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玄関をトントンとノックするとガチャリとドアが開けられた。アイテール様が開けてくれたと思って見上げたら眼鏡をかけたお兄さんでビックリして止まってしまった。
「クスッ。レイラ、入って大丈夫だよ」
ディザに背中を押されてアイテール様の執務室に入る。
「レイラ、ディザ。ちょっと待っててね、もうすぐ終わるから」
とアイテール様が言うと、眼鏡のお兄さんがソファに案内をしてくれた。ついつい、お兄さんの顔をジーと見てしまう。薄い茶色の髪の毛に薄い水色の瞳はスッと切れ長で眼鏡も相まって冷たい印象がある。肌の色は白くて細身のスリーピースのスーツを着ている。
私がジーと見ていたら、お兄さんが膝をついて挨拶をしてくれた。
「始めまして、愛し子様。私は、アイテール様の補佐官をしているエドカルド=ハインと申します」
「レイラです。よろしくおねがいします」
と挨拶をするとエドガルドさんはニコッと笑うとお茶の準備をしますねと隣の部屋に入っていった。
「お待たせ。今日は、どうしたの?」
アイテール様が隣に座って頭を撫でてくれる。
「ウェスタがお米を取り寄せてくれたから、おにぎりを作ってきたの」
「おにぎり?」
アイテール様が首をかしげて聞いてくるから、取り合えずおにぎりを出してみる。
「これがおにぎりだよ。レイラが握ったからちょっと小さいんだけど」
と言うと、アイテール様は顔をパアッと明るくして私をギュッと抱き締めてくれる。
「レイラが作ったの?小さくて可愛い」
取り合えず、アイテール様を落ち着かせておにぎりを食べてもらう。
「どう?おにぎり美味しい?」
アイテール様のお膝に手をついて、ねぇねぇと感想を急かす。
「うん、美味しいね。前に狐族の所で食べたおにぎりも美味しかったけど、レイラが作ってくれたおにぎりの方が美味しい」
満面の笑みで誉めてもらいました。
「紅茶をいれてしまいましたが、合いますかね?」
と、エドガルドさんがカップを置きながら聞いてくれた。
「おにぎりは、何でも合うから大丈夫なの」
「ほぅ、はじめて見る食べ物ですね」
と、興味を持ったようだったからエドガルドさんにもおにぎりを勧めてみる。そう言えば、海苔を巻いたおにぎりは見た目が黒いのにみんな普通に食べてくれるよね。
「エドガルドさんも1つ食べてみて」
「では、1つ頂きますね」
そう言って、一口おにぎりを食べると手を口許に持っていって
「これは、美味しいですね。少し塩気があって大変美味しいです」
とても喜んでいるみたい、あまり表情は変わらないけど目が喜んでる。
「良かった。中の具はね、焼きたらこと鮭の二種類にしたの」
具材の説明をして私もおにぎりを頬張る。焼きたらこのおにぎり好きなんだよね。
「大変美味しいものを頂きました。愛し子様、ありがとうございます」
丁寧におにぎりのお礼を言われるとちょっと恥ずかしくなっちゃう。
「エドガルドさん。また、作ってきたら一緒に食べてね。あと、レイラって呼んでね」
「楽しみにしていますね。では、レイラ様。私の事は、エドとお呼びくださいね」
エドがニッコリ笑ってくれて良かった。
「へぇ、エドがそんなに嬉しそうにしているのはじめて見たかも」
アイテール様が面白いものを見た、と言う顔でからかうと
「こんなに可愛いレイラ様から次のお約束を頂いて、エドと呼ばれれば嬉しいに決まってるじゃないですか」
とエドが眼鏡を押し上げながらアイテール様に言うと、アイテール様にサッと抱っこされた。
「レイラは、嫁にはやらないよ」
そう言うアイテール様に、エドは冷たい視線を送ると、サッと立ち上がって。
「その内、パパうざいって言われますよ」
と言って「仕事に戻ります」と書類を纏めて部屋を出ていった。アイテール様は、と言うと。私を抱き締めたままフリーズして動かなくなってしまったから、ディザとおにぎりの具材の種類について話をしていた。




