33 森の精霊
アイテール様とディザと一緒に森の中を行くとひときわ大きな木の根本にその精霊は腰かけていた。
髪の毛と眼の色が濃い緑色をしていて、身長は180センチくらいの青年がこちらに気づくと立ちあがって挨拶をしてくれた。
「アイテール様、世界樹様、愛し子様。初めましてファウヌスと申します」
テノールの低めの声をしていて、とても落ち着くな。
「君がこの森の管理者だね、よろしく頼むよ。まずは、森に住むもの達を呼び寄せるといい」
アイテール様が早速、森の管理についてお話していた。
「私は、レイラ。よろしくね」
「僕は、ディザだよ」
二人で挨拶すると、膝をついてにっこり笑ってくれた。
「レイラ様にディザ様ですね。今後ともよろしくお願いします」
「あのね、レイラ。鳥さんや動物とお友だちになれる?」
そうファウヌスさんに聞くと嬉しそうに頷いてくれた。
「もちろんです。森の動物達は、レイラ様の事を皆が大好きになりますよ。仲良くしてあげてくださいね」
パァと明るくなった私の顔を見て何か皆が笑っていたけど、見なかったことにする。だって、何か恥ずかしかったんだもん。
「取り急ぎ、何か困っていることはない?」
ディザが聞くと、実は…と相談されたのが。
「そうか、結界まで森が広がったのか。思ったより早かったね」
アイテール様が言った通り、ファウヌスさんの相談と言うのが。結界の中が森で一杯になってしまったと言う内容だったんだよね。
「じゃあ、レイラに頑張ってもらって結界を広げてこよう」
「うん?レイラに出来るの」
キョトンとアイテール様を見上げると抱き上げられた。
「だって、レイラがこの結界を張ったんだから。レイラに出来るはずでしょ」
アイテール様に言われて、成る程と納得する。
「じゃあ、ちょっと上から見て結界を広げてみようか」
そう言うと、世界樹の上を目指してアイテール様がフワリと浮かび上がった。上に行くにつれて結界内が見渡せる。
「確かに、森が広がって結界にそろそろ当たるね。世界樹の上の葉も当たりそうだね」
見上げると世界樹の樹の天辺がもう少しで結界に当たりそうになっている。
「人の国にあった時より大きくなっている?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみるとディザが説明してくれた。
「あぁ、あれはね。人の国が世界樹のお世話を放棄していたから成長するのを途中で止めてしまったんだよ。普通は、あの5、6倍は大きくなるからね」
「えぇ!ディザ、そんなに大きくなるの?」
【人の国の世界樹】は、100メートルちょっと位だったから。600メートル位になるってことでしょ?ス○イツリー位の樹がドーンと砂漠の真ん中に育つのかと思うとそれは、ビックリするよね。
「今回は、レイラが世界樹に住んでいるからもっと大きくなるかも」
何て言うことでしょう。ディザは、劇的ビフォーアフターばりの変化をする予定らしい。
「そしたら、結界もだいぶ上まで必要なんだね」
ホゥと息を吐きながら感心していると、アイテール様がクスクス笑っている。
「時々、様子を見て少しずつ広げていけば大丈夫だよ。私もディザもこうやって手伝うから問題ないよ」
うん。アイテール様達がいるから大丈夫だよね。
「一旦、結界の外に出て結晶を上に引き上げるよ」
そう言って、結界の外へ出る。久しぶりの結界の外側は相変わらずの灼熱地獄にブワッと汗が吹き出してくる。
「あついぃ…」
「アハハ、少しの間だから頑張ってね」
そう言われて、結晶を確認すると手をかざして結晶を上に引っ張るイメージで上昇させる。200メートル程引き上げながら範囲を広げていく。
「そのくらいで良いかな」
アイテール様に言われて結界を安定させる。
「うん、上手にできたね。じゃあ、下に降りよう」
下降し始めると直ぐに結界の中に入る。スッと涼しい空気に触れて汗がスッと引いていく。
「お疲れさま」
下に行くと、ディザが冷たいハーブティーを用意して待っていてくれた。ゴクゴクと飲むと暑さも落ち着いてスッキリした。
「プハァ。ディザありがとう」
「どういたしまして」
二人でニッコリ笑っているとアイテール様が私の頭を撫でながら誉めてくれた。
「レイラ、良く頑張ったね。これで当分の間は大丈夫だと思うよ」
ファウヌスさんには、また明日来るねと約束をして世界樹のお家に帰ることにした。




