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アイドルバスター2 覇道戦線  作者: おでん信用金庫
9/20

#9 sparkle moon①-イキかけなハイ!-

前回までのあらすじ


ソエルがデレた



片桐「・・・さて。本題に入ろうか、ルナ」


ルナ「う、うん」


片桐「お前は自分を()めた中野に重傷を加えた。母さんに心配をかけさせた報いを受けさせるために。信念こそ立派だが、やっていることは立派な犯罪だ。しかし」


ルナ「・・・あっ、そうだ。1つ聞いていい?」


片桐「ん、なんだ?」


ルナ「お父さんは、どうして私が中野を襲った犯人だと思ったの?ソエル(いわ)く、証拠はなに1つ残していなかったらしいんだけど・・・?」


片桐「あぁ、証拠はなに一つない。完璧な犯行だった」


ルナ「だよね。じゃあ、どうして・・・」


片桐「()()()()だ」


ルナ「え」


片桐「・・・というのは半分冗談だ。だが犯人への手がかりはなくても、8割方ルナが犯人だと思える根拠はあった。しかも2つ」


ルナ「2つも?」


片桐「あぁ。1つ目の根拠は被害者・中野だ。被害者の素性を調べたが、裏社会との繋がりがある男。そしてルナのアイドル人生を奪ったと思われる男だった」


ルナ「どうして中野が、私のアイドル人生を奪ったって思ったの?」


片桐「先月、未成年飲酒の疑いで署に送られて警察から詰問されていた時、お前は『中野という男に酒を飲まされた』と言っていたらしいな。大人は誰も信じてくれなかったろうが、俺はお前が嘘を言っているとは思えない。だから俺は、中野という男は『ルナに大きな傷を与えた男』という認識をもった」


ルナ「・・・」


片桐「まぁそれに関しては俺がもっと早く動いていれば、お前の飲酒疑惑などという汚名を晴らすこともできたんだが、すまなかった・・・」


ルナ「ううん気にしないで。それで、2つ目の根拠は?」


片桐「そうだったな。2つ目の根拠は、犯人の手がかりが何1つないことだ」


ルナ「???」


片桐「入院中の被害者を、警察に成りすまして病室に忍び込み、更に襲う・・・俺が知る限り、ここまで目立った犯行をしておきながら何一つ証拠を残さない犯人なんて聞いたことがない。刑事の俺が言うのもなんだが、心から尊敬に値する犯人だと思ったよ。それでな・・・」


ルナ「それで・・・?」


片桐「怒らないで聞いてくれ。その()()()()()()がルナだったらいいな・・・って思ったんだ」


ルナ「っ!!」


片桐「これがお前を犯人だと推定するに至った2つの根拠だ。まぁ、2つ目は根拠っていうよりは『願望』みたいなものなんだが・・・いかんせん、気付いたらお前に会いにきてしまったよ」


ルナ「・・・」


片桐「・・・すまない。結果的に俺の読みは正しかったとはいえ、明確な根拠もないのに娘を疑うというのは父親として失格だ」


ルナ「・・・ほんとだよ。もし私が犯人じゃなかったら、私の心はどれだけ傷つくことになると思ってるの。私が犯人だったらいいな、じゃないよ。ほんと、バカじゃないの」


片桐「・・・」


ルナ「でも、ちょっと安心した」


片桐「っ、どうして?」


ルナ「私が後先考えずにバカみたいに行動するの、お父さん譲りなんだなぁって思って。この親にしてこの子あり・・・ってやつ、だよね。それがなんか嬉しくて」


片桐「ルナ・・・」


ルナ「あ、ごめんね。話の腰を折っちゃって。でも、なんかこれで清々しく出頭、できるよ・・・」


片桐「いいや、その必要はない」


ルナ「え?」


片桐「話を戻そう。お前がやったことは立派な犯罪だ。しかし、俺はお前の罪を許し、隠蔽する。そのために、お前に会いに来た」


ルナ「・・・なに言ってるのお父さん、そんなことしたら」


片桐「わかってる、バレたら俺の刑事人生は終わりだ。でもな、どのみち俺の刑事人生はもうすぐ終わるんだ」


ルナ「ど、どういうこと?」


片桐「・・・肺を患ってな。医者が言うには、長くてあと数ヶ月だそうだ」


ルナ「っっっ!!!?」


片桐「いや~、やっぱ早い内にタバコとかやめとくべきだったなァ。出費も増えるし健康も損なうし、なんも良いことねーもんなぁタバコ。みんなもやめようタバコ!」


ルナ「嘘・・・だよね?」


片桐「なんで今嘘つく必要がある。本当だよ、診断書も貰ったから今度見せようか?」


ルナ「そんな・・・」


片桐「ごめんなルナ。久々に会ったってのに、俺が死ぬ話なんて聞きたくなかったよな」


ルナ「・・・うん。でも、たとえお父さんの先が長くないからって、それは私の罪を隠蔽する理由にならないよ!」


片桐「なんだルナさっきから、お前捕まりたいのか。()()()()の癖があるのか?」


ルナ「そういうことじゃない!!病気なら入院してちゃんと治療してもらうとか、そうじゃないにしても最期まで正しい刑事として生きなよ!!最後の最後で、これまでずっと続けてきた刑事として道を踏み外すなんて・・・それでいいの!!?」


片桐「・・・たしかに、俺の人生は刑事としては正しかったが、父親としては失格だった。母さんを大事にしてやれなかったことも、お前を置き去りにしたこともそうだ。だから父親としてお前を守るためなら、刑事として間違ったって構いやしねぇ」


ルナ「でも・・・!!」


片桐「そうか。そこまでお前は、俺に正しく生きていてほしいのか」


ルナ「そうだよ。最後まで胸張って、刑事でいなよ!」


片桐「・・・むよ」


ルナ「っ!?」


片桐「頼むよ、クソったれな父親の最期のわがままなんだ・・・最後は父親らしく娘を守らせてくれよ・・・」


ルナ「・・・」


片桐「俺はこれまで、お前になにもしてやれなかった・・・刑事としての仕事の忙しさに追われて、母さんすら悲しませる始末・・・最低だ、最低なんだ俺は!」


片桐「刑事として胸を張って死ぬだァ・・・冗談じゃねぇ!!胸張ってきた結果が今なんだ・・・その結果、お前たちを苦しめてきたんだ。だから、最後の最後だけでいい・・・最後だけでも父親らしく生きたいんだ・・・!!!」


ルナ「・・・」


片桐「ルナ、わかってく


ルナ「うるせぇ!!!(胸ぐらを掴む)」


片桐「っ!?」


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