#6 distant moon③-赤外線はすごい-
前回までのあらすじ
犯人のネタバレ
嘉雅梨「どうだ~元気してたかルナ?」
ルナ「・・・あぁ、まぁな」
嘉雅梨「お前緑一色女学院なんだってな。どうだよ授業ついていけてるか?アタシなんっにもわかんねぇよ~」
ルナ「んん・・・」
嘉雅梨「つーかアタシのクラス全員真面目すぎてつまんねーんだけど!お前のクラスどう!?ヤベー奴いる!?」
ルナ「・・・」
ルナ(ちぃっ、一人でベラベラ喋る女だな。さっさと帰りてぇが、こいつを振り払うのはとてつもなくダルい気がする。仕方ねぇ・・・ルナ、ここは任せたぜ―――)
ルナ「」
嘉雅梨「ん、どしたルナ?聞いてんのか、おい?」
ルナ「はっ!?」
嘉雅梨「っ!」
ルナ「・・・これは、私の身体?あっ、ちゃんと動く!うん、動く動く!自分の思うように!」
嘉雅梨「オイ、大丈夫かルナ?」
ルナ「へ・・・あっ、嘉雅梨さん?」
嘉雅梨「は?」
ルナ「嘉雅梨さんだ、久しぶり!少年院ぶりだね、元気だった!?」
嘉雅梨「お、おう、元気だったけど・・・」
ルナ「あれ・・・どうかした?」
嘉雅梨「いや、なんか変だなって」
ルナ「えっ?」
嘉雅梨「アタシら再会してから何分も経ってるのに、このタイミングで再会を喜ぶリアクションしてるから、よくわかんなくてよ・・・」
ルナ「!」
ルナ(そうか、私が目覚める前にソエルが既に再会してたのか・・・)
ソエル<そういうことだ。適当に話切り上げてさっさと帰ろうぜ>
ルナ(・・・。)
嘉雅梨「・・・大丈夫か、ルナ?」
ルナ「え、あっ、うん!大丈夫だよ!?じゃ、またね嘉雅梨さん・・・」
嘉雅梨「あ、あぁ」
ルナ「・・・」
嘉雅梨「あ、待って!」
ルナ「なに?」
嘉雅梨「せっかく会えたんだ。連絡先くらい交換しようぜ」
ルナ「あ、うん!そうだね!」
嘉雅梨「よし。じゃあ『赤外線』で」
ルナ「へ?」
嘉雅梨「ん、どうした?早く出せよ、ケータイ[ガラケーを構える]」
ルナ「えっ、ガラケーなの?」
嘉雅梨「『ガラケー』・・・?いや、ケータイだけど?」
ルナ「え、あっ、えぇ~あ、そういうことか。嘉雅梨さん、スマホとか知らないんだ?」
嘉雅梨「・・・スマホ!少年院の教官が言ってたやつか!なんだよ、お前もスマホ持ってんのかよ~!」
ルナ(この時代の高校生ほとんどスマホなんだけど・・・言わないでおこう)
嘉雅梨「まぁなんでもいいや。とにかく赤外線交換を・・・」
ルナ「嘉雅梨さん、ケータイ貸して?」
嘉雅梨「ん、ほい[譲渡]」
ルナ「・・・[メアド入力]」
嘉雅梨「なにしてんだ?」
ルナ「はい、私のメアド入れておいたから」
嘉雅梨「えっ、わざわざ手打ちしたのか?赤外線使えば楽に交換できたのに!遅れてるなぁルナ~!」
ルナ「はは、そうだね・・・」
ルナ(恐ろしい、これが『デジタルディバイド』・・・!)
ルナ「じゃ、またね・・・」
嘉雅梨「あぁ。そうだルナ、最後にもう一つ」
ルナ「ん?」
嘉雅梨「なんか悩んでるんだったら言えよ。アタシに協力できることがあれば協力するからさ」
ルナ「!」
嘉雅梨「じゃーな、ルナ!」
ルナ「・・・」
ルナ「ほんと、おせっかいだなぁ嘉雅梨さんは・・・」
ソエル<・・・>
ルナ「そう、ソエルの意識が100%になってたんだ」
ソエル<あぁ。おかげで不自由なく行動できたぜ>
ルナ「・・・行動って、なにしてたの?」
ソエル<中野が証言できないようにしてきた>
ルナ「中野って・・・昨日あなたが入院させた?」
ソエル<そう。そいつの病室に潜入して、喉と手潰してきたんだよ>
ルナ「な、なんてことを・・・!」
ソエル<おいおい、なんだその反応。お前に不利益をもたらす要因を、なに一つ証拠も残さず消してやったっていうのに。もっと喜べよ>
ルナ「でも、入院してる人をさらに怪我させるなんて・・・」
ソエル<・・・あのな、俺が動かなかったら中野が証言して、お前がサツから追われることになってたんだぞ?>
ルナ「そうだけど・・・」
ソエル(・・・。)
ソエル<やっぱりダメだ。今のお前に、この身体は任せられねぇ>
ルナ「うっ・・・!?」
ルナ「」
ルナ「・・・忘れてんのかもしれねぇが、1度でも俺の意識が100%になっちまった以上、この身体の決定権は俺にある。せいぜい寝てろ。今のお前は必要ない」
17:30
西覇王邸
ルナ(全ての元凶である343プロダクションを潰すには、まずは『音無ゆとり』から話を聞かなけりゃあいけねぇ。しかし、中野から聞き出そうにもアイツは何も知らないみたいだった。もっと情報を集めねぇと・・・)
ルナ「・・・っつーか、もう17時過ぎてんじゃねぇか。遅いな、母さん。いつもならもう帰ってきてる時間なのによ・・・」
「ガチャ[玄関が開く音]」
ルナ「お、帰ってきた。買い物が長引いた、ってところかね」
片桐「・・・いいや、寝てるよ。俺の車でな」
ルナ「っ!?」
片桐「あぁ安心しろ。乱暴な真似はしていない。ちょっと背後からクロロホルムをお見舞いしただけだ」
ルナ「て、てめぇは・・・!!」
片桐「はぁ・・・離婚して別れたとはいえ、娘から『てめぇ』呼ばわりされるなんてな・・・お父さん悲しいよ」
ルナ「うるせぇ、さっさと出て行け!ここはもうお前の帰って来ていい場所じゃねえ!!!」
片桐「分かってるよ。帰ってきたわけじゃない、ルナと話をしにきただけだ」
ルナ「あァそうかい。あいにく俺はお前と話すことなんて1つもないね・・・!」
片桐「俺もないよ。お前と話すことなんて」
ルナ「?」
片桐「言ったろ、俺はルナに用があるんだ。お前じゃない」
ルナ「・・・てめぇ、まさか」
片桐「引っ込んでくれねぇか。『もう1つの人格さん』・・・?」