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蓮華異譚  作者: ジェーン
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第6話:初めての料理とお風呂

第6話になります。

第6話:初めての料理とお風呂


百貨店から出たレンゲ達は、夕食の材料を買うために市場のある通りへと来ていた。

様々な食材が並ぶ中、蓮華はとてつもなく焦っていた。


(や、やばい.......よく考えたら、この世界の食材って地球とは全然違うんだった!)


そう......ゲームが現実となったとは言え、この世界はある意味異世界と言っても過言ではない。つまり.....地球ではお馴染みの食材などないのである。

いや、全くない......と言うと語弊があるかもしれない。中には林檎や小麦といった食材もあるにはあるのだ。だが...それは本当にごく一部で、例えば肉を見れば“ブルム・ボアの切り落とし”やら“一角鹿の肉”など、モンスターの肉が多く並んでいる。野菜に至っては“ハクヤクソウ”や“ムラサキセンソウ”と、名前と見た目だけではどんな味なのかすら想像できないようなものばかりが並んでいるのだ。


(どうするどうする!?アイシャの手前......ある程度の物は作りたい!けどどの食材を使えば良いんだ!?)


万事休すか......?と、諦めかけたその時だった。蓮華はある事を思い出し、慌ててメニュー画面を確認し始めた。


(......あった!錬金術で作れる料理レシピ!えーっと............クルムパスタにテッカスープ.....この辺で良いか?材料は......)


思い出したるは錬金術の熟練度上げをしてた頃の苦い記憶.....。少しでも効率良く上げるためにと、錬金術で作れる料理を大量生産しては、その使い道が無くてNPCショップで売るという勿体ない事をしていた事を思い出したのだ。なにせこの料理達.....食べても1分間STRが1上昇するといった微妙な効果しか得られないのである。

だが、ここに来てその時のレシピが生きる時が来た。


蓮華はレシピを確認すると、すぐに行動を開始した。


(まずは一角鹿の肉、それとセンレンソウに、セキラクカ......山羊の乳に......あ!?)


と、材料を確認しながら買い物を進めている途中で、別の問題に気づいてしまった蓮華.....。


(このレシピ......調味料が書いてないじゃないか!)


そう......砂糖や塩などに該当するような調味料が何一つ書かれていなかったのだ。


(どうする.....?いや、調味料なら種類はどれだけあっても困ることはないし、いっそ片っ端から買っておいて1つずつ味見しながら使えば良いか)


そんな感じで悩んでいると、無言でどんどん買い物を進めていくレンゲにアイシャが声をかけて来た。


「レンゲちゃんレンゲちゃん。結構な種類買ってるけど、どんな料理を作るの?」


「ん.....クルムパスタとテッカスープ。それとサラダ.......かな後は明日の朝食用の材料とかも」


「お〜!パスタなんて何年ぶりだろ!楽しみだなぁ.....」


「うぅ......だから、あんまり期待しない、で」


(ホントに期待しないで欲しい。正直、材料が違いすぎて上手く作れるかまったくわからん!っと.....調味料調味料っと.....結構種類は多いな.....値段もそこそこするけどまぁいいか)


結局、調味料だけで40種類も買う事にした蓮華。他の食材と合わせると、合計で9万セリカもの出費になってしまった。


その後は特に寄り道する事もなく家に帰った2人。レンゲは早速とばかりにキッチンへ行くと、買ってきた食材と調味料を並べていった。


「ん.....じゃ、作る」


「おー!って.....え?私も作るの?」


「ん?手伝って......」


「..............あい」


(良し、とりあえずアイシャがどの程度できるのかも確認したいからな。まずは.....鹿肉の下処理から始めるか。その間にアイシャには野菜を水洗いしてもらおう)


蓮華はアイシャに指示を出しながら、自身も調理を開始した。

まずは鹿肉を一口サイズにカットしていき、香草で臭み抜きしてから塩胡椒に近い調味料を揉み込み寝かせる。

次に、アイシャに水洗いしてもらった野菜も一口サイズにカットしていく。2つの鍋に水を張って、沸騰するまで熱したら、片方でパスタ用の麺を茹で始めた。もう片方の鍋では、野菜と鹿肉の一部を煮込んでいく。

