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そこには、アリウムと言う紫色の小さな花が球体に咲く花の上で妖精さんが眠っていた。動いていたのは薄紫で半透明の綺麗な羽根だった。
「どうしたの?」
頭の上からアイテール様の声がしてビクッとしてしまう。目の前で眠っていた妖精さんも驚いて目を覚ましたようだ。私と眼が合って固まっている。
「ごめんね。起こしちゃったみたい」
私が声をかけると妖精さんは、花の上に座り直して
『こんにちは、アイテール様。小さなお姫様』
と挨拶してくれた。薄い紫の長い髪にアメジストのような瞳の妖精さんは、昨日会ったお菓子作りが得意なカネルより少し小さく見える。
「こんにちは、花の妖精。今日、生まれたばかりなのかな?」
『そう。この花畑で生まれたの』
妖精さんは、そう言うと羽根を動かしてフワリと浮くと辺りを見回して。
『あっ。みんな、世界樹様の所にいる』
と言って、ディザの方に飛んでいってしまった。精霊さんはみんなディザが大好きなのかな。
「はい、レイラの花冠」
そう言って、アイテール様が花冠を見せてくれる。濃い紫のラナンキュラスや赤いダリヤ、ブルーのアネモネが沢山編んである花冠だ。
「凄く綺麗、ありがとう。パパ」
そう言うと「どういたしまして」と微笑みながら頭に乗せてくれる。
「レイラ、とっても可愛いよ。ディザの分はもう出来そう?」
「あともう少しなの」
そう言うと、アイテール様がまたシロツメクサを摘んで渡してくれる。さっき摘もうとしていたトルコキキョウも編み混んでせっせと花冠を完成させる。
「出来た!」
花冠をアイテール様に見せると「良くできたね」と誉めてくれる。嬉しくてニコニコしてしまうな。
「じゃあ、ディザに見せに行こう」
そう言われると、5歳児の頭のなかでは「ヨーイ、ドン」の掛け声がかかって走り出してしまう。途中からは、何が面白いのか分からないけどキャッキャと笑いながらディザに向かって走っていく。笑いながら走るから隣をゆっくり歩くアイテール様と大して変わらないスピードでひたすら走ってディザを目指す。
笑い声に気づいたディザが振り向いて手を広げて待っていてくれる。「ゴール」とばかりにディザに抱きつくと、そのまま抱き上げてくれてくれる。
「はい、ディザの分」
と言って花冠を頭に乗せると
「ありがとう。みんなお揃いだね」
と言ってフワッと笑う姿は花冠のせいで美少女のようだ。つられて私もニコリと笑い返す。それを見たアイテール様が「そうしていると、二人ともお人形さんみたいだな」と呟いていた。
「レイラ、ガゼボ出来たんだけど、どうかな?」
と言って、ディザがクルリと後ろを向いて出来上がったガゼボを見せてくれる。白い丸柱に屋根の西洋風のガゼボは半円状にベンチが2つあり真ん中が丸いテーブルになっている。ベンチに沢山クッションが置いてあって、白い柱には黄色い蔓バラが咲いている。妖精たちがバラに座ってお喋りしていて楽しそう。
「ディザ凄いね。とっても素敵だよ」
ディザにそう言えば、満面の笑みで答えてくれる。
「良かった。他の場所にも作ろうと思っていてね。今度はタイル貼りの物もいいかな。ソファを用意してレイラがお昼寝出来る場所を作ろう」
既に、次のプランを考え始めてしまったみたいだけど。楽しそうだから良いかなと思って聞いていたら
「ディザ、今はそのくらいにして。ランチにしよう」
良くなかったみたいでアイテール様が途中でディザを止めてくれた。
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