_____は彼女を望んだ。
白いスライドドアをゆっくり開ける。
窓からうっすらと差し込んで来る日差しが更に眩しくなってしまうほど純白の部屋。
「また来たよ」
そいつは部屋の中心で沢山の延長チューブに繋がれている。
肌は部屋に同化するほど白いし 整った人形の様な顔立ちは同じ人間とは思えないほど美しい。
「聞いてくれ、今回はエースに選ばれたんだ。
だから練習が長引くし……これからは なかなか来れなくなるかもしれない」
お前に寂しい思いさせちまうな……っと彼は へらっと悲しそうに少しだけ笑う。
「お前が応援に来てくれないのも寂しいけどさ……お前はまだ眠らないとだめだもんな」
すっかり長くなってしまった彼女の白髪の髪を優しく撫でてみると そいつはムッとした様に、への字に口を曲げた……様な気がした。
「ちぇ……そろそろ帰るよ。 どっかのお馬鹿さんが俺のこと 嫌がってるしさ」
日曜日の昼、昨日摘んで生けた鈴蘭はまだ水々しく輝いている。花瓶の隣の籠の中から、飴玉を一個。口の中に放り投げた。
「じゃあな」
そうして もう一度、君を撫でた。
君の体温は ほんの少し、冷たかった。
「おや、今日も来てくれたのかい。 いつも ありがとうね」
「あ、どうも……こんにちは」
白衣を着た中年のおじさんは アイツの父、この大きな病院の院長で海外でも名の知れた名医。
「あの子はやっぱり起きなかっただろう?ここ最近、脈が弱くなってきてるから。一応 色々対策はしてるんだけど…全く効果が無くてね」
ここ最近寝ていないのだろうか、目の下に薄いクマが出来て 頰がこけている。
「あぁ、そうだ。 君に言わなければならない事があるんだった……今、時間あるかい?」
「大丈夫ですよ。 あっ……それなら、お昼奢ってください」
「しょうがないなぁ。 結構重要な話だし、良い店にでも連れて行ってあげるよ」
「ははっ、ありがとうございます
細雪さん」