48 お勉強の日〔精霊召喚-2〕
光に目が慣れてきて目の前の狼の全貌が見えてきた。
全体的にシルバーの毛に所々、緑の蔦が体を覆っている。瞳の色は、青紫色で鋭い。
「あ…はぃ。私が世界樹の愛し子です」
『契約を望むか』
ハッキリ言って良く分かりません。
『愛し子が生まれたばかりと言うのは聞いている。お前、今の状況分かってないだろ』
はい。正解です。既にバレバレみたいです。
「すみません。ちゃんと説明を聞く前にこの場に来ちゃいました」
嘘はつかずに謝りましょう。
『アイテール様が付いていながら…』
狼さんが、ため息をついていた。アイテール様がすみません。
『愛し子様を責めるのはお止めなさい』
白い光の向こうから声がする。
『お邪魔しますよ。愛し子様』
真っ白で大きな鹿がゆっくりと魔法陣の中へと歩いて来た。鼻と瞳以外、全部白い。角まで真っ白。さらに、真っ白な角に白い花が咲き誇っている。
「精霊の召喚は、一度に複数呼ぶこともできるんだ…」
『いいえ、普通は一回で精霊を呼び出すのも難しいでしょう』
Oh!ここでチートが発生した模様。
「えっと、お二人ともお名前聞いても良いですか?私は、レイラと言います」
まずは、自己紹介が必要だよね。
『世界樹様も居ながら…』
狼さんがズーンてなってる。ディザがすみません。
『レイラ様ですね。私達には、まだ精霊として正式な名前はないのですよ。契約者に名前を付けて頂くと世界がその名を認識するのですよ』
おっと、名付け案件は発生率が高いようです。
『まぁ、自己紹介は必要か。俺は、風と雷の眷属。ちなみに、俺は狼じゃなくてフェンリルだからな』
あっ、狼さんだと思っていたのもバレてます。
『次は、私ですね。私は、光の眷属です。アイテール様の娘様が精霊召喚をしていると気づきましてね、急いで参った次第です。』
鹿さんと言う訂正は無いけど、普通の鹿よりだいぶ大きい。ヘラジカ並みで角の形状は、トナカイの角をもっと豪華にした感じ。
「お二人とも私と契約をして大丈夫ですか?契約と言うものが何なのか良く理解してないですけど」
首をコテンと傾げて聞いてみる。
『私は、レイラ様と契約をするために来たつもりです』
『俺も自分の意思でここへ来た』
二人の意思は確認出来たから契約をしてもらうことにして、ペコリと頭を下げる。
「では、契約を始めます」
契約呪文の詠唱は頭の中で理解している。
《我、世界樹の愛し子…レイラの名の元に…汝、風と雷の眷属…ヴァンを我と契約をする者とする》
《我、世界樹の愛し子…レイラの名の元に…汝、光の眷属…ルミエールを我と契約をする者とする》
二人の額に手を置いて契約の呪文を詠唱する。大きな魔法陣が重なるようにいくつか展開して強く光る。
眩しさに目を瞑り、次に目を開けたときにはウッドデッキの上に居た。
「アゥゥ…元に戻れた」
私が脱力するとアイテール様が来てサッと抱き上げられてしまう。
「レイラ、お疲れ様。無事、精霊と契約出来たみたいで安心したよ。しかも2柱も、流石レイラだね。紹介してくれるかい」
興奮気味のアイテール様に二人を紹介する。
「えっと、風と雷の眷属のヴァンと光の眷属のルミエールです」
二人は、紹介されるとアイテール様とディザの前で頭を下げて礼の姿勢を取る。
「二人ともレイラの事を頼むよ」
アイテール様がそう言うと『承りました』と声を合わせて返事をした。
「二人とも人型は取れるんでしょ?レイラに見せておいた方がいいんじゃない?」
と、ディザが言う。
「え?人型って?」
私がディザに聞いている間に二人とも人型に成って居ました…。
「私達は、高位の精霊ですので人型を取れて当然ですよ」
ルミエールは、真珠色の長い髪の毛と真っ黒な瞳の美丈夫さんだった。睫毛まで白くて黒と紫のローブの様な物を着ている。所々に金糸で刺繍が施されている。中に着ているチャイナカラー風の服も刺繍が素晴らしい。
「人型を取れる方が日常生活が便利だしな」
そう言うヴァンは、銀髪に頭の上に狼の様な耳がついていて尻尾もツヤツヤの銀色の毛をしている。青紫色の瞳は、人型を取っても鋭いが笑いながら話をしている姿はとても優しそうだ。黒いワイシャツにブラウンのベスト。黒いパンツに膝下までの金具の多いブーツを履いている。腰に付けているベルトには、変わった形の銃らしきものが二丁下げられている。金具の多い服装はアレだ、スチームパンク風の服だ。




