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アイドルバスター2 覇道戦線  作者: おでん信用金庫
3/20

#3 一過性自己防衛本能『ソエル』

前回までのあらすじ


中野くんは許さない



午前8時

西覇王邸 リビング



ルナ「おはよう、お母さん」


真理奈「あら、おはようルナ。こんな時間に起きてくるなんて珍しい。もしかして、学校行く気になったの?」


ルナ「いや、なんか眠れなくて」


真理奈「・・・そう。ま、とりあえずご飯出来てるから食べちゃいなさい」


ルナ「うん。ごめんね、変な期待させちゃって」


真理奈「いいのよ。あなたが無理することはないんだから」


ルナ「・・・うん」


真理奈「実を言うと、あなたが家にいてくれて私は嬉しいの」


ルナ「っ、どうして?」


真理奈「だって、学校に行ったらまた悪い子に騙されて、あなたが悪者にされちゃうかもしれないじゃない。()()()()()()()()みたいに」


ルナ「・・・」


真理奈「家にいれば、あなたは傷つかなくて済む。いじめられることも、悪者にされることもなく・・・」


ルナ「・・・」





ルナの母・真理奈は誤解していた。ルナは、周りの悪い友人に暴行事件をでっち上げられたせいで、少年院に送られたのだと。ルナが自分の意志でそんな乱暴なことをするはずがないと。



真理奈は知らないのだ。ルナの中に眠るもう1つの人格のことも、それがルナに暴行事件を起こさせたことも・・・





真理奈「あなたは良い子すぎる。だからこそ悪い人に利用されてしまうの。でも勘違いしないで。あなたが悪いんじゃないんだから・・・!」


ルナ「・・・うん」


TV『続いてのニュースです。きょう未明、東雲(しののめ)駅近くの路地で傷害事件が発生しました』


ルナ「!」


TV『被害に遭ったのは職業不詳の20代の男性で、右足を刺される重傷を負い病院で手当を受けています。犯人は未だ逃走中で、厳重な捜査が行われております』


真理奈「東雲駅って、わりと近くじゃない・・・ルナ、当分外出は控えなさい。見ての通り、外の世界は危険で溢れているの。いつあなたが危険な目に遭うか分かったものじゃないわ」


TV『・・・警察の話によれば、被害者の男性は会話ができないくらい怯えているようで、精神的ショックが大きかったことがうかがえます』


TV『よほど怖い思いをしたんでしょうね。一刻も早い回復を祈ります』


真理奈「精神的ショックって・・・ルナみたいな被害者が増えてきているのね。許せない・・・!」


ルナ「・・・」


真理奈「・・・どうしたのルナ。さっきから箸がまったく進んでないけど」


ルナ「え。あぁ、うん!?」


真理奈「もしかして、口に合わなかった?」


ルナ「ううん、そんなことない。ないよ・・・」


真理奈「そっ、よかった。じゃあ仕事行ってくるけど、なにかあったらすぐ電話するのよ」


ルナ「うん、行ってらっしゃい」


ルナ「・・・」


ルナ「っ・・・!!![トイレに駆け込む]」






トイレ



ルナ「おぇぇぇぇっっっ!!」


ルナ「っはぁ、はぁ」


ルナ(なに、この不快感。胸を締め付けられて、潰されそうな嫌な感覚・・・)


