#18 もうパパには頼らない
前回までのあらすじ
親父がラブホにいるらしい（伝聞）
ルナ（・・・。）
ルナ「あ、ゴメン。よく聞こえなかった。お母さんとどこにいるか、もう１回言ってくれるかな？」
片桐『ラブホ』
ルナ（・・・。）
ルナ「へ、へぇ～変わった名前のラーメン屋さんだね」
片桐『なに言ってる。ラブホはラーメン屋の名前じゃなくて、『ラブホテル』の略で・・・』
ルナ「ああああああああああああっ！！！！」
片桐『ぐぅぅぅっっ！？どうしたルナ！？』
ルナ「見損なった見損なったよお父さん！！お母さんとヨリを戻したいからって、ラブホに連れ込んで乱暴するなんて！！」
片桐『ま、待てルナ！！！お前は重大な勘違いをしている！！俺はなにもそんなつもりでラブホに連れ込んだわけじゃないし、乱暴してるわけでも・・・』
ルナ「じゃあどういう理由で元嫁をラブホに連れて行くことになるの！？」
片桐『母さんの安全のためだ！敵を欺くフェイクとしてラブホに行ってだな・・・』
ルナ「言い訳すんな、変態！！！」
片桐『あぁはい、わかりましたよ変態です！私は正真正銘の、立派な変態でございます！！これでいいのか！？』
ルナ「死ね変態！！！」
片桐『心配しなくても肺がんでもうじき死にます！！それよりお前は・・・』
ルナ「今すぐ死ね！！！」
片桐『あ～～今死んだ！！死にました死んでしまいました！！！それよりお前はこれから・・・』
ルナ「死んだ人は『死にました』なんて言わない！！！」
片桐『ルナっ！！！！』
ルナ「っ！」
片桐『・・・今はふざけている場合じゃない。俺がラブホにいる経緯はまた改めて話す。少なくとも、不埒な理由でないことだけは分かってくれ』
ルナ「・・・」
片桐『それよりも、だ。お前はこれからどうするつもりなんだ』
ルナ「どうするって」
片桐『まだ、343を潰そうだなんて無謀な野望を抱いているのか？』
ルナ「・・・もちろん、そのつもりだよ」
片桐『母さんを危険な目に遭わせたのにか？』
ルナ「っ！」
片桐『母さんが拉致られそうになったのは、お前が343を潰そうと動き出したからだ。お前が大人しくしていれば、こんなことにはならなかった』
ルナ「そ、そうだけど！」
片桐『「そうだけど」・・・何だ？』
ルナ「っ・・・それは」
片桐『言葉に詰まるくらいなら、最初から言い訳なんてするな。まぁその言い訳に説得力があったとしても、どのみちお前が母さんを危険にさらした事実は変わらんが』
ルナ「・・・」
片桐『とにかくお前はこれ以上なにもするな。その電波暗室でじっとしてろ』
ルナ「・・・お父さんは、これからどうするの？」
片桐『母さんの身の安全が確保されるまで、母さんを守る。それだけだ』
ルナ「私を手伝ってくれないの？」
片桐『手伝わない』
ルナ「どうして・・・」
片桐『ルナ、約束を忘れたか？』
ルナ「約束？」
片桐『・・・前に言ったはずだ。『お前が危険な目に遭ったら、俺はもうお前に協力しない。二度と343プロに関わることなく、おとなしくしていてもらう』と』
ルナ（っ、そういえば・・・！）
片桐『ルナ、覚えておけ。守れもしない約束はするもんじゃない』
ルナ「ご、ごめんなさい・・・でも、もう一度だけチャンスを」
片桐『ダメだ。『大人の世界』に、二度もチャンスはない』
ルナ「・・・」
片桐『ひとまず、事態の収束化を大人しく待て。話はそれからだ。それじゃあ切るぞ』
ルナ「・・・」
片桐『あぁ、１つ言い忘れていた。『城ヶ崎』という男に気をつけろ。アイツはお前のことを狙っている。遭遇したら逃げろ、お前じゃきっと相手にならん』
ルナ「・・・私より強いってこと？」
片桐『それもあるが、精神的にも問題がある。いわゆるサイコパスだ。城ヶ崎は自分の利益のためなら、どんな手も厭わない。現に奴は、母さんを拉致する前に『形無ゆとり』って上司を始末してきたらしいからな』
