39 ジンジャーエール
これは…夢の続き…
暗い部屋…あれは…魔法陣…
黒い生き物…囚われている…
お願い…私を見て…
泣かないで…
ーーーーー
「レイラ、朝だよ。起きれる?」
「おはよう…」
今日は、珍しくディザに起こされた。また、夢を見ていた気がしたけど思い出せない。
「どうしたの?何処か具合悪いの」
「ううん。また、夢を見ていたんだけどね。忘れちゃったみたい」
ディザが頭に手を乗せて「うーん」と悩んでたけど、大丈夫って言って着替えを始めた。
朝食の後は、日課になった朝のお散歩に行く。エレインに朝の挨拶をして、泉の回りを一回りして森の精霊のファウヌスに会いに行くのがルーティーンになりつつある。
森の精霊の誕生によって最近、生き物が増えた。鳥のさえずりが聞こえて今も目の前をちょうちょがヒラヒラと飛んでいる。まだ、リスさんやウサギさんには会えていないけど、穏やかな森の中はとても気持ちがいい。
今日もエレインに朝の挨拶をすると
「おはようございます。今朝、オンディーヌ様が世界樹様の裏側にタンサンスイの泉を作ってくださったそうですよ」
そう言われて、一旦、家に帰ってコップを持つとタンサンスイの泉を見に行く。
「わぁ、本当にプクプクしている」
岩で回りをぐるりと囲んだ直径1メートル程の泉は、プクプクと泡が出ている。早速、コップに入れて飲んでみる。
「クゥ、強炭酸だ。ケフッ」
強めの炭酸に喉を刺激されるけど、湧水だからキンキンに冷えていてそのままでも美味しい。
「ディザも飲んでみる?」
と聞いてみると、恐る恐る一口飲んで大きく目を見開いた。
「麦酒よりもシュワシュワが強いね。これを炭酸て言うんだね」
ディザは「これ、気に入ったかも」とその後も炭酸水を飲んでいた。
「これで、ジンジャーエールが作れる!」
ディザを引っ張って家に戻ると、ジンジャーエールの元になるジンジャーシロップを作ることにする。
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[ジンジャーシロップ] 400ml
水 200ml
砂糖 100g
はちみつ 大さじ1
生姜 100g
〈スパイス〉
鷹の爪 1本
シナモン 1本
コショウ 8粒
アニス 1個
クローブ 5粒
(アニスとクローブはなくても大丈夫)
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パーティーの分も作るから、今回は1リットル分作ろうと思う。
「まずは、生姜を薄くスライスするよ。皮は付いたままね」
「じゃあ、それは僕がするよ」
ディザが生姜をスライスしてくれている間に残りの材料を計って鍋を用意する。
「レイラ、出来たよ」
「ありがとう。そしたら材料を全部鍋に入れて火にかけるよ」
沸騰する手前で弱火にして10分~15分煮たら完成。アラ熱が取れたら瓶に入れて保存する。冷蔵庫で2週間くらいは保つかな。
今回は、ディザに魔法でアラ熱を取ってもらう。早く魔法を覚えて色々自分で出来るようになりたいな。
ガラスのコップにジンジャーシロップと氷を入れて汲んで来た炭酸水を注ぐ。軽く混ぜて。
「ジンジャーエールの完成!」
ディザと二人で味見をする。
「ちょっと辛めに作ったけど、どうかな?」
「ひとくち目がちょっとむせそうになるけど、サッパリしていて美味しいね」
今回は、大人が多いパーティーだから辛口にしてみたんだ。ライムを添えるとオシャレだよね。子供が飲むならシナモンや鷹の爪を無くせば甘いジンジャーエールが出来る。
これで、後は当日に手まり寿司とお吸い物が出来れば良いね。
「ディザ、後は何か準備ある?」
「だいたい、準備は終わっているよ」
泉の上のウッドデッキは、中央に大きなテーブルとソファや座り心地の良さそうな椅子が置いてあって下には北欧風のカーペットが敷いてある。入り口の方にはゴロリと寝そべることが出来そうな大きなベッドに沢山のクッションと小さなテーブルが用意してある。
パーゴラの上には麻布が掛けてあって日除けになっている。同じ麻布が所々垂れ下がっていて風に揺られてオシャレな感じになっている。
泉側には、パーティーで使うようにバーベキュー用のコンロがあったりウッドデッキの端の方には小さなピザ釜まである。
「後は、当日に花の妖精たちにお花を沢山飾ってくれるようにお願いしてあるから大丈夫かな」
「じゃあ、準備は完了だね」
明日は、ホームパーティー。とっても楽しみ。みんなが喜んでくれるといいな。




