27 シリアルバー
アイテール様にお菓子を差し入れするためにカネルがシリアルバーの作り方を教えてくれることになった。お仕事中でも食べられるし朝食用に作り置きしても良いと思う。
『まずは、オーブンを180℃で余熱をして。ニッキ、オートミールを200g計ってちょうだい』
『はーい』
『レイラ様とカシアは、中に入れるナッツ類とドライフルーツを150g選んでね』
「はーい」
『わかりました』
キッチンの棚には、ウェスタが用意してくれている沢山の種類の瓶があってハーブや木の実、ドライフルーツが入っている。
「カシア、ナッツ類はあった方がいいよね」
『そうですね、ドライフルーツの甘酸っぱさもアクセントになって良いと思います』
「カシアのしゃべり方っていつもそんな感じなの?」
『そうですね。僕のしゃべり方はいつもこうなので気にしないでもらえますか』
そんな話をしながらカシアと一緒に瓶の中身を見ていく。
『あっ、レイラ。ここにドライクランベリーがありますよ』
上段の棚をフワフワと飛びながら見ていたカシアが指を指す。
「ありがとう。このくらいでいいかな?」
『そうですね』
私とカシアが選んだのは、カシューナッツとアーモンド、ドライクランベリーの3つだ。
「カネル、選んだよ」
『じゃあ、次はナッツ類を細かく砕いてちょうだい』
ナッツ類を砕くために袋に入れて上から麺棒で叩いて細かく砕いた。
『レイラ様はオートミールとハチミツを大さじ5とナッツ類とドライクランベリーを混ぜてちょうだい』
「はーい」
『ニッキとカシアは、オーブン用の天板にクッキングシートを敷いてちょうだい』
『はーい』
『わかりました』
私が材料を全部混ぜるとクッキングシートの上に広げていれる。
『出来たら、混ぜた材料の上にクッキングシートを1枚敷いて麺棒で平らにしてね。少しギュッと押し込むくらいでいいわよ』
カネルに言われた通り、ギュッギュッと天板のなかに材料を押し込みながら麺棒で縦横に平らにしていく。
『それくらいで良いわね。そしたら、オーブンに入れて180℃で10分~15分焼くわよ。端が少し焦げるくらいが丁度いい目安よ』
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[シリアルバーの材料] 8~10本
オートミール 200g
ナッツ類&ドライフルーツ 150g
ハチミツ 大さじ4~6杯
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火傷しないように気を付けてオーブンに入れる。ニッキとカシアと三人でオーブンの前で焼けるのを待っている。少しするといい匂いがしてきた。
『いい匂いしてきたね』
「うん。まだかな」
『まだ、端が焼けてこないのでもう少しでしょうか』
そんな3人をみてカネルとディザが笑っている。
『3人ともあんなにオーブンの前にかじりついて』
「レイラが楽しそうで良かったよ。カネル、ありがとう」
『いやですよ、世界樹様。これくらいの事でお礼を言われても困ります』
「レイラにとっては、とても幸せなことなんだよ。これからも頼むね」
ディザがとても優しい顔でレイラのことを話す姿を見てカネルも頷く。
『私に出来ることでしたら、いつでも仰ってね』
そんな話をしていたら、レイラが声をあげた。
「カネル、端っこが焦げてきたよ」
『はいはい。今見ますね』
カネルがオーブンの中を覗いて
『良い案配ですね。出すのは危ないので私が出しますよ』
そう言って、私達を少し下がらせるとカネルがフワリと手をかざす。すると、オーブンが勝手に開いて熱々の天板が出てきた。
「えっ、これって魔法なの?」
『そうだよ。母さんが今使っているのは風魔法だよ』
カネルの魔法に驚いているとニッキが説明してくれる。体の小さな妖精は、魔法を駆使してお菓子作りをしているみたい。
『さあ、次は少し冷ましますよ。ニッキとカシア、風魔法で冷ましてちょうだい』
『はーい』
『ニッキ、風はそよ風ですよ。強くしてはダメですよ』
『わかってるよ』
ニッキとカシアは、そんなことを言いながらシリアルを冷ましていく。3分程するとシリアルが冷えたようだ。
『さあ、取り出して切り分けますよ』
カネルがフワリと浮かせてキッチンの台の上に乗せるとサクサクッとカットしていく。あれも風魔法なんだそうだ。
『では、早速味見ですよ』
カネルが皆の口の中に一口シリアルバーを入れてくれる。
『凄いザクザクしてる』
「甘くて美味しい」
『クランベリーの酸味が良いアクセントになっています』
上手に出来て大満足。三人ともニッコリ笑って「やったね」と喜びあった。
いつも、読んでくださってありがとうございます。
こらからも宜しくお願いします。
カネルは、シナモンのフランス語。
ニッキは、肉桂〔ニッケイ〕の音変化。
カシアは、シナニッケイの樹皮から作られるシナモンパウダーの事。
三人ともシナモンから名前をつけてみました。




