギルドに行くから着替えは食事の後だ」と教えてくれた。
「ギルドに連れていってくれるの?」
「あぁ、俺も仕事の報告があるから。ついでだ」
とニヤッと笑う。キャッキャと喜ぶ私を連れてダイニングへ行くと朝からアイテール様まで居て更にご機嫌だ。
「レイラ、良く眠れたかい?」
アイテール様に聞かれると、私が答える前にヴァンが答えてしまった。
「レイラは、おやすみ3秒朝までグゥらしいですよ」
アイテール様は、一瞬眉を寄せたけどすぐに笑顔で「寝る子は育つんだよ」と頭を撫でてくれた。
「今日はね。ヴァンがギルドに連れていってくれるんだって」
そう言うと、ウンウンと頷いて「ディザも一緒に行くんだよ」と教えてくれる。
今日は、アイテール様も居てヴァンとルミエールが居るから朝から食卓が賑やかだ。
「アイテール様とは【獣王国】のギルドへ行こうかと相談していたんだけど。【空の国】の方が良いのかな?」
ディザがヴァンと相談をしている。
「そうだな、あそこのギルドマスターは俺が精霊ってことも知っているし。ある程度の奴は、俺のランクを知っているから突っ掛かってくるバカも居ないだろう」
「それなら【空の国】のギルドの方が安心だね。アイテール様、いいですか?」
ディザがこちらを向いてアイテール様に確認する。
「そうだね、ヴァンに任せるよ。頼むね」
「承りました」
ヴァンは、恭しくアイテール様に礼の姿勢を取ると椅子に座った。
「ああ、ヴァンもルミエールもレイラと契約したんだから、ここでは家族だからね。そこまで畏まらなくていいからね」
アイテール様に言われて、ヴァンとルミエールが居心地悪そうに「はい…」って答えてた。その内、慣れるよね。
『はいはい。堅苦しい話はお仕舞いにして、朝御飯食べてくださいよ。アイテール様は、朝から会議じゃなかったですか?早くしないと、エドカルドが迎えに来ますよ。レイラもしっかり食べて、今日はギルドに行くんだろ?』
ウェスタが皆の朝食をササッと並べるとパンパンと手を叩いて空気を変えてくれた。
「うん。いただきます」
今朝のメニューは、おにぎりが二種類。梅とおかかのおにぎりとひじきのおにぎり。海苔が巻いてあるやつ。お味噌汁にお浸し、焼き魚の和食定食だ。
最近、日本食にハマったウェスタは和食材を求めて
狐族の領へ良く買い出しに行く。梅やひじきは、私のリクエストなんだよね。しっかり、出汁の取り方もマスターしてくれてお味噌汁が飲める日常がとても嬉しい。
ちなみに、ヴァンとルミエールは狐族の領で和食を食べたことがあるそうで箸も上手に使っていた。
「じゃあ、レイラ。ヴァンとディザの言うことをちゃんと聞くんだよ。知らない人に付いていっちゃダメだよ。妖精に付いていくのもダメだよ。貰った食べ物は一度、ディザに聞いてから食べなさい。それから…」
アイテール様の過保護が爆発して大変なことになっている。
「パパ、大丈夫だから。私、前世では働いていたし独り暮らしだったしちゃんと社会人してたから」
アイルパパの口を両手で塞いで叫んでしまった。もう、恥ずかしい。
最初は、驚いていたアイテール様だけど。私をギュッと抱き締めると笑ってくれた。
「ごめんごめん。レイラの事が大事だから、いっぱい心配をしたいんだよ。気を付けていっておいで。じゃあ、行ってくるね」
頬っぺにキスをすると、アイテール様は大人しくお仕事に行った。
「じゃあ、俺たちも準備するぞ」
ヴァンに言われて2階の寝室へ行くことにした。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
誤字の報告、大変助かります。
これからも宜しくお願いします。




