《1色目》空からの落下者
「なんでこうなったの?」
冷たい夜風の代わりに頬にくっついているのは、どこから飛んで来たかわからない、おそらくカエル。
頭にはぼろぼろの布のようなもの。
服はどろどろ。
「・・・なんで?」
振り返ること数秒前。
ものすごい熱と風が襲って来たと思ったら、いつのまにかこうなってた。
振り返る価値もないほど意味不明なこの状況に、どうすればいいのかわからない。
「とりあえず風が来た方に行ってみるか・・・」
浄化魔法をサッと唱え、とりあえず服を綺麗にした。布も邪魔なので、取った。
カエルは・・・投げ捨てるのもかわいそうなので、そのまま頭に移動させた。
移動すること数分。頭に乗せたカエルがぴょんぴょん跳ね始めた。
どうしたのかと思い、しゃがんでみると、カエルがぴょこんと飛び降りた。
あのカエル、ここら辺に住んでいたのか。私はタクシーじゃないぞ。元気でな。とカエルの帰郷を祝ってやっていたら、人が近づいてくる気配を感じた。
「どちら様?」
迫る気配は数歩先で歩みを止め、おそらく私に、質問してきた。
「私ですか?この辺りに住んでいるしがない魔女です。あなたは?聞かない声ですが」
「ラヴィサン。家はスプランドゥールだ。先程この辺りに落ちた。」
こいつか。私の頬にカエルをぶつけたのは。
「落ちたと言いますと。あなたは空からいらしたのですか?」
「空。そうとも言う。が、正確に言うと違う。空はあくまでゲートであるから私は空からきたのではない。」
何言ってんだこいつ。じとじとした視線で彼を見る。見ている。つもり。
「まあ取りあえず、なんか変なやつが落ちてきたという認識で良いですか?」
「間違いありません。」
変なやつとか言うな!みたいなことを言われるかなと思ったが・・・。
「どうしてこの辺りにいらしたのでしょう?」
「少し、用事がありまして。」
なにやら雰囲気が変わった。そこは聞くなということか。
「なんでも良いですが、この辺りで暴れたら私が黙ってはおりませんので。」
「滅相も無い。盲目の魔女、様。」