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アイドルバスター2 覇道戦線  作者: おでん信用金庫
8/20

#8 最高から2番目の離婚

前回までのあらすじ


禅問答なう



6年前



ルナ「クソが、クソがぁ!![男を殴る]」


男「うぐぇ・・・助けて・・・」


ルナ「てめぇ、自分が何したか分かってんだろうな・・・あァ!!?」


男「さ、さぁ知らねぇよ・・・!」


ルナ「お前が持ってるその財布・・・俺の母さんのモンだ。さっき誰かに盗られたって言ってた母さんの財布だ」


男「そ、そんなの知らなかったんだ・・・悪かった、許してくれ!」


ルナ「いいや、ダメだね」


男「!?」


ルナ「てめぇのせいで、母さんがどれだけ傷ついたと思っていやがる・・・、まァこんなこと言ったところで、てめぇはそんなことも『知らなかった』で済ませるんだろうがな・・・!![拳を振り上げる]」


男「ひぃっ!!」


真理奈「なにをしているの、ルナっっ!!?」


ルナ「!!!」


真理奈「馬乗りになって・・・まさかその人を殴ろうとしているの!?」


ルナ「まっ、まさか!してない・・・してないよ!」


真理奈「そ、そうよね。ルナがそんなことするわけないもの・・・でもその人の顔、どうしてそんなに傷だらけなの・・・」


ルナ(・・・。)


ルナ「おい、『財布を届けにいこうとしたら転んで怪我した』って言え(小声)」


男「!」


ルナ「さっさとしろ」


男「・・・すみません。うっかり転んでしまったんですよ。あなたに財布を届けようとしている最中にね(財布を渡す)」


真理奈「っ、それは私の財布・・・どうしてあなたが!?」


男「・・・さっき道端で拾ったんです。失礼ながら中を拝見して、免許証の住所を手がかりにお伺いしようと思っていたんです」


真理奈「そ、そうでしたか・・・ありがとうございます!!何とお礼を言ったらよいか」


男「いいんですよ。では僕はこれで・・・」


真理奈「えっ、待って下さい!せめてその怪我の手当だけでも・・・」


男「いやっ、大丈夫です!さよならっ!!![逃走]」


真理奈「・・・変なの。でも、いい人だったわね」


ルナ「そうだね」


真理奈「ところでルナ、どうしてあの人の上に乗っかっていたの?」


ルナ「っ、あぁ。顔の傷を見ていたの。ちょっと腫れてるくらいで、大したことなかったよ・・・」


真理奈「・・・」


ルナ「・・・お母さん?」


真理奈「ううん。ルナは本当に優しい子だなぁ、って思ってね」


ルナ「そ、そうかな?」


真理奈「そうよ・・・それなのに、ごめんねルナ(落涙)」


ルナ「っ、どうしたの!?」


真理奈「さっき私は疑ってしまった。あなたが、あの男の人を殴っているって。ルナは優しい子なのに、ルナがそんなことするわけないって分かっているのに・・・ほんと、愚かな母親よ・・・」


ルナ「そ、そんなことないっ!愚かだなんて・・・お母さんが愚かなわけないよ!!」


真理奈「っ!」


ルナ「優しくて、いつも私のことを考えてくれる・・・そんなお母さんが、愚かなはずがないもん・・・!」


真理奈「ありがとう、ルナ・・・」


ルナ「うん・・・」


ルナ(お母さんは優しい人。だからこそ、悪い人に利用されてしまう・・・誰にだって、お母さんを傷つけさせやしない。お母さんは、私が守るんだ・・・!)



