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今日も会いに来てくれたジェラルドを連れて【砂漠の世界樹】の周りを案内している。
泉の精霊エレインや森の精霊ファウヌスを紹介した後に炭酸水の泉を見たり、先日新しくできてしまった池の様子を見に行ったりした。
今は、お花畑にあるガゼボで紅茶を飲みながら休憩をして居る。花の妖精達がせっせと花を摘んできてはガゼボを飾ってくれてとても可愛い。
「レイラに話しておくことがある」
ジェラルドが改まって膝に乗せた私を見る。
「来週から仕事に就く事になったから毎日は、会いに来るのが難しくなる」
「お仕事ってどんなことをするの?」
ジェラルドは【獣王国】の第3王子だけど、どんな仕事をするのかな?
「一番上の兄上は、王太子として父上の仕事を手伝っているんだ。竜族は長命だから、当分代替わりは無いと思うけどね。二番目の兄上は、主に外交の仕事をしている。これから【魔国】との貿易が始まるから忙しくなるだろうね。それで、父上から国を護る騎士団のまとめ役を頼まれている」
それは、騎士団長で合っているのかな?
「ジェラルド…それって危険じゃないの?」
戦争の無い国で育った私にはちょっと理解するのが難しい職業とも言える。
「全く危険がないとは言いきれないけども【獣王国】は今現在、他国との争いも無ければ国内も安定しているからそれほど心配はいらないと思う。それに竜族の身体能力は群を抜いて高いし、竜化したときの強さは他を寄せ付けない」
私の髪の毛を撫でながらそう教えてくれる。
「まぁ、基本は王族の護衛とか町の保安、国境の警備とかのまとめ役だから机仕事が多そうなんだよね」
体を動かすのが好きなジェラルドには少し辛いかもね。でも、私としてはそれを聞いて安心した。
「それに長年捕まっていたからな、体が鈍って1から鍛え直さなきゃいけないから当分の間は実戦にも出る予定はないよ」
きっと私が心配したからちゃんと話してくれるんだろうね。
「あまり無理しないでね。あと、ミレイユお義母様に会いに行くときにはジェラルドの所にも寄っていいかな?」
そう、ミレイユお義母様と先日お会いして週に一度お茶会をしながら色々教えて貰う約束をしたんだよね。「母親だと思って甘えてね」と言われて嬉しかったのを思い出す。
「ああ、母上がとても楽しみにしているけど。俺の所にも忘れずに会いに来てほしいな。それから、俺の事はジルと呼んで欲しいかな。近しい家族だけの呼び名なんだ」
「ジル?」
試しに呼んでみたら蕩けるような笑みで私の事を見るから、なんだか恥ずかしくなって頬っぺが赤くなってしまった。
「フフフッ。可愛いな」
そう言って私の頬っぺを指の先で撫でるジルの大人の色気に当てられてしまう。
「レイラ。ゆっくり大人になって、可愛い姿を俺に沢山見せて」
小さく囁くジルにギュウっと抱きついて赤くなった顔を隠す。
「私は早く大人になりたい。ジルと同じ景色を早く見たい」
今の私には家族のような愛情しかジルに向けられない。早く大人になってジルと同じ目線で彼を愛したい。
「大丈夫。いつまでも待っているから焦らないで、今の生活も楽しんで欲しいな」
ジルは私に優しすぎると思うが、彼に言わせれば番至上主義の竜族らしく私の幸せが最優先らしい。しかも、幼い頃から一緒に過ごせることにこの上ない幸福感を感じていると言うことだからいいのか?
「じゃあ、お言葉に甘えて今の生活を満喫することにする」
ジルの顔を見上げてそう答えれば嬉しそうに頷いてくれた。
ーーーーー
ーこの世界に来て早くも半年が過ぎた。
前世では独りで生きていくと決めていた。だけど、本当は親の愛情に飢えていて独りは寂しくて仕方なかった。
そんな私をこの世界に連れて来てくれたアイテール様には、本当に感謝している。
この世界には、優しいアイルパパが居て。いつも側に居てくれるディザが居て、いままで独りぼっちだった私に家族の愛情を与えてくれる。
契約精霊であるヴァンとルミエールは、契約だけではなく強い絆で結ばれている。ちょっとやそっとじゃ離れない信頼と言う安心感がある。
そして、私の番であるジェラルド。彼は、誰よりも私の事を愛してくれるだろう。前世では避けていた人生の伴侶を得る事がどんなに幸せか、これから時間をかけて味わっていきたい。
この世界に来て人の温もりと愛情をたっぷり注がれて今の私は幸せ一杯だ。まだまだ、世界樹の世代交代と言うお仕事が沢山残っているけれどそれも楽しみにしている。
体は5歳児だから成人までざっと150年くらいある。更に私の寿命は、万単位で長いのだからこのスウェンターレと言う世界を満喫したいと思う。
ーENDー
本日で完結となります。
ふと、小説を書いてみようと思い立って書き始めた小説ですが完結まで書き上げる事ができました。
これも、読者の皆様が居ると感じることができたからこそだと思っています。
最初の構想とは全くの別物になってしまった為、ジェラルドの溺愛ぶりを全く書けていないのでいつかチャレンジしたいと思っておりますが続編を書くかは今のところ未定です。
また、時間が出来たら書いてみたいと思っています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。