その間に、寝かせておいた残りの鹿肉と野菜を炒めていき、皿に一度移してから赤ワインに近いお酒や味醂っぽい調味料などを加えて中火でじっくり煮立てていき、更にミキサーにかけたセキラクカというトマトに似た野菜を加えて更に弱火でアイシャに軽くかき混ぜてもらいながら煮詰めてもらう。

ソースをアイシャに任せると、レンゲは鹿肉と野菜を煮込んでいた鍋にセキラクカの残りを入れていき、更に調味料を加えて味見しながら味を整えていった。

その頃になると、丁度麺の方もいい感じに柔らかくなっており、ザルに移して水気を切ってから皿に移した。

アイシャに混ぜてもらっていたソースも少し味見.....皿に移しておいた鹿肉と野菜を入れてからさっと絡めると、少しだけ味を整えてからパスタの上にかけていく。

最後に、スープも少し味を整えてから器に移し、買ってきたばかりのテーブルに並べて完成した。


「あ.........サラダ....忘れてた」


レンゲはそう言うと、ささっと野菜を切ってドレッシングっぽいのを作ってかけると早足で戻ってきた。


「別に無くても良かったんだよ?」


「ダメ......バランスのいい食事は大事」


「う.......」


どうやらあまり食事に気を使っていなかったらしい。アイシャは気まずそうにしながら視線を逸らした。


「ん......食べよっか」


「そ、そうだね!」


「じゃ.......いただきます......もぐ....もぐ」


「いただきまーす!............もぐもぐ.......ん!おいひぃ!」


(ふむ.......まぁまぁかな?若干濃い気もするけど.....というかアイシャ、喋るなら飲み込んでからにしなさい)


若干納得のいく出来にはならなかったが、初めて使う食材が多かった割には良くできたと納得する事にした蓮華。だが、今後も要練習だと気合を入れ直した。

それに、アイシャの期待には応えられたようなので、ホッと胸を撫で下ろす。


食事が終わると、レンゲはアイシャにお風呂の準備を頼み、自身は食器の後片付けをする事にした。買ってきた洗剤が良いのか、随分と簡単に汚れが落ちて驚いたが楽ができるので嬉しいと感じた。


片付けが終わる頃には、丁度お風呂の準備もできたらしくアイシャがウキウキした表情で戻ってきた。


「レンゲちゃんお風呂の準備出来たよ〜!一緒に入ろ!」


「ん.......楽しみ」


一緒に入ろうと言うアイシャに、普通に返すレンゲ。だが、蓮華の方はそうもいかなかった。


(待て待て待て!?確かに体は女だけど俺は男だぞ!?一緒に入れるわけないだろ!)


なんとか別々に入るように説得しようとした蓮華だったが、体は構わず入浴の準備を始めてしまう。エリックの話に出てきた男性はギリギリで踏み止まれたらしいが、如何にもこうにも体が言うことを聞かなかった。


(ど、どうすればいい!?このままじゃアイシャの裸を見てしまう事に!おい......おいぃ!頼むから言うことを聞いてくれぇぇぇえええええ!!!)


「よーし!レンゲちゃん背中流してあげるね〜。後髪も洗ってあげたい!」


「ん......私も、アイシャの背中....流す」


「ホント!?わーい♪」


しかし、必死の抵抗も意味を為さず、脱衣所に入ってしまった蓮華。しかも背中を流しっこするとか言い出すものだから、余計に焦り始めた。

そして.....とうとう服を脱ぎ出す2人に、蓮華はもう見ている事しか出来なかった。


(あ.....あ....あぁ.........何故俺は目を瞑れないんだ。いや待てアイシャ!それを脱いじゃダメだ!あわわ......あわわあわわわわ!)