―――――


―――






ルナ「そうだ。私はお母さんのために、復讐を始めたんだ。私を嵌め、お母さんを傷つけた報いを受けさせるために・・・!」


片桐「正解だ」


ルナ「っ、正解って・・・どうしてお父さんが正解だって言い切れるの?」


片桐「それが、母さんと離婚した理由だからだ」


ルナ「えっ・・・?」


片桐「俺は母さんを傷つけないために。お前を傷つけないために離婚したんだ。だが気を悪くしないでくれ、お前が悪いんじゃない」


ソエル<・・・!>


ルナ「私たちのために、離婚した・・・意味が分からないよ」


片桐「あぁ。分からなくていい。俺はそんな話をしに来たんじゃないからな」


ルナ「・・・」


ソエル「いいや、話しやがれ・・・!」


片桐「っ、その口調・・・また入れ替わったのか。たしか、ソエルだったっけ?」


ソエル「なにが母さんのためだ、何が俺のためだ・・・綺麗事ぬかして、自分のしたことを美談にしようとでもしてんのか!?」


片桐「いいや。言ったところで理解されないだろうから、あえて言わないだけだ。今は時間もないしな。ま、いずれ話すさ」


ソエル「逃げんのか・・・?」


片桐「逃げるだなんて言ってない」


ソエル「じゃあ今ここで言え!」


片桐「・・・なるほど。分かった気がする。お前が俺に抱く妙に強い嫌悪感の正体は、母さんと離婚したことにあったのか」


ソエル「あァそうだ。母さんが言ってた。『離婚は父さんから切り出した』ってな・・・どうせ他に女でも出来たから、母さんを捨てたんだろうが!」


片桐「はっはっは、なかなかユニークで凡夫な発想をするんだな、お前は」


ソエル「なにがおかしい!?」


片桐「いやいやすまない。とんでもない誤解をしているから、面白くてつい」


ソエル「じゃあ、なんだ。なんで母さんを捨てた!?」


片桐「・・・俺は刑事だ。この世から悪が消えない限り、俺の仕事は終わらない。とくにお前が小さかった頃はとくに忙しくてな、家に帰ることも少なかった」


ソエル「それで・・・?」


片桐「それだけだ。俺は家に帰ることなく、母さんに寂しい思いをさせていた。だから別れた」


ソエル「あ?」


片桐「長い間、お前らに寂しい思いをさせるくらいなら、いっそのこと別れたほうが楽なんじゃないかと思ったんだ」


ソエル「・・・意味がわかんねぇ」


片桐「だ~から言ったでしょ。理解されないって。だがこれだけは分かってくれ。俺はお前たちを捨てたんじゃない。むしろお前たちのことを愛していた。それは、今も変わらない」


ソエル「ケッ、戯れ言を・・・」


片桐「信じられんか?」


ソエル「あたりめーだろ」


片桐「そうか・・・じゃああんまり言いたくないんだけどな、母さんの通帳に毎月10万振り込まれてるだろ」


ソエル「・・・あァ、あの意味不明な入金か。あるけど・・・なんでお前が知ってる?」


片桐「あれ、俺だから」


ソエル「は?」


片桐「俺は毎月、お前たちの家に金を入れている。ささやかな金額だがな」


ソエル「!」


片桐「それを愛と呼んでいいのか分からん。しかし現状、それが1番愛に近い行為だと俺は思ってるんだが・・・ダメか?」


ソエル「・・・ダメだね」


片桐「ダメでした」


ソエル「そんなモンは愛なんて呼ばねぇ。バカも休み休み言うんだな」


片桐「・・・そうだな。やっぱ理解されるわけないよなぁ」


ソエル「たりめーだ。金で愛を得ようなんて虫が良すぎる。お前の愛を理解してほしけりゃ、行動で示してみろ・・・クソ親父」


片桐「!」


ソエル「お前は俺たちを捨てたサイテーなクズ野郎だと思ってたが、どうやらそうじゃなかったみてぇだ・・・お前の話を全て信じたわけじゃねぇが、嘘を言ってるとも思えねぇ。だからあとは、お前自身が証明しろ」


片桐「ソエル・・・!」


ソエル「さぁ話せよ、続きを。ルナが通り魔であることを突き止めた・・・それで終わりなんかじゃねぇだろ。あるんだろ、続き?」


片桐「あ、あぁ」


ソエル「じゃ、あとはルナ自身に任せるから、2人で好き勝手話しな。せいぜい、ルナを守ってやるんだな・・・」


片桐「待て」


ソエル「・・・なんだ?」


片桐「ありがとう、ソエル。今までルナを・・・母さんを守ってきてくれて」


ソエル「ケッ、そんなつもり微塵もねぇよ。俺はただ、自分の存在を守るために行動してきただけだ」


片桐「ふっ、そうだな。これからもよろしく頼む、ソエル」


ソエル「・・・うるせぇよ」


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