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蓮華異譚  作者: ジェーン
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第4話:仲間に.....

第4話になります。

第4話:仲間に.....


天使との戦いが終わり、大騒ぎになっている住民たちを一旦放置してレンゲたち3人はギルドの執務室へと戻っていた。

ようやく静かな場所へ来れたことで、レンゲは落ち着きを取り戻したようだが、逆にアイシャは初めて入る執務室に落ち着かない様子。


「まぁ寛いでくれ。別に特別な場所でもないからね」


「は、はい!」


「やっぱり.....このソファ、気持ちいい」


どうやら相当このソファが気に入ったらしい。レンゲは全身をソファに預けながらゆったりしていた。その様子を見ていたアイシャも、やはり精神的な疲れが残っていたのか隣のソファに座り「おぉ!」と声を上げていた。


そんな2人の様子に笑みを浮かべながら、新しいお茶とお菓子を並べたエリックも自身のソファへと腰掛け長く息を吐いた。


「.......さて、今回の天使の襲撃で、若干の犠牲を出してはしまったが.....レンゲのお陰で他に比べれば随分と小さな被害で済ませる事が出来た。改めて.....例を言うよ」


「ん........」


「それにだ.....街の者達にも君の力を見せる事が出来た。少しばかり危なかったが、概ね皆も君のことを受け入れてくれたと思う。それでだ......」


エリックはそこまで言うと、緩んでいた表情を引き締めた。


「レンゲはこれからどうするつもりだい?俺としては、このまま街の留まって欲しいと思っているんだが.....」


(あぁ.....そういえばエリックに会った後のことは考えてなかったなぁ。この世界についてはエリックが殆ど教えてくれたし.......まぁエリックのとこなら良いかな?)


と、そこまで考えたところである事を戀華h思い出した。


(そういえば、俺が使ってたアトリエってどうなったんだ?)


「えっと......私のアトリエがどうなったか、知ってる?」


「アトリエかい?.......確か、君のアトリエは遊泳島にあったはずだよね?」


「ん......」


「ということは......もう無いだろうね。あ〜アイシャ君は何のことかわからないだろうが、とりあえず気にせず聞いていて欲しい。当時使っていた課金アイテムなどの要素は、全て使えなくなってしまっている。つまり、課金によって使用できる遊泳島も同じように使えなくなってしまっているんだ」


(なん.......だと!?ということは、アトリエに保管していた貴重な素材なんかも全部消えてる.....いやそれよりも!アトリエの管理を任せてたシンシアとシャルルはどうなったんだ!?)


「シンシアとシャルルも.....消えちゃった?」


「ん......?あぁ、管理人のことかい?それならもう一度新しいアトリエを用意すれば契約し直す事ができる筈だよ。他の錬金術師から聞いた話だから間違いない」


(そっか......それなら良かった。あの子達はお気に入りだったからなぁ.......もし消えちゃってたら発狂してたかもしれない)


「そっか........ん、良かった。それなら、この街にアトリエを作ろうかな?」


レンゲがそう言うと、エリックはとても嬉しそうな顔をした。それというのも、実はエリック......この世界に来てから初めて再会した友人がレンゲだったのである。それもこれも領主になってしまったせいなのだが.....。そんな内心は知られたくないのか、すぐに表情を戻して冷静なふりをした。


「それは良かった......あまりこういう扱いをするのは好きじゃないんだが、君がいてくれればまた天使が攻めてきても安心できる」


「ん........気に、しないで?私も....まだまだ慣らさなきゃいけないし、戦いは望むところ」


「頼もしいね。アイシャ君は今後どうするつもりだい?」


「ぅえ!?」


いきなり話を振られたアイシャ。正直、話の内容に付いて行けなくて頭がこんがらがりそうになっていたところに話を振られた為、変な声が出てしまい恥ずかしそうに身を縮こまらせた。


だが、今後......そう聞かれて、アイシャは悩む。パーティメンバーを失ってしまった事で、アイシャはどうすれば良いのか分からなくなってしまっていた。

今までは、クエストなどは全てリーダーのフリッツが決めていたし、新しくパーティを組むにしても、弱小種族である自分を迎えてくれるパーティがそう簡単に見つかるとは思えない。しかも.....レンゲのお陰で魔法剣士や魔導剣士の評価が向上しているとはいえ、まだまだ風当たりが強いのも確かなのだ。

猫耳族な上に目標は魔導剣士になること.....。そんな奴を入れたがるパーティは、フリッツ達くらいだったろうとアイシャは悲痛な顔をしながら思った。


少し......魔導剣士について、他の職業と比べてみようと思う。

まず魔法剣士や魔導剣士とは、その名の通り魔法と剣を使って戦う職業だ。近接と遠距離.....その両方をこなせるこの職業は、一見......万能に見える。だが、実際はそうではない。