ルナ「まるで私が、さっきの事件の犯人のような―――」


???<そうだな、あながち間違っちゃいねェ>


ルナ「っ!?」


???<直接的にやったのは俺だが、結果的にはお前が犯人ってことになるな>


ルナ「また幻聴・・・悪いけど今はそれどころじゃないの」


???<なぁ、いいかげん幻聴って呼び方やめてくれねぇか?>


ルナ「なによ、幻聴なんだから幻聴としか呼ぶほかないでしょ」


???<んだよ、つれねぇな>


ルナ「・・・って、今日は長いわね。いつもは一方的に話しかけてくるだけで、返事もしないくせに」


???<そうだな、今は()()()()()が高まってるからな>


ルナ「『私の意識』って・・・なに言ってるのあなた?」


???<俺がお前に話しかけていられるのは、お前が俺を必要としているからだぜ?>


ルナ「あなたを必要としている・・・私が?」


???<お前、相変わらず勘鈍いのな。いい加減気付けよ、俺が何者なのか>


ルナ「知らない。最近聞こえ始めた、ただの幻聴でしょ」


???<ひでぇなぁ。俺はずっと昔から、お前と一緒にいるのによ~>


ルナ「は、なにそれストーカー?どこにいるってのよ」


???<お前ン中>


ルナ「は・・・?」


???<お前が少年院にいた時も、アイドルやってた時も、ず~っと一緒にいたぜ。お前が危険な目に遭いそうな時は、助けてやったりもしてるんだがなァ>


ルナ「助けて・・・っ、まさか!?」


ルナ「あなたが、私のもう一つの人格なの・・・?」


???<やっと気付いたのかよ。遅ぇんだよバーカ>


ルナ(もう一つの人格が話しかけてくるなんて・・・そんなこと今まで一度もなかったのに!?)


???<たしかに、こうやって会話するのは今日が初めてだな>


ルナ「!」


???<でもよ、前々からお前の意識に話しかけてはいたぜ。反社パーティン時とかな>


ルナ(私の思考が、読まれてる・・・!?)


???<そりゃそうだ。口に出さなくても、お前の思ってることは理解できるぜ。お前よりもお前のことを知ってるっつっても過言ではねぇな>


ルナ「っ・・・どうやらあなた、本当に私のもう一つの人格のようね」


???<あぁ。やっと確信してくれたか>


ルナ「じゃあ1つだけ聞かせて。どうして最近になって、あなたは私に話し始めたの?」


???<あァ?だからさっきも言ったろ。お前が俺を必要としているからだ、って>


ルナ「・・・別に、必要としてなんかいない。あなたが勝手に出てきたんでしょ?」


???<・・・そうだな。今まで俺は、お前が危険な目に遭いそうな時に出てきて、お前の代わりに身を守ってきた。いわばお前は無意識のうちに俺を必要としていたんだ>


ルナ「・・・???」


???<だが、今回は違う。無意識なんかじゃなく、お前は俺のことを確固たる意識を持って必要としてんだ>


ルナ「・・・どうして?」


???<へっ、お高く気取っちゃって。口に出さないだけで、お前はこう思ってんだよ>


???<『私を陥れた奴らを潰す』ってな>


ルナ「っ!」


???<『だからそのために、俺の力が必要だ』・・・お前は俺を使って目的を果たそうとしてんだよ>


ルナ「そっ、そんなこと・・・!」


???<いい加減認めろや!!!>


ルナ「うぅっ・・・」


???<いつまで自分の本心を騙すつもりだァ?そんなに自分の手を汚すのが嫌か、自分のことが可愛いか、あァ!?>


ルナ「そんなことない。私がそんな暴虐なことしようだなんて・・・!」


???<『暴虐」ねぇ。それはちょっと違うなァ、ルナ>


ルナ「へっ・・・?」


???<たしかに、お前を陥れた奴らを『潰す』ってのは暴虐なことかもしれねェ。でもな、どうしてお前がそんな暴虐なことを望んでいると思う?>


ルナ「ど、どうして?」


???<ふん。こればっかりは言わねェ。これはお前が自分で気付くんだ、ルナ>


ルナ「・・・?」


ルナ「うん、わかったよ・・・え~と」


???<あ、どうした?>


ルナ「あなた、名前は?なんて呼べばいいの?」


???<あァ、名前なんてねぇよ。強いて言うならルナだ。俺はお前なんだから>


ルナ「う~ん、それはそうなんだけど・・・あ!」


???<なんだ、なんか思いついたか?>


ルナ「うん。あなたのこと、『ソエル』って呼ぶね」


???<ソエル・・・なんで?>


ルナ「だって、あなた私と正反対の性格なんだもん。だから『ルナ』の反対の『太陽』すなわちソエル・・・って思ったんだけど、どう!?」


???<・・・なんつーか、つくづく思うんだがお前って、痛々しいよな>


ルナ「えっ!?」


???<アイドルユニット改名するときも『Death(デス) Force(フォース)』とか提案してたし。あれだな、中二病ってやつ?>


ルナ「ち、違うし!あれはたまたまっていうか、魔が差したっていうか・・・」


ソエル<へっ、まぁいいや。じゃあ俺は今日からソエルだ。よろしくな、ルナ>


ルナ「う、うん。よろしくねソエル・・・!」




西覇王ルナはこの日はじめて。自分のもう1つの人格『ソエル』との対話を果たした。ルナはあっさり、ソエルのことを受け入れた。しかし彼女はまだ知らなかった。ソエルを受け入れるということが、なにを意味するのか・・・


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