24 妖精の誕生
世界樹までは意外と近かったけど小道を歩いて帰る途中でハーブが沢山ある場所をディザが見つけたので、少し摘んでいくことにした。
「まず、ハーブティ用にミントと…レモングラスとローズマリーもあった。それから、タイムとセージもある」
とディザが楽しそうにハーブを摘んでいく。私の側には、ラベンダーやカモミールの花が咲いていたので少し摘んでおいた。レモンバーベナやディルやチャービル等々、とても豊富にハーブが育っている。
「これくらいで良いかな。レイラはラベンダーを摘んだの?凄くいい香りがするね」
と近づいて来て手を繋ぐ。ディザからも爽やかなハーブの匂いがしている。二人でハーブを見せ合いながら世界樹の家まで歩いて帰るのを後ろからアイテール様が楽しそうに見ている。ハーブは一旦、キッチンの水差しに挿して後で使うことにした。
ディザが私の手を引いて2階へ行くと二人でベッドに潜り込む。天蓋から垂れ下がっている薄い緑と黄色のレースカーテンを引くと、明るい日差しを遮ってとても寝心地の良い空間が出来上がった。
「夕飯まで、お昼寝するんだよ。後で起こしに来るからね」
と言って、アイテール様がおでこにキスをしてくれると、途端に眠くなって私はスヤスヤとお昼寝を始めてしまった。
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「レイラ、ごはん出来たよ」
と言う声に、目を擦るとアイテール様がお布団の中から起こして抱っこしてくれる。
「ほら、そんなに目を擦ると赤くなっちゃうよ」
そう言って目元を優しく撫でてくれる。
「もう、夕飯の時間なの?」
「そうだよ。見てごらん、外はもう暗くなっちゃったよ。ご飯を食べて泉に行くんでしょ?」
と言われて、パチッと眼が覚める。クスクス笑いながら階段を降りていくアイテール様が「目が覚めたかな?」と頭を撫でてくれる。
一階へ降りるとディザが夕食をダイニングテーブルに並べているところだった。
「レイラ、よく寝ていたね」
そう言いながら椅子に座らせてもらう。今夜のメニューは、ほうれん草とキノコのキッシュとクリームシチュー、ピートン豬のグリル焼きだった。
ピートン豬は、3メートル程の魔物だが草食で大人しい性格をしている。臭みがなくジューシーな為、一般的なお肉として牧場で育てられている魔物なんだそうだ。
今日のグリル焼きもジューシーで柔らかくてとても美味しかった。豚カツにしても美味しそうだよね。今度、作ってみようかな。
夕食の片付けをして、外へ出ると辺りは暗くなっており綺麗な月が3つ輝いている。ここが異世界だと嫌でも実感させられてしまう。
「レイラ、こっちだよ」
ディザに手を引かれて行ったのは、玄関ポーチから泉まで延びているウッドデッキだった。どうやら、私が寝ている間に作ったらしい。
泉の手前まで幅1メートル程のスロープになっており、泉の上は幅4メートル奥行き10メートル程のウッドデッキが作られている。天井部分はパーゴラになっており布地を掛けて日除けが出来るようになっていた。今日は、泉に向かって大きめのソファが置いてあってクッションや膝掛けが用意されている。足元にはキャンドルが灯ってフワリとオレンジ色の空間が出来上がっていた。
「ふおぉ、ディザ凄いね。憧れのお洒落グランピングみたい」
「グランピングが何か分からないけど、喜んでもらえたようで良かったよ」
ディザが満足気に頷いている。クッションの位置を調整して私をソファの真ん中に座らせると暖かそうな膝掛けをかけてくれる。
「ディザ、ありがとう」
「温度調整機能が有るとは言え、砂漠の夜は冷えるからね」
そう言って、自分も膝掛けをかける。砂漠の昼は太陽を遮るものが無いから灼熱地獄だけど、夜は逆に熱を蓄えるものが何もないから冷えてくる。
「冷えないように温かいジンジャーはちみつレモンだよ。熱いから気を付けて」
アイテール様からマグカップを渡される。なんとも至れり尽くせり状態です。
「アイルパパ、ありがとう」
「どういたしまして、それで。グランピングって何だったの」
隣に座ってホットワインを飲み始めたアイテール様が聞いてくる。




