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部屋を一通り見てリビングに戻ってくるとテーブルの上にアフタヌーンティの用意がされていた。
ティーカップとティーポットには良い香りの紅茶がなみなみと入っている。そして、焼き菓子やミニケーキ、サンドイッチが乗ったティースタンドまである。
「丁度、喉が乾いていたんだ。一休みしよう」
アイテール様は、ソファへ座ると私達にも座るように勧めてくる。ディザと二人でアイテール様と向かい合わせにあるソファに座るとディザが皆の分の紅茶をいれてくれた。
「この紅茶は誰が用意してくれたの?」
アイテール様もディザも当たり前のように紅茶を飲んでいるけど。
「あぁ、そうか。レイラの世界には、魔法も妖精も居ないからビックリしたんだね。これは、妖精が用意してくれたんだよ。」
妖精が用意してくれるとはファンタジーな。と驚く私にアイテール様が説明してくれた内容はこんな感じだった。
世界樹には、お世話をしてくれる家事妖精が居るそうだ。家の掃除や洗濯、食事の準備が主な仕事らしい。夜中に靴を作ってくれる小人さん的なアレか。その内、姿を見せてくれるといいな。
ちなみにディザは、お爺ちゃんだった頃は料理好きだったらしく、自分でも料理を作るつもりらしい。私も前世は自炊生活をしていたから料理を作ることは出来るが今の5歳児の体では難しいのでディザと一緒に作る約束をさせられた。5歳児に包丁持たせたり火を使わせたりは危ないから、それは誰かと一緒がいいよね。
話を聞きながらケーキをいただいていたが、一口食べて美味しさにビックリした。ベリー風味のチーズケーキの上に砂糖漬けの小さな花が飾ってある。
「このケーキ美味しい」
そう言った瞬間、ディザの周りにポンッといくつかの光が現れた。驚いて隣のディザを見ると掌の上に今、話していた妖精さんが居た。
「妖精さん…初めて見た」
妖精さんは、10センチくらいで背中に薄い緑色の半透明な羽が付いていて、花飾りを付けた髪の毛はマロンブラウンのボブ。耳は少し尖っている。翠の花のようなワンピースに白いエプロンした女性の妖精だった。
所謂、地球ではピクシーと呼ばれている空想の生き物が目の前に居る。
『私のケーキを誉めてくれてありがとう。とても、嬉しいわ』
そう言って私の前にフワリと飛んできた。初めて見る妖精さんを近くで観察していると。
『僕の作ったサンドイッチは美味しかった?』
『僕がいれた紅茶は美味しかったですか?』
ソックリな男の子の妖精二人が突然、目の前に現れた。二人は私の顔の近くで『どうだった』と騒いでいる。
ビックリしてフリーズしていたら妖精のお母さんが二人を止めてくれた。
『あらあら、ごめんなさいね。息子達が愛し子様に会えるのが嬉しくて頑張って準備したんですよ』