例えばだが、剣士の最上位職業である剣聖になると、職業ボーナスなども含めてSTRとVIT、AGIがとても良く伸びる。さらには、レベルアップ時に手に入るステータスポイントを割り振る事で、その値を更に伸ばす事ができるのだ。

一般的には、前衛火力をするならSTR(攻撃力増加)>AGI(攻撃速度と俊敏の増加)。タンク役をこなすならVIT極振り(HPと防御力の増加)といった感じになる。


一方で、魔術師の最上位職業である大賢者はINTとDEXの伸びが非常に優秀だ。こちらも一般的にはINT(魔法攻撃力とMPの増加)>DEX(詠唱速度とわずかな魔法攻撃力の増加)に振ることが多く、固定砲台として使われるためとにかく火力を追求する職業となっている。


それに比べて、魔導剣士はというと......ステータスの伸びは平均的としか言いようがない。ステータスポイントを振っていない状態だと、VIT以外のステータスはほぼ均一になる程なのだ。例えポイントを振ったとしても、どちらか一方に偏っている剣士系や魔術師系には遠く及ばず、どうしても器用貧乏感が否めない。

結果.....ゲームだった頃には最弱職業やボッチ職業などという不名誉な呼ばれ方をしていたのが魔導剣士という職業なのだ。


だが......そんな魔導剣士に光を当てたのがレンゲというプレイヤーだった。


レンゲは魔導剣士という職業の運用法を研究し、様々なスキルやアビリティを試し、装備類の組み合わせなども試しまくる事で、最終的には大規模レイドを必要とするようなクエストを単独クリアするなどの偉業を成し遂げるほどになった。

それからは、流石に最弱職業などと馬鹿にされる事は無くなったものの、やはりレンゲ自身がソロでいる事が多かったせいもあるのだろう.....ボッチ職業のレッテルが無くなる事はなく、ソロ専門職として見られることがより強くなった。


とはいえ.......パーティ戦で活躍出来ないのかというとそうでもない。レンゲがその点を見逃すはずもなく、事実......時にはエリックやそれ以外の友人達とパーティを組んで、当時は日本人プレイヤーでは攻略不可能とさえ言われていた魔神の討伐という偉業も成し遂げている。

ただし、レンゲのステータスを基準に考えてはいけないという注意点はあるのだが......。


レンゲのステータスは以下の通りだ。


・レンゲ LV120

・ステータス:STR 500 VIT 378 INT 1000 DEX 800 AGI 800

・EXステータス:INT 1000 DEX 800 AGI 418


・HP 12836 ・MP 46089・攻撃力 1265 ・魔法攻撃力 4743 ・防御力 829 ・魔法防御力 2991 ・俊敏 1845 ・攻撃速度 1976 ・詠唱速度 3218


となっている。因みに、一般的な剣聖と大賢者のステータスも上げておこう。


剣聖 LV120

・ステータス:STR 1000 VIT 700 INT 258 DEX 650 AGI 1000

・EXステータス:STR 800 AGI 408 自然治癒LV10


大賢者 LV120

・ステータス:STR 291 VIT 158 INT1000 DEX 1000 AGI 386

EXステータス:INT 1000 DEX 437 魔力回復or高速詠唱or魔法威力上昇LV10


といった感じである。


EXステータスというのは、上位職業から選べるようになるステータスの事で、更なるステータスの向上や本来、アビリティでなければ得られない効果などを最大3つまでセットできるシステムのことである。ただし、アビリティ関係の場合は必要なステータスポイントがレベルが上がる毎に増えていき、その分ステータスに回せるポイントがだいぶ減ってしまうという欠点もある。


レンゲはその分のポイントを全てステータスに回している為、単純な能力値で言えば剣聖や大賢者すら上回る値となっている。

その分.....例えばEXステータスで高速詠唱を取っている大賢者よりも詠唱速度が遅いなどの違いもあるのだが、そこで生きてくるのが魔導剣士としての特徴だ。

魔導剣士は唯一、移動しながらでも詠唱ができるという大きな特徴がある。その為、敵の攻撃を避けたり、隙を見て攻撃しながら詠唱できるため下手な剣聖や大賢者なんかよりよっぽどダメージを稼げるのだ(ただしレンゲに限る)

事実......あまりにもダメージを稼ぎすぎたせいで、最初の頃はタンクに固定しなければいけないヘイトがレンゲに向かってしまったため、普段より火力を抑えていた.....なんて話もある。