ルナ「っ、ゆとりさん！？」
片桐『ん、なんだ。知り合いなのか？』
ルナ「・・・私の、元マネージャー」
片桐『そうか。まぁ343にいる以上、仕方のないことさ。彼女もそれくらいの覚悟はあったはずだ』
ルナ「・・・」
片桐『じゃ、今度こそ切るからな。気をつけろよルナ[着信終了]』
ルナ（・・・私のせいで、お母さんを危険な目に遭わせてしまった。私のせいで、ゆとりさんが・・・ゆとりさんが・・・！！）
ソエル＜そうだな、全部お前のせいだ＞
ルナ「っ・・・わかってるよ！」
ソエル＜なにをわかってるんだ？＞
ルナ「それは・・・私が甘かったから、こんなことに・・・」
ソエル＜あぁ、そうだ。お前がゆとりを拘束してさえいりゃあ、少しはマシな結果になってた。ゆとりの野郎も、殺されずに済んだだろうよ＞
ルナ「待ってよ・・・まだゆとりさんが殺されたとは限らないじゃん！」
ソエル＜そういうところが甘いっつってんだよ！！！＞
ルナ「っ・・・！」
ソエル＜お前はつくづく考えが甘いんだよ・・・俺たちは反社会に喧嘩を売っちまったんだ。その時点で、誰かが傷つく、誰かが死ぬ・・・常に最悪のリスクを覚悟はして当然だろうが。そうじゃないと、自分が死ぬことになるからな＞
ソエル＜何でもかんでも、自分の思い通りになると思うな。ゆとりを仲間にするだとか、ゆとりはきっと生きてるだとか・・・お前は安心を求めすぎている。安心はな、お前の中にある１番の敵だ＞
ルナ「・・・私に、人の心を捨てろっていうの？」
ソエル＜何かを得るには、それ相応の対価がいる。失われた名誉を取り戻すために、心を捨てる・・・それくらい安いモンだと思うがね、俺は＞
ルナ「そんな・・・」
ソエル＜・・・ま、ちょっと言い過ぎたか。人の心を捨てるってのは少しオーバーかもしれん。だが、お前の甘い考え方は改める必要がある。少なくとも今の5000倍は、心を鬼にしろ＞
ルナ「っ！」
ソエル＜・・・んだよ、なんか言えよ＞
ルナ「ソエルって、こんなに優しかったっけ？」
ソエル＜あァ、何だよいきなり？＞
ルナ「だって、ソエルにフォローされるなんて思ってもなかったから。前までなら『人の心を捨てろ。さもないと、お前に協力しねェ』って突き放すはずだもん。少なくとも、『言い過ぎた』なんて絶対に言わないもん」
ソエル＜・・・んだよ、『協力しねェ』って言ってほしかったのか？＞
ルナ「ううん。ソエルも変わっていけるんだなぁって思って」
ソエル＜バッ、バカにしてんのか！？＞
ルナ「そんなんじゃないよ、嬉しいんだよ。ソエルが変わっていけるのなら、私も変わっていけるって・・・そう思えたから」
ソエル＜・・・＞
ルナ「ありがとう、ソエル。私も変わるよ。甘いなんて、言われないように」
ソエル＜あぁそうかよ。せいぜい頑張れ＞
ルナ「うん！」
ソエル＜・・・それと、だな＞
ルナ「ん、なに？」
ソエル＜俺ァ別に、お前に優しくしたつもりはねぇぞ。ただ、親父に突き放されたお前をさらに突き放したら、二度と立ち直れなくなる気がしたからよ・・・ちょっと前向きなことを言ってやろうと思っただけだ＞
ルナ「・・・ふふっ」
ソエル＜なんだ、なにがおかしい！！？＞
ルナ「さぁね。私のもう一つの人格なら、読み取ってみなよ～」
ソエル＜知らねぇよ！！お前の思考をなんでもかんでも読み取れるほど便利なシステムになってねぇよバカ！！＞
ルナ「じゃあ言わな～い」
ソエル＜てっ、てめぇ・・・！！＞
ルナ「ふふ」
ルナ（それを『優しい』って言うんだよ、ソエル―――）
ソエル（しっかし、状況は最悪だぜ。多分もう、親父のサポートは受けられねェ。改めて、どうするつもりだ・・・ルナ？）