「お〜.......レンゲちゃんの肌綺麗〜。それにスッベスベだねぇ」


「そう....かな?アイシャは......凄く引き締まってる、ね」


「えへへ.....そ、そうかな?」


褒められたことが嬉しかったのか、アイシャは後ろ手に指を絡めてモジモジし始めた。そのせいで胸が強調されてしまい、蓮華は興奮と罪悪感とが綯い交ぜになってしまいもうどうにかなってしまいそうだった。


(やめろぉ!頼むから.....頼むから隠してくれ!童貞殺す気か!?)


どれだけ叫ぼうとこの状況は変わらない。2人は浴室へ入っていくと、まずはアイシャがレンゲの背中を流し始めた。


「こうして見ると、レンゲちゃんの体ってホントちっちゃいよね。どう見ても年上には思えないよ〜」


「成長.....止まっちゃってるから。でも、もう少しおっきくなりたかった.....」


「え〜?私はこのままで全然良いと思うけどなぁ.......だって可愛いし」


「そう......かな?」


「そうだよ〜!.......あ、次頭洗うから目閉じててね」


「ん.........」


わしゃわしゃとアイシャが頭を洗い始めると、レンゲは「あ〜.......」と気持ち良さそうな声を漏らした。自分で洗う時と他人に洗ってもらった時ではなぜか他人に洗ってもらった時の方が気持ちよく感じるという人は多いと思う。今はまさにそんな感じだった。


「むぅ......可愛くてお肌スベスベで髪もサラサラ.......なんかズルイ」


「ん〜......アイシャだって、可愛い。猫耳......最高」


「うぇ!?そ、そうかな?か、可愛いなんて初めて言われた気がする.......って猫耳なの!?」


「ふふ.......可愛いのは、間違い....ない、わぷっ!?」


「あ、ごめん.....」


恥ずかしさのあまり、レンゲが喋っている途中でお湯をかけてしまったアイシャ。「むぅ〜......」とジト目で見つめてくるレンゲに謝りながらも、そんな表情もやっぱり可愛いなぁ....と苦笑を浮かべた。


「えっと.....じゃ、じゃあ私もお願いします!」


「むぅ......わかった。........................えいっ」


「わひゃあっ!?」


どうやら思っていた以上にご立腹らしかったレンゲ。アイシャが背を向けて座った瞬間に、後ろから手を回してアイシャの胸を鷲掴みにして揉み始めてしまい、まさかの反撃に変な声を上げてしまった。

だが、ある意味で1番の被害者は戀華の方だったかもしれない。


(ちょっとぉぉおおお!?何やっちゃってんですか!?うわっ....なにこれ凄い柔らかい......じゃなくて!?)


「ちょ......レンゲ、ちゃん......んぅ!?ごめ......ごめんって、ばぁ.......あん!」


「むむ.........大っきい.....羨まし、い」


「そ、そんなに大っきくないよ!?普通だよ!?」


「そんなこと.....ない。私より.....大っきい......それに柔らかい......」


「あ、あの......そろそろ許して?」


「ん..........残念」


本当に残念そうに、アイシャの胸から手を離したレンゲ。ようやく解放してもらえた事で、アイシャもホッと一息ついた。あのまま続けられてたらと思うと、一気に顔が熱くなり開いてはいけない扉を開きかけていたかもしれないと少しだけ怖くなってしまった。


なんとか背中が終わり、次は髪を洗ってもらうとなった時だった。


「ひゃう!?」


「猫耳......ふわふわ」


「ま、また......なんでぇ」


「そこに......猫耳が、あったから?」


「意味わかんないよぉ!」


どうやらレンゲにとって猫耳というのはとても重要な要素らしい。髪を洗いながらではあるが、片手は必ず猫耳をモフモフしていた。


「はぁ......はぁ...はぅ〜........家族以外にこんなに触られたの初めてだよ〜」


「堪能......した」


ぐったりとしたアイシャとは対照的に、レンゲの表情はとても満足そうに輝いていた。

アイシャはこれから毎日一緒に入ろうと思っていた気持ちがちょっとだけ萎えかけてたが、それでもレンゲが相手なら嫌じゃないかな.......という気持ちもあって.......。


