37 おにぎり
久しぶりにお米を炊くけど、炊飯ジャーは無いからお米と一緒に取り寄せてもらった土鍋で炊く予定だ。
「お米を水からあげて、土鍋で炊きます」
今度は、私がウェスタにお米の炊き方を教える番だ。
「土鍋に今回は2合(約300g)を入れて水は、400mlいれて火にかけます」
『火の強さは?』
「土鍋で炊く場合は、中火で10分。沸騰したのを蓋を開けて確認したら、弱火にして15分くらい」
二人で鍋の前で料理の話を色々しながら様子を見る。沸騰したのを確認して、火を弱火にする。
お米の料理方法として、炊き込みご飯やチャーハン、丼もの等。沢山のレシピが有ることを伝えたら作り方を教えてほしいと目をキラキラさせながら言っていた。取り敢えず、出汁を取るために昆布とかつおぶし。安く手に入るなら、乾燥させたホタテの貝柱や赤貝が欲しい事を伝えておいた。醤油と味噌も忘れずにお願いしてある。
15分たったら鍋の様子を見る。
「泡がまだ、少しブクブクしてるから。もう2分くらいね」
少し待つと鍋からパチパチと小さい音がし始めた。
「うん、大丈夫そう」
鍋の中を確認してもう一度蓋をする。
「蓋をしたら10秒くらい中火で加熱して……火から下ろして10分蒸らして完成!」
『少し手間が掛かるけど、他の料理をしながらなら気にならないかな』
今日は、おにぎりを作りたいから具材を用意する。今回は、たらこと鮭の二種類を作る。今後は、佃煮や漬物を作って具材を増やしていきたい。
たらこは軽く炙って焼きたらこにして、鮭は塩を振って焼いて解しておく。
『そろそろ、10分だよ』
ウェスタが待ちきれないと声をかけてくる。
「じゃあ、ウェスタ蓋開けて」
蓋を開けると、フワリとご飯が炊けた匂いがする。
「ハァ、美味しそうな匂い」
久しぶりと言うほどではないけど、日本人としてはお米は食べれないと欲するんだよね。
炊けたお米をふんわりと混ぜて返す。土鍋で炊いたから少しお焦げが出来ているけど、それもちょっと嬉しい。
「綺麗に炊けたよ。そしたらね、ご飯を手にとって握るんだけど熱くて握れないから。ディザ、ちょっと手伝って」
5歳児の手は、柔らかくて皮膚が薄いから熱々のおにぎりを作るのは難しそう。ちょっと、魔法の力を借りようと思う。ダイニングでハーブを乾燥させていたディザに声をかける。
「なに?どうしたの」
「あのね、ご飯が熱いけど手に持ちたいの」
ディザは「え?」と目を丸くしている。
「手に持たなきゃダメなの?」
「うん、ダメなの!」
両手のこぶしをギュッと握って力説すると、ディザがしょうがないな。と言って魔法の使い方を教えてくれる。
「両手を出して。手を覆うように今回は、水の膜でいいかな?それを纏うイメージをしてごらん」
手のひらを出してビニール手袋を水で作るイメージをする。
「あっ!出来た。ウェスタ、これで熱くないからおにぎりを握れるよ」
ます、塩を少し取って手に刷り込む。ご飯茶碗一杯分くらいを手に取って具材を真ん中にいれて包むように握る。三角にして海苔を巻いてお皿に置く。
「お握りの完成~!」
5歳児の手は小さいから、ウェスタには3倍くらいの大きさのおにぎりを作ってもらおうと思ったらディザからストップがかかった。
「レイラ、そのおにぎりってアイテール様にも食べてもらうつもり?」
「うん。持っていくつもり」
今日もアイテール様は、お仕事で居ないから持っていこうと思っていた。
「だったら、レイラの手で握ってあげた方が喜ぶと思うよ?」
『ああ、俺もそう思うよ』
ディザとウェスタに言われて、そう言うものかな?と思ってせっせとおにぎりを量産する。隣でディザとウェスタも自分の分のおにぎりを作っている。ウェスタは風魔法で綺麗ににぎっているけど、ディザはなかなか三角にならなくて苦戦しているみたい。
「ディザ手は、こう直角にしてギュッてしたら転がしてギュッだよ」
「成る程…でも、難しいな」
ちょっと歪だけど、ディザのおにぎりが出来た。
「温かいうちに、ひとつ食べちゃお」
皆で、おにぎりを試食する。
「うん、美味しい」
異世界のお米の味も美味しくて良かった。ディザとウェスタも美味しそうに食べている。
『米と言うのは甘味があって美味しい物ですね』
「うん、とっても美味しい。具材のたらこも美味しいね」
二人にも好評だったから、アイテール様にも届けに行こう。




