01【転生】
私は、仕事が終わり車で家に向かっていたはずだった。
信号が変わってアクセルを踏み交差点に入った直後、横から迫ってくるヘッドライトに驚いてハンドルを切った所までは覚えている。
『あれ…生きてる…』
記憶を思い返してみても自分の置かれた状況が全くわからない。
『痛いところも無いし…』
と、そこまで考えて気づいた
『体の感覚が無い…』
体の感覚は全く無いが視線は宙に浮いているような感じがする。
「ごめんね。君の体を持ってくることは出来なかったんだ」
聞こえた声に驚いて見上げると、美形男子がこちらを見ていた。優しそうな瞳は金色でサラサラの髪の毛はプラチナゴールドだ。スッと通った鼻筋に唇は薄めだがふんわりと微笑んでいて美形だがホッと落ち着く感じだ。身長は180センチ以上あるだろうか、スラッとした足は長くギリシャ神話の神様が着るような白い布を巻いたような衣装を着ている。
「魂だけは、間に合ったんだけどね」
困ったようにこちらを見下ろす美形男子の話によると、私はやはり交通事故で亡くなってしまったらしい。
34歳にもなって結婚する予定も無く仕事ばかりしてきた。生憎、両親は私が小さい頃に亡くなっているので悲しむ人もそんなに居ない。まぁ、仕事の仲間は悲しんでくれるだろうが、仕事の引き継ぎが出来無かったことは申し訳ないと思う。
ちなみに、この美形男子はスウェンターレと言う世界の神様でアイテールと言う名前らしい。まだ、二十歳位の青年に見える。そしてアイテール様の世界に私を連れていくつもりらしい。
「新しい体をあげるから私の世界でちょっと手伝って欲しいことがあるんだ」
微笑んで言っているが
『手伝って欲しいことって…怪しさ満点なんですけど…』
あっと思ったときには声を上げて笑われてしまった。
(心で思った事は聞こえてしまうようです…)
「あはは、実は私の世界では今、世界樹の世代交代の時季なんだけどそのお手伝いをして欲しいんだ。それが出来るのが私から使わされた世界樹の愛し子である必要があってね。君に世界樹の愛し子としてお仕事をして貰いたいと言う訳なんだ」
『なんか大変そう』
(思ったことが聞こえてしまうと言うのは善し悪しです…)
「勿論、私も手伝うし仕事の内容は…そうだね、忘れたり間違えないように魂に刻んでおくね」
ふわりと光に包まれると知識が流れ込んできた。
「これで、お仕事の内容が分かったかな?」
『えっと…。時間は掛かりそうですが何とかなりそうです』
そう答えるとアイテール様は、また楽しそうに笑った。
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