「なんでだろ.......レンゲちゃんが相手だとむしろ嬉しい?」


「ん......?どうした、の?」


どうにも思考がおかしな方向に進みかけてたらしい。すぐ近くで聞こえてきたレンゲの声に、アイシャは慌てて誤魔化した。


「ななななんでもないよ!ほら、洗い終わったしお風呂に浸かろ!」


「........?そだね」


随分と無駄に時間が経ってしまっていたが、揃って肩まで浸かると、ほぅっと息が漏れた。


「こんなにゆったりお風呂に入ったの初めてだよ〜」


「ん.......広いお風呂も、最高」


「最高だね〜」


そこで会話は途切れ、お互い無言の時間がゆっくりと過ぎて行く。レンゲの中では戀華が未だにあわあわ言っていたが、レンゲの方はお風呂の気持ちよさに完全にリラックスモードに入っていた。

そんな中、アイシャは今日の出来事を振り返っていた。


(今日は色んな事があったなぁ........レンゲちゃんと出会って、それがまさかの憧れの人で.........。いきなり天使が現れて.....リーダー達が殺されちゃって......。その後、レンゲちゃんが天使達をみんな倒しちゃってさ。凄かった.......しかも、まさか弟子になれちゃうなんて思ってもなかったよね。リーダー達のことは、凄く辛いし.....思い出すだけでも泣いちゃいそうだけど、それでも.....最後はとっても楽しかった。これからも.......こんな楽しい日が続くのかな)


隣を見ると、ずっと憧れてた相手がフニャ〜っと蕩けた表情で寛いでいる。こうして見ると、100体もいた天使を一瞬で殲滅した人と同一人物にはとても思えない。

けれど、やっぱりあれは現実で......。これからこの子の弟子として、そして友人としてこれから頑張って行くんだと思うと、少しだけ体が熱くなるような気がした。


「ん......のぼせ、そう............そろそろ、上がる?」


「え、大丈夫!?」


いやにゆっくりと立ち上がったレンゲ。アイシャも慌てて立ち上がったが、どうにもレンゲがフラフラしていて見ていて危なっかしかったので、すぐさま体を支えてあげた。


「んぅ......あり、がと。ちょっと.....気....抜き過ぎちゃった、かな」


「あはは......気をつけなきゃダメだよ?」


「ごめ....ん」


どうやら自分で体を拭く事すら難しそうだと思ったアイシャは結局、着替えまで全部お世話する事になっていた。



お風呂から上がった後、どうしても心配だったアイシャはレンゲを部屋まで送り届けるとゆっくりとベットに寝かしつけた。


「う〜......眠い」


「もう遅いし、このまま寝ちゃっても良いんじゃない?」


「ん.......そう、する〜」


うつらうつらとしているレンゲは、年相応に見えてアイシャはホッコリして思わず頭を撫でてしまった。あ.....と思った時には遅かったが、気持ちよさそうに目を細めるレンゲが可愛くて、なんとなく.....妹がいたらこんな感じなのかなぁと思ってからブンブンと頭を振ってそんな考えを振り払った。

そのせいか、一瞬クラっとしてしまってどうやら自分も少しだけ逆上せかけていたようだと気付かされた。


「アイシャも.....一緒に、寝よ?」


「ん〜.....そう、だねぇ。私もちょっと、逆上せちゃってた......みたい。あ、ギュってしてても良い?」


「ん.......良い、よ。アイシャにギュってされるの......好き」


お許しが出たので、早速ベットに入ってレンゲをギュッと抱きしめるアイシャ。レンゲの方も、アイシャの胸に顔を埋めて軽く抱きしめ返した。


「ん........お休み....アイシャ」


「おやすみなさい、レンゲちゃん」


こうして......長い長い1日は、最後はゆったりとした眠りの中で終わりを迎えるのだった......。

ようやく長ーい1日が終わりましたね。なかなか話が進まない問題.....

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