#5 distant moon②-バタンキューポリスズ-
前回までのあらすじ
見事な死体蹴り
12:00
七対派出所
柊「佐藤!!!」
真水「・・・柊さん!」
柊「大丈夫か、怪我はないか?!」
真水「いえ、大丈夫です」
柊「よかった。早速ですまないが、何があったか教えてくれるか?」
真水「はい・・・」
1時間前
七対派出所
部長「はい、こちら七対派出所です。えぇ・・・はい・・・わかりました、すぐに向かいます[電話を切る]」
真水「・・・なんの電話だったんですか、部長」
部長「通報だよ。暴行現場を目撃しました、って」
真水「暴行・・・もしかして、夜中の事件と同一犯・・・?」
部長「かもしれんな。だから念のため現場に行ってくる。すまないが、留守を任せたぞ佐藤」
真水「わかりました。お気を付けて」
部長「うむ・・・[退出]」
真水「・・・」
真水「物騒だなぁ、最近・・・」
???「そうだな[背後から忍び寄る]」
真水「っ、誰!!?」
???「おっと振り向くな。振り向いたら首が切れるぜ[ナイフを突きつける]」
真水「ひぃっ・・・!」
???「くれぐれも騒ぐなよ。騒いだり抵抗したりした時点で殺す。分かったら黙って服をすべて脱げ」
真水「なに・・・痴漢なの、あなた?」
???「口動かす前に手を動かせや[ナイフをあてがう]」
真水「うっ・・・」
???「悪いがこっちは急ぐんでなァ。さっさとしてくれるか?」
真水「はい・・・」
真水「・・・脱ぎましたけど」
???「なに言ってんだ。まだ下着が残ってんだろ」
真水「えぇっ、下着もですか!?」
???「言ったよな、『全部』って」
真水「・・・はい[下着を脱ぐ]」
???「よし。それでいい」
真水「・・・何が目的なの?」
???「お前が知る必要はない[首をしめる]」
真水「はぐぅっっ!!!?」
真水(誰か・・・たす・・・け・・・)
真水「」
―――――
―――
―
柊「・・・で、首を絞められ、俺が電話をかけるまで気絶してたと?」
真水「はい。目が覚めたら、服も警察手帳も奪われていました」
柊「顔は、見えなかったのか?」
真水「すみません。確認しようにも、ナイフを向けられてたので・・・」
柊「ま、そうだよな。俺だって同じ状況になったら、振り向ける自信ないからな。そんでもって防犯カメラもないし・・・ったく、いい加減全ての駐在所にカメラを付けろって話だよ」
柊(・・・そうやって佐藤に成りすまし、警察官を装って被害者の病室に忍び込んだ。そして彼の喉と手を潰した。用意周到すぎる上に犯人の証拠はゼロ。警部の言う通り、犯人は狂気に満ちているな)
真水「・・・もしかしてあの通報も、部長を外出させて私を一人にするためのものだったのかも?」
柊「まさか。たまたまだろ、それは・・・っていうか、その部長はまだ帰って来てないのかよ?」
真水「たしかに・・・遅いですね」
固定電話「プルルル♪」
柊「っ」
真水「あ、私が出ます。はい、こちら七対派出所です・・・えっ!?」
真水「部長が重傷で・・・病院に!?」
柊「なっ!?」
真水「わかりました、すぐ向かいます!」
柊「どういうことだ、部長が重傷って!?」
真水「わかりません・・・ただ、先ほど倒れているのを発見されたらしくて」
柊「ったく、次から次へと・・・まぁいい、行くぞ佐藤!!」
真水「え、柊さんも行くんですか?じゃあ私残ります・・・」
柊「なんでだよ、お前も行くんだよ!!」
真水「ぇ、だって、私まで行ったら派出所に人がいなくなっちゃうし・・・」
柊「お前を1人にできるわけねぇだろうが!!」
真水「っ!」
柊「いいから行くぞ。さっさとしろ」
真水「・・・はい///」
12:30
東雲大学病院
柊「警部!」
片桐「おぉ、柊。誰だその子は?」
柊「さっき言ってた後輩です」
片桐「ほう」
真水「どうも。七対派出所の佐藤です」
片桐「初めまして。はてさて、君は本物の『佐藤 真水』なのかな?」
柊「警部っ!!」
片桐「フフ、冗談だよ。気を悪くしないでくれ、Ms.佐藤」
真水「はい・・・それより警部さん、部長の容体は!?」
片桐「安心しなさい、先ほど意識が戻ったよ。軽い脳震盪らしい」
真水「そうですか、よかった・・・!」
柊「・・・警部、これも同一犯による犯行なんでしょうか?」
片桐「あぁ、そうだろうな。本当に素晴らしい犯人だ」
柊「犯人褒めてどうするんですか」
片桐「そうだな。でもよ、考えてみろよ柊。この犯人は、入院させた被害者が証言するのを防ぐために警察に成りすました。それも成りすますために派出所の部長をおびき寄せ、あらかじめターゲットを1人にしてな。おかげで犯人を追う手がかりは1つもない。警察のメンツ丸つぶれだ。完璧すぎて、逆に尊敬しちまうよ」
柊「たしかに・・・完全犯罪ってやつですね」
片桐「・・・なァ柊。犯人は誰だと思う?」
柊「さぁ。皆目検討もつきませんが・・・」
片桐「そうか。俺は一人だけ心当たりがある」
柊「えっ、本当ですか!?」
片桐「あぁ。ま、ほとんど偏見だが」
柊「誰です、それ?」
片桐「西覇王 ルナ」
柊「・・・あ~、なんか聞いたことありますけど・・・どうして彼女が犯人だと?」
片桐「親父の勘だ」
柊「・・・え?」
同時刻
河川敷
ルナ(警察は混乱、事件の手がかりは何も掴めず・・・か。我ながら完璧なムーブメントだったぜ)
ルナ(やはり自分の身体はいいな。自分の思うがままに動いてくれる・・・証拠など1つも残すことなくなァ・・・!)
ルナ「さ~てと、そろそろ帰るかね」
???「・・・西覇王か?」
ルナ「っ!!!」
???「やっぱそうだ、西覇王ルナだ!久しぶりだな~オイ!!」
ルナ「・・・あァ、誰だテメェ?」
???「おいおいそりゃ~ねぇだろ。短い間だったとはいえ同じ釜の飯を食った仲間じゃねぇか」
ルナ「あ~たしか・・・橘だったか?」
???「お前から名字で呼ばれるなんて初めてだな。前みたいに『カガリ』って呼べよ」
ルナ(カガリ・・・っ、あぁ完全に思い出した。『橘 嘉雅梨』、少年院でルナと仲が良かった女だ)