04
アイテール様に抱っこされながら辺りをキョロキョロと見回す。
多分、ここは謁見の間だと思う。
赤い絨毯の先、数段高くなっている所に王様らしき人が金ピカの椅子に座って居る。その隣には、ドレスを着た女性がアイテール様を見て顔を赤らめている。二人とも若くて20歳前後に見える。
広間の方には、役人のおじさん達と若い貴族の男性達が居てビックリした顔でこちらを見ている。皆、中世ヨーロッパの人のような格好で顔も色白でヨーロッパぽい。
その中でこの国ではないと思われる数名がサッと膝を突き頭を下げた。人の国もいくつかあり今回来たランディローザ以外の国の人達のようだ。何故、他国の人だと分かったかと言うと。肌の色が黒くとても身長が高かったり、私の故郷である日本人のような顔をしていたからだ。他の何人かもヨーロッパの人とはちょっと違う気がした。
突然現れた私達に驚いていた王様の隣に立っていた貴族お兄さんがハッとして指示を出す。
「貴様、王の前に突然現れるとは何処の者だ。何をボサッとしている。捕らえろ」
騎士の人達が動こうとするとアイテール様は、スゥッと目を細くして低い声で呟いた。
「動くな」
その声に騎士の人達は動けなくなったようだ。
アイテール様は視線を正面に戻して王様を見て溜め息をついた。
「お前が人の国の王なのか。私を見て誰か分からぬとはやはりこれ以上、世界樹を任せることは難しいな」
「そうですなぁ。愚かな王に私を任せたとして今後も同じ事の繰り返しでしょう」
【人の国の世界樹】が相槌を打つ
「人の国の王よ。知らぬようだから教えてやろう。私は、この世界の神アイテール。そして、この者は【人の国の世界樹】だ。今宵、そなた達がこの【人の国の世界樹】から奪った世界樹の実を返してもらいに来た。」
それを聞いた人の国の王様は
「神だと。ふざけるな、この国の神はディザイラ様だ。アイテールなど知らん。それに世界樹など既に枯れ果てたではないか。今更何が出来ると言うのだ。」
急に大きな声を出した王様にビクッとしてしまった。アイテール様が背中をトントンしてくれる。
「何を勘違いしているかは知らないが、ディザイラと言う名の神は存在しない。この国の者達は居もしない神を崇めていたと言うことか。ならば、私の加護である世界樹は必要あるまい。」
そう言うとアイテール様は、私を抱き上げている反対の手を前に出し手の平を開いた。すると、手の平に金色の光の粒が集まりはじめた。
正面で騒いでいる王様と周りにいるのは王族の人達だろうか。彼等から金色の光が出てアイテール様の手の平に集まっている。その他にも謁見の間の至るところから光の粒が集まって来ている。
「ウウ゛ッ、やめっ…」
声のする方を見ようとしたらアイテール様に
「見ちゃダメだよ」
と微笑まれてしまった。
「あの者達の寿命は、とうに過ぎているはずなんだよ。だから、世界樹の実を体から取り除いたら。まぁ、跡形も無くなってしまうんだよね」
アイテール様がちょっと言いにくそうに教えてくれた。
静かになったので恐る恐る前を見るといくつかの服だけがそこに折り重なっていた。
「消えちゃった」
私の声が謁見の間に響き渡った。