47 お勉強の日〔精霊召喚-1〕
恵みの雨は妖精達に大変好評だったようで『今後も降らせて欲しい』と言うお願いをされた。なんだか、嬉しくってニコニコしちゃうね。
「魔力の制御は、大丈夫そうだね。他の火や風とかの攻撃魔法については、もう少し慣れてから練習しようね」
魔力の制御が出来ても攻撃魔法については、慎重に教えると言うことみたい。
「精霊の力は、眷属の妖精達に力を貸してもらうのが一般的で対価として自分の精霊力をあげるんだよ。その、精霊力が美味しいと妖精達も喜んで力を貸してくれるんだ」
魔力とは別に精霊力と言うものがあって、妖精さん達に気に入って貰えたら沢山力を貸して貰えるってことだね。
「僕の場合は、風や森、土の妖精が眷属になるんだけど。妖精達とは別に契約をしている精霊が居るんだよね」
そう言うと、ディザは指を唇に当てると「ピューィ」と指笛を鳴らした。
すると、世界樹の上の方から翠の鳥がスッと舞い降りてきてディザの腕に止まった。
「わぁ、綺麗な鳥さん」
30センチ程の鳥だが、穏やかな琥珀色の目をしている。
「この子の名前は、メルキオールって言うんだ。メルって呼んであげて」
「メル、よろしくね」
そう言うと、頭の中に響くような感じで声が聞こえた。
『小さなお姫様。こちらこそ、よろしくね』
まず、頭の中に響いた声に驚き。次に、メルが喋れることに驚いた。
「メルとお喋りできるんだね」
きゃあ。と両手で口許を押さえて騒いでいるとディザがヨシヨシと頭を撫でてくれる。
「メルは、精霊だからね。泉の精霊のエレインや森の精霊のファウヌスと同じだよ」
なるほど、言われてみればそうでした。
「メルは、僕の眷属で風の精霊なんだよ。精霊召喚をして契約をしたんだけど…何年くらい経ったのか忘れちゃったな」
とディザがメルに目を向ける。
『私も忘れてしまったわ。4,5千年は経っているんじゃないかしら?』
ディザとメルは、お互い気にしないタイプみたい。
「まぁ、僕らの話は置いといて。レイラの精霊召喚をしようと思うんだけど…アイテール様は、呼んだ方が良いよね。そうだね、メル。アイテール様を呼んできてくれる?」
ハハハ…。と力なく笑ってディザがメルにお願いをする。
『アイテール様が居ない時に精霊召喚なんてしたら、一生恨まれるわよ』
そう答えると空高く飛んで行ってしまった。首を直角にして空を見上げていたら世界樹のドアがバタンと大きな音を上げて開いた。
「レイラ!精霊召喚は、まだしてない?」
バタバタとアイテール様が走ってくる。
「まだ、始めてないですよ」
ポカーン…とアイテール様を見上げる私に代わってディザが答えてた。
メルが飛んで行ってから30秒も経って居ないんですけど…。何でもありだな、この世界。
「レイラ、精霊召喚を始めるよ」
「え?準備は要らないの?」
ディザの声に現実に戻ると、またビックリな内容に「えぇ…」となってしまう。
「大丈夫、召喚の呪文を間違えなければちゃんと魔法陣が展開するから」
呪文唱えたら精霊召喚て…闇の炎に抱かれて的なことを言わされたら…。Ouch!
「今から詠唱するから続けて…」
私の苦悩には気づいては貰えずに召喚は続行する模様。
「我、声に応えし精霊よ」
《我、声に応えし精霊よ…》
ディザに続けて詠唱を始めると、足元に召喚陣が青白く浮かび上がる。
《姿を表し…我の願いを聞き届けたまえ…我名は、レイラ…世界樹の愛し子也》
体が浮き上がりスラスラと続きの呪文が詠唱される。召喚陣が完成し強い光に包まれた。
『お前が愛し子か』
青白い光の中、銀色に光る狼が私の前に座っていた。