と.......結局何が言いたいのかと言うと、アイシャも将来的にはソロで活動する事も出来るということだ。

しかし、現時点ではまだ魔法剣士にすらなれておらず、やはり仲間のサポートは必要だろうという事。本来なら、剣聖や大賢者を目指していると言って誤魔化す事もできるのだが、アイシャの正直すぎる性格はそんな事を思いつく事すらなかった。


「パーティは......探そうとは思っています。けど、私は猫耳族ですから......見つからない可能性の方が高いと思います」


「そう.....だね。ならば、こういうのはどうだろう?」


アイシャの考えに、エリックは残念ながら同意するしかなかった。猫耳族というのは、それ程までに多種族から見下されている存在なのだ。

勿論.....エリック自身は彼女達を見下したりなどしていない。何故なら、レンゲとエリックの共通の仲間にも猫耳族にも関わらず凄腕の女性プレイヤーがいたからだ。ただし、彼女の職業は魔導弓兵であったが.....。

それを踏まえた上で、エリックはアイシャに1つの道を示す事にした。


「レンゲに教えを請うというのはどうだい?レンゲも君のことを気に入っているようだし....パーティを探しながら、レンゲに鍛えてもらうんだ。そうすれば、“魔導錬士”の弟子という箔も付いてパーティ探しも楽になるだろう。もしかしたら、レンゲと肩を並べられる程に成長できる可能性だってある。そうなってしまえば、無理にパーティに入る必要もなくなるしね」


エリックの提案に、アイシャは目を見開いた。確かに、レンゲに鍛えて貰えば強くなれると思うし、ソロで活動するにもパーティを探すにも、これ以上ない利点だろう。

だが、エリックの言い方ではまるでレンゲを利用するみたいで、アイシャはすぐに決断できなかった。


「レンゲはどうだい?君を利用するような提案だが.......」


エリックもその事は重々承知なのだろう。ちゃんとレンゲの意見も聞くことを忘れない。


「ん......良いと、思う。というより、他のパーティを探したり、ソロでやらせるよりも.....将来の仲間を自分で育てる........って考えれば、悪く...ない」


「わ、私がレンゲちゃんの仲間に!?......その考えはなかったよ」


「ふむ.......確かに、レンゲクラスの魔導剣士がパーティを組んだら......その可能性は計り知れないな」


「......でしょ?」


レンゲと同レベルの魔導剣士が2人.....1人でも魔王を倒せる存在がパーティを組む。それはゲームだった頃なら、周りからチートと呼ばれてもおかしくないほどの戦力になる程だ。

そう考えれば、元々レンゲを目標にしていたアイシャを仲間にするのはレンゲにとっても十分メリットのある話だった。

それに、側にこの世界で生活していた人間がいてくれれば、現実特有の違いがあった場合にすぐに聞けて良いだろうという考えもある。


「どう......かな?勿論、すぐに強くなれるわけじゃない。多分.....年単位の時間が必要だけど、アイシャのお手伝いもしたいし、アイシャが一緒にいてくれると、私も嬉しい」


(うぅ〜.......!良いのかな?良いのかな!?ホントに私なんかがレンゲちゃんと一緒にいても良いのかな!?しかも.....将来はレンゲちゃんのパートナー!?でも..............もしも私にそうなれるだけの可能性があるのなら)


どうやら覚悟が決まったようだ。ここまで自信なさげな表情だったアイシャの顔が、スッと引き締まった。


「あ、あの......まだまだ自信は持てないし、ホントにお2人が言うほどの可能性が私にあるのかわからないけど.......レンゲちゃんとパーティ組ませてください!」


「大丈夫......絶対に私が、アイシャを強くしてみせる....から」


「良い表情だ。けど......覚悟しておいた方が良いよ?レンゲは..........厳しいからね」


「......え?」


決まってからそんな怖いことを言わないで欲しい........。そんな風に思ったアイシャだったが、既に2人は別の事を話し始めていて言い出せる雰囲気ではなくなってしまっていた。


「んぅ......後は、アトリエをどうする...かな?エリック.....良い場所、知らない?」


「ふむ.......1番手頃なのは、大通りから少し外れた所にある空き家かな?あそこなら生活の不便も無いし、一階にはアトリエに適した広さの部屋もあるからオススメだよ」


「じゃあ.......そこにする」


「良いのかい?実際に見てから決めた方が良いと思うけど」


「問題ない。エリックを信じる」


「それは嬉しいね。それじゃあ早速見に行こうか?」


「ん.........アイシャ、行こ?」


「あ......う、うん」


もはやレンゲとパーティを組むのは決定事項になってしまったらしい。嬉しいんだけど不安.....けどやっぱり嬉しい。

そんな微妙な気持ちになりながらも、手を差し伸べてくれるレンゲの顔がとても優しくて、もしかしたらエリックの冗談だったのかな?と思いながらその手を取って歩き始めるのだった......。



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